女王陛下、誤解です〜ヤリチン王子が一穴主義になったのはアタシのせいじゃありません!!〜

アムロナオ

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【108】父の乱心② 〜吸血鬼じゃあるまいし〜

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「きゃぁぁぁ!!」

母の悲鳴と窓ガラスが割れたのは、ほぼ同時だったと思う。


「び……っくりした」

振り返ると、父が何かを投げつけたようだ。

ベッドから身体を起こし、怒りに顔を歪め、目を血走らせている。


「やめろ……」

父は理性を失った獣のように唸り、燭台を両手にした。

また投げつける気だろう。


「ちょ……なに?なんで??なんで急に怒ってんの!?」

「窓を閉めてください!」

「は?」


ベラの言葉に気を取られていると、また何かが飛んでくる。

ーー燭台!

ダニエルはヒョイと屈み燭台を避けたが、窓に当たってガラスが砕けるけたたましい音がした。


「ダニエル、お父様は光がダメなのよ!カーテンを閉めて!カーテンを閉めなさい!!」

ミランダの言葉に、ダニエルはカーテンを閉めるため窓際へ飛びついた。


がしかし、閉めなかったらどうなるのか確認してみようと、唐突に閃いた。

吸血鬼じゃあるまいし、光を浴びて灰になったりしないだろう。



「ダニエル?何してるの!」

「お嬢様、カーテンを閉めてください!!早く!!」

「旦那様、どうされました?」

「おい、どけ!!何事だ!?」


部屋の前には信徒達の人垣ができていたが、その人混みをか搔き分け二人の男が部屋に入ってきた。

教祖のディアゴ・ダロッチャと右腕のジョン・ダマーだ。


「父上!どう……」

その後ろからポーラとワトソン少尉、ハルボーン中佐、サニーも入ってきた。


図らずしもこの場に重要人物が集まり、ダニエルはどうしようかと頭を悩ます。

誰から触れたらいいやら。

瞬時に出てきた言葉がディアゴ・ダロッチャとジョン・ダマーに向けた「誰?」だった。



二人が口を開く前に、父が「やめてくれぇぇぇぇ!!」と叫び、右手に持った燭台を振り上げダニエルへ飛びかかってきた。

「ダニエルっ!!」

「姉上っ!」

ミランダは見ていられるなかったのだろう。

両手で目を覆い、ポーラも恐怖からか止めに入るのが一歩遅れた。


ワトソン少尉、ハルボーン中佐、サニーは状況をよく見ており、ダニエルが“助けは不要”と目で合図を送ったのを見逃さなかった。

彼等にとって暴れるシシェック・マッキニーを制止するのは容易たやすかろうが、ダニエルの意思を汲んで止めないでいてくれた。


「うわゔぁぁぁぁぁ!!」

「……っと」

ダニエルは父が腕を振り下ろす前に自身の腕を父の二の腕にぶつけ、絡みとるように彼の手首を掴んだ。

同時に父の脚裏に踵をかけると態勢バランスを崩し父は床に転がる。

そのまま彼の背後に周りながらダニエルは腕の関節を固定して父の動きを制した。
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