いつも隣に君がいて

幸の夢の中

健吾に抱きしめられながら幸は言った。

「全部思い出したよ。事故に遭う前のこと全部。」

「え？」

健吾は驚いた。

「すごく長い夢を見ていたの。」

幸は静かに語り出した。

??気づいたら、この世界のどこかに私はいた。
そこはとても美しい景色で、一面若草色で覆われていた。前も後ろもわからないまま私は歩いた。
すると、目の前に人影が見えたの。今思えばはっきりとはわからないけど私に似た形だった。その人は私に語りかけてきた。

「あなたは大切なものを失くした。私はそれを持っている。私はあなたはだ。」 

って。
私は最初、何のことだかわからなかった。でもすぐにそれが何だかわかった。今、私の目の前にいる、いや、あるのは私が失くした記憶そのものである。
だから、その人影は私である。私は影に問いかけた。

「あなたはどうしたら私の元に戻ってくれるの？」

すると影は問い返してきた。

「今のあなたに私は必要か」

と。

「必要です。あなたじゃなきゃわからないことがあるから。私にはあなたが必要だよ。」

「なれば私はあなたの元に戻ろう。ここから戻るには深い眠りにつけ。そうすればこの世界は消えるだろう。」

そう言うと影は私の中に入ってきた。たくさんの感情が私の中にあふれ出てきて、私の脳は耐えきれなくなったのか目の前が真っ暗になった。