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第4章★閑話★
1☆モチーフ☆
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リョウマ「菫様! 会いたかった!」
菫「リョウマ様! わたしも。お元気そうで良かった」
リョウマ「相変わらず綺麗です。魔界に迷い込んだ神界の女神のようだ」
菫「あら。本当にあなたは犬みたいに可愛いですね。いいこいいこ」
リョウマ「わん!」
菫「……えっ、ノリノリじゃないですか。どうしたの、捨てたの、自尊心」
リョウマ「……いや、条件反射で……」
菫「やだ可愛い」
リョウマ「……もっと……撫でてください……」
菫「いいですよ。わたしの可愛いワンちゃん」
リョウマ(男として見られていないな……まあいい。嫌われるよりはいい)
リョウマ「コウキのこと、聞きましたか? あいつ婚約パーティー不参加のようですよ」
菫「ああ、それはそうでしょう。八雲様の首を取った方ですもの。稲田一族にとってはラスボスよ」
リョウマ「そうか……だから俺に牽制してきたんだな、あいつ」
菫「牽制?」
リョウマ「はい。菫と踊るのは許すが、必要以上に密着するな。もう俺の専属愛人だからな、と」
菫「専属愛人って、具体的になんなのですか? 夜伽相手ですか?」
リョウマ「まあ、そうだな。しかし現在、専属愛人を取っている騎士団長はいないぞ」
菫「専属にしちゃうと、その人しか夜伽をさせられないからでしょ? いろんな女の子と寝たいもんね、騎士団長様は」
リョウマ「うっ……主に俺のことでしょうか……」
菫「まあ、そうね」
リョウマ「あの、言っておきますが、俺が紫苑の塔に通っていたのは、結婚していたときだけです。アコヤ……というか御剣に対しての当てつけでした。もう通っていないし、俺はあなたしか目に入りません」
菫「あら、そんな言い訳いらないわよ。色々な女の子と遊んでいたのは事実でしょ」
リョウマ「す、菫様……」
菫(か、可愛い……! あからさまに肩を落としてる! どうしよう、血が……ドSの血が……疼いてきた……)
菫「因みに、経験人数は?」
リョウマ「! え……えっ?」
菫「言って。というか、覚えていないか。一夜だけっていうのもあるでしょうからね、あなたくらい百戦錬磨だと」
リョウマ「そんな、ことは……」
菫「ふふ、ごめんね、いじめて。いいよ、言わなくて」
リョウマ「……」
菫「それより、コウキ様の専属愛人になることはいい? 多分今後コウキ様の側に控えることになると思いますけれど」
リョウマ「イヤですよ! しかし、コウキがあなたを1番に見つけたのですから、仕方がありません」
菫「ふうん。じゃあ、コウキ様に抱かれてもいいのね」
リョウマ「いいわけないでしょう。ただ、あいつは生身の女を抱けないから、そこは心配していません」
菫(ああ、なるほど)
菫「まあ、1番に見つけられたわけじゃないしね……」
リョウマ「は? 誰か他にナンパでもされたのですか、コウキの前に?」
菫「い、いえ。違いますけれど。カルラ様は、わたしが11歳のときから知っていたようですし……」
菫(ワタルなんかは、生まれたときから一緒だしね……)
リョウマ「フン、いつ出会ったかは問題ではない。出会ってから、どう時を紡ぐかが大切なのだ」
菫「え?」
リョウマ「俺は今菫様と同じ時間を過ごしている。それで充分です。あなたの視界に入り、あなたの笑顔を見て穏やかな時間を過ごす。それが俺にとっての幸せですから」
菫「え……」
リョウマ「菫様の幸せを願っています。あなたにはもう苦しい想いをして欲しくない」
菫「ありがとう……」
菫(何だろ、違和感がある)
リョウマ「しかしコウキの屍体愛好癖は、青髭を連想させますね」
菫「青髭?」
リョウマ「はい。人界の童話です。青髭という王がいて、妻を娶るのですが、その妻が消えてしまう。それが6回ほど続きます。そして7人目の妻となった者が、青髭の留守中に、禁忌とされていた部屋の中に入ります」
菫「はい……」
リョウマ「すると、その部屋には6人の妻の死体がありました。7人目の妻は驚いて部屋を出ますが、鍵に付いた血で部屋に入ったことが青髭にバレ、殺されそうになるというストーリーです」
菫「コウキ様の今の現状と似ていますね。白雪姫もそうですが」
リョウマ「最近色々人界の童話が出て来る気がしますね。眠り姫、白雪姫、竹取物語、桃太郎、青髭と。それから、カルラの現状を見ると、あいつはシンデレラのようだ」
