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【88】悪夢 〜もう一度伝えたい〜
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“俺がとってくるよ!”
ダスティンは躊躇いなく吹雪の中へ駆け出していく。
「ダス、行っちゃダメ!」
引き止めようと手を伸ばしたが、空をきる。
“これは夢だわ”
頭ではそう確信したが、夢から覚める事はできない。
「ダメーーーーっ!!行かないで!!」
視界から遠ざかって行くダスティンの背中にダニエルは叫んだが、彼は小さくなっていく。
「ダメよ、行っちゃダメ!ダメ、ダメなの……」
姿が見えなくなり、ダニエルは膝をついた。
涙が溢れ落ち、吹雪の中に消えていく。
「お願い、行かないで……戻ってきて……一人にしないで」
真っ暗な世界に雪と風だけが吹き荒れる。
ダニエルは孤独だった。
寂しいからダスティンを求める。
それも間違いようのない事実だけれど。
もう一度会って、伝えたい。
“私のせいで、ごめんなさい”
“貴方は私の全てだった”
“本当に本当に大好きだよ”
“ダス……、ごめん”
“貴方と過ごした日々が段々と薄れていくの”
“貴方との思い出は幸せな事は勿論、悲しみも絶望も忘れたくないのに”
“痛みを感じないの”
“私にはもっと痛みが必要なのに……”
「…ディ、ディディ!」
サニーの声でダニエルは目を覚ました。
「ディディ、大丈夫?」
「さ、サニー?」
居るはずのない人の姿に、ダニエルは驚きまだ夢の中かと混乱した。
「怖い夢でもみた?俺が帰ってきたからもう大丈夫だヨ」
サニーは寝乱れたダニエルの髪をすき、耳にかけてくれた。
伸びてきた手元から雪がかかったコートの冷気が放たれ、これが夢ではない事を教えてくれる。
「なんで……いつ戻ったの?」
ダニエルは目を丸くし、上体を起こした。
「ついさっきね。昨日マッキニー領を発って一晩中馬を走らせてきたんだ」
「一晩中?」
「うん、早くディディに会いたくて」
「危ないじゃない!山を舐めたら死ぬんだから!!」
雪の残る山道を馬で越えるのはとても危険な行為なのだ。
吹雪の中に消えていったダスティンの姿とサニーが重なって、ダニエルは背筋がゾッとした。
ダニエルの剣幕にサニーは面喰らった顔になった。
てっきりダニエルが喜んで迎えると思っていたんだろう。
喜ばれると思ったのに、逆に相手を怒らせてしまう体験はつい昨日ラスティーで経験したばかり。
「ん……そうだネ。ディディに会いたくて頑張っちゃった」
眉を下げて少し悲しそうな表情のサニーに、ダニエルの胸が痛んだ。
「ごめん……嬉しくないわけじゃないの。私もすごく会いたかった。帰ってきてくれて、嬉しいわ。ただ雪山の夜道の行軍は自殺行為だから。サニーにもしもの事があったらって…怖くなったの」
ダニエルはサニーの瞳を覗き込んだ。
心配し過ぎて怒ってしまったと、伝わっただろうか。
ダスティンは躊躇いなく吹雪の中へ駆け出していく。
「ダス、行っちゃダメ!」
引き止めようと手を伸ばしたが、空をきる。
“これは夢だわ”
頭ではそう確信したが、夢から覚める事はできない。
「ダメーーーーっ!!行かないで!!」
視界から遠ざかって行くダスティンの背中にダニエルは叫んだが、彼は小さくなっていく。
「ダメよ、行っちゃダメ!ダメ、ダメなの……」
姿が見えなくなり、ダニエルは膝をついた。
涙が溢れ落ち、吹雪の中に消えていく。
「お願い、行かないで……戻ってきて……一人にしないで」
真っ暗な世界に雪と風だけが吹き荒れる。
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寂しいからダスティンを求める。
それも間違いようのない事実だけれど。
もう一度会って、伝えたい。
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“本当に本当に大好きだよ”
“ダス……、ごめん”
“貴方と過ごした日々が段々と薄れていくの”
“貴方との思い出は幸せな事は勿論、悲しみも絶望も忘れたくないのに”
“痛みを感じないの”
“私にはもっと痛みが必要なのに……”
「…ディ、ディディ!」
サニーの声でダニエルは目を覚ました。
「ディディ、大丈夫?」
「さ、サニー?」
居るはずのない人の姿に、ダニエルは驚きまだ夢の中かと混乱した。
「怖い夢でもみた?俺が帰ってきたからもう大丈夫だヨ」
サニーは寝乱れたダニエルの髪をすき、耳にかけてくれた。
伸びてきた手元から雪がかかったコートの冷気が放たれ、これが夢ではない事を教えてくれる。
「なんで……いつ戻ったの?」
ダニエルは目を丸くし、上体を起こした。
「ついさっきね。昨日マッキニー領を発って一晩中馬を走らせてきたんだ」
「一晩中?」
「うん、早くディディに会いたくて」
「危ないじゃない!山を舐めたら死ぬんだから!!」
雪の残る山道を馬で越えるのはとても危険な行為なのだ。
吹雪の中に消えていったダスティンの姿とサニーが重なって、ダニエルは背筋がゾッとした。
ダニエルの剣幕にサニーは面喰らった顔になった。
てっきりダニエルが喜んで迎えると思っていたんだろう。
喜ばれると思ったのに、逆に相手を怒らせてしまう体験はつい昨日ラスティーで経験したばかり。
「ん……そうだネ。ディディに会いたくて頑張っちゃった」
眉を下げて少し悲しそうな表情のサニーに、ダニエルの胸が痛んだ。
「ごめん……嬉しくないわけじゃないの。私もすごく会いたかった。帰ってきてくれて、嬉しいわ。ただ雪山の夜道の行軍は自殺行為だから。サニーにもしもの事があったらって…怖くなったの」
ダニエルはサニーの瞳を覗き込んだ。
心配し過ぎて怒ってしまったと、伝わっただろうか。
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