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第一噺『打ち出の小槌』
小噺一『スクナと一緒』
しおりを挟むスクナ「わーい、お出かけお出かけ」
春日童子「はしゃぐと転ぶぞ」
スクナ「あのね、お兄ちゃん。私子供じゃないの。運動神経だってなかなかなの。転ぶわけないの」
春日童子「ああそうですか」
スクナ「私よりお姉ちゃんが心配よ。運動神経ないし、おっとりしてるし」
春日童子「まあな……呉葉ちゃんが走るところなんて想像つかないな」
スクナ「お兄ちゃんもね。運動神経ないし。気を付けてね、そこ出っ張ってるから」
春日童子「いてっ」
スクナ「あはは、言った傍から躓いてるじゃない」
春日童子「呉葉ちゃんと言えば、最近宴会場に夜な夜な出歩いているだろう? あれ何なんだろうな」
スクナ「遊び相手でも見つかったのかな? 一緒に飲んで歩ける相手」
春日童子「えっ……そんなの父さんが許さないだろ……嫁入り前の娘が夜遊びなどと言語道断だーって」
スクナ「まあね……でも今までお姉ちゃん家のことばかりで、自分のことは後回しになってたから、私ちょっとだけ嬉しいんだよね。自分の楽しみを見つけたのかなって」
春日童子「スクナ」
スクナ「も、もちろん夜遊びは心配だよ。お姉ちゃんが酒や男に溺れるなんて嫌だもん」
春日童子「男に……溺れる……?」
スクナ「ちょっと固まらないでよ。大丈夫だよ、お姉ちゃんなら。それより贈り物何にする? 深紅の紅か浅葱の簪が素敵かな?」
春日童子「そう、だな」
スクナ「お姉ちゃん外見が人間みたいだから、せめて装飾品は鬼らしくさせてあげたいよね」
春日童子「そうだな……」
スクナ「角がいびつで嫌だからって、髪の毛で角を覆うようにしてるしね。もっと堂々としてもいいのにね」
春日童子「そうだな……」
スクナ「それに天邪鬼先生だっけ、お姉ちゃんの担任の先生。すごく格好いいって、この前褒めてて、お洒落してるのも先生のためかもね」
春日童子「そうだな……」
スクナ「……」
春日童子「……」
スクナ「ねえお兄ちゃん。私にも何か買って。可愛い硝子細工があったの」
春日童子「そうだな……えっ?」
スクナ「やったー。私も贈り物してもらえるー」
春日童子「待て待て、そんなこと言ってないだろ」
スクナ「言ったよ。やった、やったー。ぼーっとしているお兄ちゃんが悪いんですよ」
春日童子「あーあ。考え事なんかするんじゃなかったな」
スクナ「へっへっへ」
春日童子「安いのにしろよ!」
スクナ「それはどうかなあ」
春日童子「スクナ~」
スクナ「へっへっへ」
*終わり*
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