菫「なんですか、それは」
リョウマ「継母や義理の姉にいじめられて、召使いのように育つ娘、シンデレラの物語です」
菫「まあ……それでどうなるのですか、シンデレラ様は」
リョウマ「王子から城のパーティーに呼ばれるが、継母と義理の姉たちの言いつけでシンデレラは行くことができない。しかし魔法使いのおかげでパーティーに行けることになる」
菫「ん? ずいぶんロマンチックな話になってきましたね」
リョウマ「王子はそこでシンデレラに一目惚れ。色々あって結婚できました」
菫「まあ、また一目惚れ……童話って王子の一目惚れが大半なのね……」
リョウマ「菫様が王子、カルラがシンデレラのようでしょう」
菫「……え? そう? わたしカルラ様に一目惚れしてはいないんですけど……」
リョウマ「カルラと結婚できれば、シンデレラの出来上がりだ」
菫「その前に竹取物語をなんとかしたい……皆さん課題、全然クリアできないんですもの。太一様以外」
リョウマ「9人目の息子も判明したということか?」
菫「そうでしょうね。優秀なんです、太一様。裕に付いたのが意外でしたけれど」
リョウマ「なぜだ?」
菫「太一様、昔からわたしのこと騒いでいましたから」
リョウマ「……ふむ。なるほどな。本当にモテるな、お前は」
菫「そう? あなたほどではないと思いますけれど」
リョウマ「フッ。俺は怖がられて終わりだ。モテるわけではない」
菫「……今日は、抱きしめないんですね、わたしのこと」
リョウマ「……は? 抱きしめて欲しいのか?」
菫「なんか物足りないな、と思っていましたけれど……何で今日はそんなに距離があるの?」
リョウマ「別に。そういうことはもう辞めようと思って」
菫「なんで?」
リョウマ「なんでもだ! もういいだろう、お前、今日はしつこいぞ」
菫「えっ、だってなんか物足りないんだもん」
リョウマ「俺は物足りる」
菫「ふふ、なにそれ」
リョウマ「あと、俺はお前とパーティーでは踊らない。カルラと踊れ」
菫「えっ、なんで?」
リョウマ「フン。稲田一族を……見返してやれ! カルラをバカにしやがった。あいつらを俺は許さん」
菫「可愛い……リョウマ様」
リョウマ「そういうのはいらないです! とにかく、俺はカルラを立派な紳士に仕立て上げる。魔法使い役をやりますから!」
菫「……シンデレラ?」
☆終わり☆
菫「リョウマ様! わたしも。お元気そうで良かった」
リョウマ「相変わらず綺麗です。魔界に迷い込んだ神界の女神のようだ」
菫「あら。本当にあなたは犬みたいに可愛いですね。いいこいいこ」
リョウマ「わん!」
菫「……えっ、ノリノリじゃないですか。どうしたの、捨てたの、自尊心」
リョウマ「……いや、条件反射で……」
菫「やだ可愛い」
リョウマ「……もっと……撫でてください……」
菫「いいですよ。わたしの可愛いワンちゃん」
リョウマ(男として見られていないな……まあいい。嫌われるよりはいい)
リョウマ「コウキのこと、聞きましたか? あいつ婚約パーティー不参加のようですよ」
菫「ああ、それはそうでしょう。八雲様の首を取った方ですもの。稲田一族にとってはラスボスよ」
リョウマ「そうか……だから俺に牽制してきたんだな、あいつ」
菫「牽制?」
リョウマ「はい。菫と踊るのは許すが、必要以上に密着するな。もう俺の専属愛人だからな、と」
菫「専属愛人って、具体的になんなのですか? 夜伽相手ですか?」
リョウマ「まあ、そうだな。しかし現在、専属愛人を取っている騎士団長はいないぞ」
菫「専属にしちゃうと、その人しか夜伽をさせられないからでしょ? いろんな女の子と寝たいもんね、騎士団長様は」
リョウマ「うっ……主に俺のことでしょうか……」
菫「まあ、そうね」
リョウマ「あの、言っておきますが、俺が紫苑の塔に通っていたのは、結婚していたときだけです。アコヤ……というか御剣に対しての当てつけでした。もう通っていないし、俺はあなたしか目に入りません」
菫「あら、そんな言い訳いらないわよ。色々な女の子と遊んでいたのは事実でしょ」
リョウマ「す、菫様……」
菫(か、可愛い……! あからさまに肩を落としてる! どうしよう、血が……ドSの血が……疼いてきた……)
菫「因みに、経験人数は?」
リョウマ「! え……えっ?」
菫「言って。というか、覚えていないか。一夜だけっていうのもあるでしょうからね、あなたくらい百戦錬磨だと」
リョウマ「そんな、ことは……」
菫「ふふ、ごめんね、いじめて。いいよ、言わなくて」
リョウマ「……」
