●鬼巌島●

喧騒の花婿

文字の大きさ
9 / 52
第一噺『打ち出の小槌』

小噺一『スクナと一緒』

しおりを挟む

スクナ「わーい、お出かけお出かけ」

春日童子「はしゃぐと転ぶぞ」

スクナ「あのね、お兄ちゃん。私子供じゃないの。運動神経だってなかなかなの。転ぶわけないの」

春日童子「ああそうですか」

スクナ「私よりお姉ちゃんが心配よ。運動神経ないし、おっとりしてるし」

春日童子「まあな……呉葉ちゃんが走るところなんて想像つかないな」

スクナ「お兄ちゃんもね。運動神経ないし。気を付けてね、そこ出っ張ってるから」

春日童子「いてっ」

スクナ「あはは、言った傍から躓いてるじゃない」

春日童子「呉葉ちゃんと言えば、最近宴会場に夜な夜な出歩いているだろう? あれ何なんだろうな」

スクナ「遊び相手でも見つかったのかな? 一緒に飲んで歩ける相手」

春日童子「えっ……そんなの父さんが許さないだろ……嫁入り前の娘が夜遊びなどと言語道断だーって」

スクナ「まあね……でも今までお姉ちゃん家のことばかりで、自分のことは後回しになってたから、私ちょっとだけ嬉しいんだよね。自分の楽しみを見つけたのかなって」

春日童子「スクナ」

スクナ「も、もちろん夜遊びは心配だよ。お姉ちゃんが酒や男に溺れるなんて嫌だもん」

春日童子「男に……溺れる……?」

スクナ「ちょっと固まらないでよ。大丈夫だよ、お姉ちゃんなら。それより贈り物何にする? 深紅の紅か浅葱の簪が素敵かな?」

春日童子「そう、だな」

スクナ「お姉ちゃん外見が人間みたいだから、せめて装飾品は鬼らしくさせてあげたいよね」

春日童子「そうだな……」

スクナ「角がいびつで嫌だからって、髪の毛で角を覆うようにしてるしね。もっと堂々としてもいいのにね」

春日童子「そうだな……」

スクナ「それに天邪鬼先生だっけ、お姉ちゃんの担任の先生。すごく格好いいって、この前褒めてて、お洒落してるのも先生のためかもね」

春日童子「そうだな……」

スクナ「……」

春日童子「……」

スクナ「ねえお兄ちゃん。私にも何か買って。可愛い硝子細工があったの」

春日童子「そうだな……えっ?」

スクナ「やったー。私も贈り物してもらえるー」

春日童子「待て待て、そんなこと言ってないだろ」

スクナ「言ったよ。やった、やったー。ぼーっとしているお兄ちゃんが悪いんですよ」

春日童子「あーあ。考え事なんかするんじゃなかったな」

スクナ「へっへっへ」

春日童子「安いのにしろよ!」

スクナ「それはどうかなあ」

春日童子「スクナ~」

スクナ「へっへっへ」

*終わり*
    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...