女王陛下、誤解です〜ヤリチン王子が一穴主義になったのはアタシのせいじゃありません!!〜

アムロナオ

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【112】口論③ 〜我慢の限界〜

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「黙って聞いていれば……そっちこそ誰のおかげで我が家ウチがここまで維持できてるかわかってんの!?父上が倒れ、領地経営はボロボロ。減った収入は誰が補填していると?空からお金が降ってくるとでも?」

ダニエルの言葉に全員が黙った。


「私が働いて稼がなきゃこの家が潰れるから、帰るひまもなく働いてきたんでしょ?それにどんなに忙しくても手紙は書いてたわ」

“なんで父上に手紙が届かなかったのかは、知らないけど”

嫌味ったらしく暴露したいのを、ダニエルは何とか堪えた。


母に恥をかかせてやりたいと復讐心があったが、サニーの前で嫌な女になりたくない。

きっとダスティンだって、ダニエルにそんな事してほしくないだろう。



「とにかく!遺産云々以前に、この家を金銭的に支えてるのは私なの。例え私が親不孝者でも薄情者でも、一介の執事頭バトラーにごちゃごちゃ言われる筋合いないわ!身の程をわきまえなさい!!」

偉そうに貴族面したくないが、お金を工面するため軍の業務だけでなく掃除のバイトまでしてるのに散々な言われようで、ダニエルも我慢の限界だった。


「申し訳ございません、お嬢様!この者ジョンには私の方から再度教育し直しますので。ご無礼お許しくださいませ」

ティアゴがジョンを後ろに追いやり、頭を下げた。


全員クビにしてやりたいけど、今はそれどころじゃない。

ダニエルは怒りを押し殺し、ポーラに「父上を母上のお部屋に運ぶわよ」と言った。


「私の部屋に?なぜ?」

「父上をガラスの割れたこの部屋に置いておくわけにはいきません。風邪をひいてしまいます」

「そ、そうだけど……私の部屋はちょっと……困るわ」

風呂に入ってない父を自室に入れるのが嫌なのだろう。

母は露骨に反対した。


「じゃあ私の部屋に運びます」

「姉上はどこで寝るんです」

「私は応接室のソファーでも寝れるから大丈夫よ」


ダニエルとキャサリンの部屋の間には子ども達用の応接室があり、お友達が来た時にはその部屋へ通していた。

横になれるくらいのソファーはあるので、寝るだけなら困らないだろう。

着替えはキャサリンの部屋でさせてもらえばいい。


「わかったよ。じゃあねぇさんの部屋へ運ぼう」

ポーラはホッとしたようにそう言った。


「それとボロンゴ領から医者を呼ぶから。うちマッキニーの医者は切り傷骨折には強いけど、病気には詳しくないでしょ。本当は父上を汽車に乗せてボロンゴ領へ運べたらいいんだけど……今はそれも難しそうだしね」

「どれくらいで来れるのかな?」

「人気のお医者様だから直ぐには来れないかも。だぶん三日くらいかかるんじゃないかしら」

ダニエルはポーラの質問にそう答えた。


ボロンゴ領から医者を呼ぶのはサニーの案で、派遣する医師も見つけてある。

電報を打てば翌日には駆けつけられるのに、なぜだかサニーからは“医者は三日後に来る”と言うよう、指示されていた。
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