菫「それより、コウキ様の専属愛人になることはいい? 多分今後コウキ様の側に控えることになると思いますけれど」
リョウマ「イヤですよ! しかし、コウキがあなたを1番に見つけたのですから、仕方がありません」
菫「ふうん。じゃあ、コウキ様に抱かれてもいいのね」
リョウマ「いいわけないでしょう。ただ、あいつは生身の女を抱けないから、そこは心配していません」
菫(ああ、なるほど)
菫「まあ、1番に見つけられたわけじゃないしね……」
リョウマ「は? 誰か他にナンパでもされたのですか、コウキの前に?」
菫「い、いえ。違いますけれど。カルラ様は、わたしが11歳のときから知っていたようですし……」
菫(ワタルなんかは、生まれたときから一緒だしね……)
リョウマ「フン、いつ出会ったかは問題ではない。出会ってから、どう時を紡ぐかが大切なのだ」
菫「え?」
リョウマ「俺は今菫様と同じ時間を過ごしている。それで充分です。あなたの視界に入り、あなたの笑顔を見て穏やかな時間を過ごす。それが俺にとっての幸せですから」
菫「え……」
リョウマ「菫様の幸せを願っています。あなたにはもう苦しい想いをして欲しくない」
菫「ありがとう……」
菫(何だろ、違和感がある)
リョウマ「しかしコウキの屍体愛好癖は、青髭を連想させますね」
菫「青髭?」
リョウマ「はい。人界の童話です。青髭という王がいて、妻を娶るのですが、その妻が消えてしまう。それが6回ほど続きます。そして7人目の妻となった者が、青髭の留守中に、禁忌とされていた部屋の中に入ります」
菫「はい……」
リョウマ「すると、その部屋には6人の妻の死体がありました。7人目の妻は驚いて部屋を出ますが、鍵に付いた血で部屋に入ったことが青髭にバレ、殺されそうになるというストーリーです」
菫「コウキ様の今の現状と似ていますね。白雪姫もそうですが」
リョウマ「最近色々人界の童話が出て来る気がしますね。眠り姫、白雪姫、竹取物語、桃太郎、青髭と。それから、カルラの現状を見ると、あいつはシンデレラのようだ」
菫「なんですか、それは」
リョウマ「継母や義理の姉にいじめられて、召使いのように育つ娘、シンデレラの物語です」
菫「まあ……それでどうなるのですか、シンデレラ様は」
リョウマ「王子から城のパーティーに呼ばれるが、継母と義理の姉たちの言いつけでシンデレラは行くことができない。しかし魔法使いのおかげでパーティーに行けることになる」
菫「ん? ずいぶんロマンチックな話になってきましたね」
リョウマ「王子はそこでシンデレラに一目惚れ。色々あって結婚できました」
菫「まあ、また一目惚れ……童話って王子の一目惚れが大半なのね……」
リョウマ「菫様が王子、カルラがシンデレラのようでしょう」
菫「……え? そう? わたしカルラ様に一目惚れしてはいないんですけど……」
リョウマ「カルラと結婚できれば、シンデレラの出来上がりだ」
菫「その前に竹取物語をなんとかしたい……皆さん課題、全然クリアできないんですもの。太一様以外」
リョウマ「9人目の息子も判明したということか?」
菫「そうでしょうね。優秀なんです、太一様。裕に付いたのが意外でしたけれど」
リョウマ「なぜだ?」
菫「太一様、昔からわたしのこと騒いでいましたから」
リョウマ「……ふむ。なるほどな。本当にモテるな、お前は」
菫「そう? あなたほどではないと思いますけれど」
リョウマ「フッ。俺は怖がられて終わりだ。モテるわけではない」
菫「……今日は、抱きしめないんですね、わたしのこと」
リョウマ「……は? 抱きしめて欲しいのか?」
菫「なんか物足りないな、と思っていましたけれど……何で今日はそんなに距離があるの?」
リョウマ「別に。そういうことはもう辞めようと思って」
菫「なんで?」
リョウマ「なんでもだ! もういいだろう、お前、今日はしつこいぞ」
菫「えっ、だってなんか物足りないんだもん」
リョウマ「俺は物足りる」
菫「ふふ、なにそれ」
リョウマ「あと、俺はお前とパーティーでは踊らない。カルラと踊れ」
菫「えっ、なんで?」
リョウマ「フン。稲田一族を……見返してやれ! カルラをバカにしやがった。あいつらを俺は許さん」
菫「可愛い……リョウマ様」
リョウマ「そういうのはいらないです! とにかく、俺はカルラを立派な紳士に仕立て上げる。魔法使い役をやりますから!」
菫「……シンデレラ?」
☆終わり☆
応援ありがとうございます!
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