勇者パーティを追放された勇者は天使と出会い覚醒する! 〜勇者である俺が居ないのに勇者パーティ名乗るってマジ?〜

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2 天使族の娘セーラ

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目の前で女性が魔物に襲われている状況。
 助けないと言う選択肢はなかった。

「俺が何とかします! その隙に逃げてください!」

 オーガに追われていた女性に促すと俺は拳を握りしめ、オーガへ突撃した。
 体長が3mほどはある巨体は威圧感が凄く、足が震えそうになる。

 それでも俺は勇気を振り絞り、飛びかかり腹部に渾身の右ストレートを放つ。
 分かってはいた事だが今の俺では敵わない。

 いとも簡単に捕まり投げ飛ばされてしまい、逃げろと言ったはずがその場に立ち尽くしていた女性の目の前に落ちた。

「何で逃げてないんだ! まだ間に合うから早く!」

「ですが、貴方はどうするのですか!?」

「俺の事はどうでもいいから君は自分の命だけを大事にして。これでもさっきまでは勇者を名乗ってたからね、最後くらいカッコつけさせてよ」

 せめて死ぬ時くらいは勇者らしく人を助けて命を散らせたかった。
 困惑している女性に最後のお願いをし、俺は立ち上がりオーガに向き合う。

「勇者……貴方が神に選ばれし勇者なのですか?」

「神かどうかは知らないけど誰か知らない天の声で選ばれたとか言ってた気がするよ」

「あぁ、勇者様はまだご無事だったのですね! 名乗るのは後にします。 まずは私と契約をしてください」

 目の前に迫るオーガだがこの女性は気にする事なく契約をしろと促してくる。
 訳が分からないが真剣な目で見つめてくる彼女の言う事に従い、契約をした。

 方法は至ってシンプルで、血と血を合わせるだけ。
 俺は投げ飛ばされた際に擦り傷があるのでそれを親指に付け、彼女の親指とピッタリくっ付けた。

 すると暖かい光に包まれ全身に力が湧いてくる感じがした。
 武器がなくともオーガくらいは倒せる。
 そんな気分にさえなった。

「グゴオオオオ!」

「食らえ、渾身の右ストレートだ!」

 襲いかかるオーガに向かって最初と同じく右ストレートで応戦する。
 最初は全く効いている感じはなかったのだが。

「グゴ!?」

「うおおおおおおお! ってあれ!?」

 全力で腹部を殴ったのだが、何故か空が見える。
 冷静に見ると大きな風穴が開いており、オーガの身体の向こう側がはっきりと見えた。

「な、何だこの力は!?」

「まだまだ勇者様の力はこんなものではありませんよ?」

 俺がこの力に驚いていると女性が声をかけてくる。
 
「あの、貴女は一体何者ですか?」

「申し遅れました。 私は神に仕えし天使の一人。セーラと申します」

 天使と名乗り彼女は背中から神々しいまでの純白の翼を広げ、アピールをした。
 神や天使などは御伽噺でしか聞いたことがない存在だ。

「はじめましてセーラさん。俺はルセウスです。これから商人になる者です」

「しょ、商人ですか!? 先ほど貴方は勇者と仰っていませんでしたか!?」

 俺はセーラさんと出会う前の話を事細かく説明する。
 勇者パーティから追放された勇者であること。

 今は賢者が勇者の名を語り、魔王討伐へ向け旅立ったこと。
 そして俺が武器が扱えないことも。

「何と言うことでしょうか……賢者とは賢く聡い者が名乗る事を許された称号、彼は愚者ではありませんか」

 セーラさんはフランに対して文句がタラタラの様子。
 俺もそれは止める気はないし、全力で同意した。

「それで、何でセーラさんと契約したらすごい力が発揮できたの?」

「私のことはセーラと呼び捨てで構いません。 あの力は元々勇者に備わっている力で、契約により一部をルセウスに返還したに過ぎません」

 どうやら元々の勇者にはその力が備えられているらしい。
 でも一つ解決をすると新たな疑問が浮かんでくる。

「何でわざわざ封印してたの?」

「それは強大な力に過信し、驕らない為です。 勇者ではありませんが、実際に賢者フランはその立場に傲り、勇者の名まで騙っています」

 セーラの話はフランといういい例題のおかげで納得できた。
 確かに俺が傲慢に育たないとは言い切れない。

 だから力のない状態である程度成長するまで見守り、頃合いを見て力を返還したとのこと。
 でもこれからは徐々に力を戻すと言った。

「でも俺は勇者やめて商人になりたいんだけど?」

「とんでもないです。貴方でなければこの世界を救えないのです! まずは聖剣を確保しに行きましょう!」

 商人になりたいという夢を却下された俺はもちろん落ち込んださ。
 せっかく夢に向かって第一歩だと言うのに勇者の責務を負わされたのだしね。

「じゃあ勇者は名乗らないけど責務だけは果たすよ。 それなら商人になってもいいよね?」

「うーん……まぁ今はそれでいいでしょう。 ですが名声は要らないのですか?」

 勇者を名乗らないと言うことは名声を捨てると言うこと。
 名声さえあれば地位も金も女も自由自在。

 でも俺はそんなことよりチマチマと商人をして人並みの幸せを享受したかった。
 だからこそ勇者とは絶対に名乗らない。

 こうして商人になりたい俺と天使セーラの聖剣を探す旅が始まった。
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