勇者パーティを追放された勇者は天使と出会い覚醒する! 〜勇者である俺が居ないのに勇者パーティ名乗るってマジ?〜

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1 勇者パーティを追放される勇者

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 世界を魔王から救うとされる勇者。
 
 俺はそうお告げを受け勇者に選ばれたのだが――

「勇者ルセウス、貴様はこの勇者パーティ出て行ってもらう!」

 そう高らかに宣言したのは宮廷から派遣されてきた魔導師のマーロンだ。
 歳は二十歳で俺よりも五つ上の大人の男性。
 
「マーロンさん、理由を聞いてもいいですか?」

 俺がマーロンさんに尋ねたら別の人物、賢者フランさんが口を挟む。

「それも分からぬとは愚かな。今一度自分を見つめ直してみてはどうかな?」

 俺と年齢が変わらないのに国一番の知識人と言われているすごい人。
 その人が言うには俺に原因があるらしいです。

「フランの言う通りね、それも分からないお子ちゃまが勇者じゃ魔王なんて倒せないわよ」

 フランさんの意見に同調するのは僧侶アンナ。
 金髪の髪を弄りながら俺の事をキツく睨みつけていました。

「そもそも本当に勇者なのか? この弱虫ルセウスには務まらんだろ」

 そして最後のメンバーである戦士オネスは俺の頭をグリグリと撫で回してきました。

「痛いよオネス、やめてくれ」

 無理やり手を払いオネスと距離を取ります。
 オネスは同じ農村出身の幼なじみで、ずっと一緒に過ごしてきた。
 俺が勇者に選ばれてからも常に一緒に鍛錬してきた頑張り屋。

「ルセウスの癖に生意気だな! みんなもそう思うよなぁ!?」

「同意します。ルセウス弁えなさい」

「本当に愚かです。愚かすぎて同情しますよ」

「生意気なお子ちゃまなんて魅力なさすぎ」

 パーティメンバーは口々に罵ってくる。
 流石に我慢の限界で、俺も反論した。

「いい加減にしないと俺も怒るよ? 第一理由も話さないしさ」

「はぁ……おバカなルセウスの為に全てお話ししましょう。 勇者ルセウスは武器も持てない農民以下の存在ではないですか!」

 マーロンの言葉に俺は反論できなかった。
 勇者に選ばれてからと言うもの俺は剣を装備しようとすると重くて、とてもじゃないけど振り回せなかった。

 唯一使えたのは宝樹から作られたとされる木剣のみで、真剣が使えない俺は魔物の討伐は不可能。
 
「でもそれは聖剣を手に入れれば解決するって旅立つ前に話したじゃないか!」

「まだそんな話を信じているのですか? 愚かな……」

 フランはその持ち前の知識で俺が間違っていると延々と説明し始めました。
 やれ勇者という存在自体が怪しいだの、本当に世界を救うのは勇者ではなく賢者だの。
 
「以上の理由で、勇者はこの世に必要はない! 真に必要なのは賢者である私だ!」

「それは言い過ぎだ、宮廷魔導師である私を忘れてもらっては困る」

「回復がいなくて本当に大丈夫だと思ってるの? ルセウスほどじゃないけどあんた達もお子ちゃまね。 私も重要人物なのよ」

「俺みたいな前衛を蔑ろにしてもらっては困るな! 戦士がいないとお前達は直ぐにやられてしまうだろ?」

 各々の言い分は違うが一つだけはっきりしている事があった。
 それは――

「まぁ少なくとも勇者は必要ありませんね。 勇者より賢者。 これが常識です」

 勇者は必要がないという事だ。
 聖剣以外の武器が持てない俺はお払い箱らしい。

「じゃあ勇者パーティは解散でこれからは賢者パーティにでもするの?」

 追放されるのは確定しているが一応聞いておく。
 ただの興味本位だ。

「いえ、勇者という名は国民から大変支持されていますので使いますよ。 これからは勇者パーティというなの賢者パーティですがね」

 名前だけは使うとフランは主張する。
 農民などは勇者という名前を聞くだけで不安が解消されるとのこと。
 それ程までに絶大な影響力があった。

「わかったよ……俺はもう勇者と名乗らないさ。これでいいね?」

「ええ、出来れば貴方の防具も置いて行ってください――と言いたいところですが入りませんね」

 ここは大森林の中で、このタイミングと言うことは前から計算されていたのだろう。
 武器も持たない俺では街道を進んだとしても魔物に出くわせば死んでしまうかもしれない。
 死人に口無しとはよく言ったものだ。

「今までお世話になりました。 金輪際貴方達の前に姿は現せません、それと魔王討伐頑張ってください」

 俺はそう言い残してパーティを去った。
 後ろからバカにしたセリフが聞こえてくるが全部無視だ。

「もう勇者の責務は負わなくていいんだ……」

 確かに武器は持てなかったが拳である程度は戦闘に参加していた。
 戦うより平和を愛する俺にとって勇者を辞めるのは僥倖。

「でもまずは無事に街までたどり着かないとな。いくら拳で戦えるからって一人じゃ大変だしね」

 気を引き締め、俺は月明かりを頼りに街を目指す。
 帰ったら商人を目指そう。
 
 そう思い夜も森を突き進んでいると、目の前にヘーゼル色の髪の女性が魔物と共に現れた。
 彼女を追いかけているのはこの森の中でも上位に位置するオーガ。

 自由になった直後、俺の命は尽きかけてしまった。 
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