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反乱第八高官国にて

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 私、ノルン=オルガーノは思います。



 欲しい物を手に入れるのに、余計はこともせず、余計なモノをわざわざ失うことはないと……



 しかし、そんな考えでは足りない…



 執着が足りない…



 余計なことに、何の判断力も割いてはいけない。



 壊すべきかどうか、取っておくべきかどうか…



 目的以外に判断力を使っていては、必要なときに、コンマ数秒の判断が遅れる!間違える…



 王子が誰だとか、気にする必要もない。



 王族を全て殺せばいいだけの話なのだから…







 第八高官国、王女用の離宮に火の手が上がった。



 奴隷として囲っていたエルフ達が、ダークエルフとなって反乱を起こした。



「この離宮にいる人間全てを皆殺しにしろぉぉぉぉお!!」



 リーダー格らしきダークエルフが魔法で各所に火を放って周り、大広間で声をあげると、離宮の各所で潜んでいたダークエルフ達も一斉に人を襲い始めた。



 人間の多く住む地域では、自然から力を得るエルフは弱体化するが、ダークエルフにはそんなことは無い。



 リーダー格のダークエルフは、離宮の警備兵達に囲まれていた。



「俺は火の精霊と親和性の高いエルフだったが、今は精霊の縛りもなく、これほどの力を使えるようになったよwww」



 ダークエルフの足元、時計の針のようにニ十の炎の槍が並び、その中心で高笑いをしている。



「ハぁ~ハッハッハッ!!こちらは十人程度だが、そっちは全部で1000人はいるなwwwww…それで勝てるつもりか?」



 隊長らしき男が、前衛のシールド部隊の後方から声をかける。



「勝ち負けを語るまでもない、たった十人で何とかなると思っているのか?」



「なるさ…ここにはせいぜい400程度……脆弱な人間ごときが!ダークエルフに勝てるか!!」



 炎の槍が放たれると、シールドが貫かれ溶け落ち、幾人かは死んでしまったようだ…



「攻撃を厚くはれ…防御と回避に専念させろ。」



 数時間後、千の兵士は10のダークエルフに、一人の生存も許されなかった。



 この離宮に居た王族は三名、第二皇子と第三皇子、そして王女、それを一つの槍に串刺しにして、離宮の門の前に立て、その姿を消した。

 この日を境に、別の街々でも王侯貴族を中心に、第八高官国は荒れに荒れた。それは徐々に範囲を広げ偶数国各国では、ダークエルフによる王侯貴族狩りが起こり始めた。



 その頃、奇数諸国では、ロコックを会長とする自由解放協会による、奴隷エルフやエロール人の救済が進んでいた。これが、ダークエルフの発生や反乱を封じる形になったことで、奇数諸国では、一部貴族がロコックの歯車の餌食になった程度で済んだ、しかも、この事件によって自由解放協会は、偶数国に対する強い発言権と、支配者のいなくなった諸国や街の治安代行としても活躍していくことになった。



 これは、自由解放教会が主力商品である、子供が見てはいけない記録水晶、商品名『コミ晶しょう』や、大人の玩具ピンクローターの『マドロ』や、バイブ『ウィンウィン』の売上や、新商品・作品に対する期待も、偶数国の心の根底にはあった。



 2ヶ月もすれば、元々のロコックの知名度と人気、行動力に実力、なにより、自由開放協会内部の人間であろうと、必要ならば惑わず歯車にかけ、組織の厳格さと清廉さを示したことが、圧倒的な指示へと発展していった。





 そんな中オークたん達は、まだ、第5高官国にいた。





 赤い絨毯の敷かれた豪邸の一室、黒い重厚感のある机の上には、企画書や設計図に溢れていた。



「お~いクロエ~、久しぶりにしない?」



「忙しいで~すです。」



 机でうつ伏せになるクロエは、オークたん誘いを断った。



「そもそも俺たちって、なんで定住して稼ぎまっくってんだ?」



「う~ん、もともと目的がなかったですから…」



 部屋には商談用のテーブルと、ソファーもある、オークたんはソファーに腰掛け、クッキーを手に取った。



「コッチのクッキーって、簡単なやつしかないよな」



「クッキーに複雑とかあるです~?」



 一枚食べてから答える。



「チョコチップの入ったのとか?」



「チョコチップ?」



 クロエもテーブルのクッキーを手に取った。



「チョコのツブツブの入ったやつ」



「……たぶん、コッチの世界には、チョコ自体が無いです、クーオ様の元いた世界では、あったんでしょうけど………ちなみに、どんな食べ物です?」



 そこに、クロエルが紅茶を持ってきた。



「私にも教えて頂けますか?」



 監督や商品開発に忙しくするクロエの代わりに、クロエルがオークたんの相手を担当していた。



「え~と、カカオっていう茶色くて、いい匂いのする豆から作るんだけど…こっちにあるのかな?」



 オークたんは、形・香り・味・効能を知ってる限り説明した。



 すると、クロエルが何かピンときたようで



「あ~、ひょっとしたら、ムカイーじゃないかしら?エロールの方にある。」



「あの病気の時に飲むやつです?」



 クロエは嫌そうな顔をして答えた、なぜなら、苦味の苦手な、幼い頃しか口にしなかったことと、甘いお菓子になっているわけではないので、記憶中には苦い薬に分類されていた。



「う~ん確かに、甘いお菓子のイメージはないし、滋養強壮の薬のイメージしかないし、なにより、エロールと高官国の間には、魔王城の出現場所が挟まりますからね~…ほぼ流通しないでしょうね。」



 クロエルは顎に手を当てて記憶を思い起こしていたとき、凄い勢いで扉が開いた。



「ピンチです!ロコック様がこの部屋に向かってます!」



 穏やかだった場の空気は一変した、オークたんは仮面をかぶり紅茶とクッキーをてに、クロエルは黒い机の下に隠れ、クロエは仕事もどり、机で悩んでいる感じを出した。



「タン、久しぶりだな」



「よっよう、媚薬でも飲みに来たのか?」



「違うわ!!」



「キョッへ~~~!!」



 ロコックの大声に驚いて、クロエルが声をあげた。



「なんだ今の声は?」



「なっ何でもないです。」



 机の下では、クロエルが口を押えて震えている。



「しかし、あの映像水晶、コミ晶だったか?今の加工技術は凄いものだな~、タンはオーク、クロエなんて、完全にダークエルフだものなぁ…」



 急にロコックは真顔になった。



「本物なら…歯車して再生して歯車して、回復魔法かけながら歯車だよな~」



 クロエルが机ごと震え出した。



「どうしたクロエ?机の下になにかあるのか?」



 それはもう、ちょっとした振動ではなく、シッカリと机の端が少し浮くくらいガタガタしていた。



「まだ秘密の新商品です!威力の調整が上手くいってないです!!」



「そうかそうか、なら折角だから見せて貰おうか…」



 ロコックがすっと立ち上がると、オークたんは媚薬の瓶を取り出し、ティーカップに注いだ。



「まあまあ、ティーを用意したんだ、まずは飲むのが礼儀だろう。」



「そうだな、それは失礼した。」



 ロコックは媚薬を一気に飲み干した。



「うっ…タン!なにを飲ませた!!」



「なんでいつも飲んじゃうかな~…」



 オークたんは、ロコックを抱えると、窓から外に飛び出て、外に止めてあった黒い移動箱『ヨタトのハイライン』にサッと入って行った。



「クロエル、とりあえず助かったです。クロエル?」



 机の下を覗くと、クロエルは失禁して気絶していた。



「これは今度は、お仕置きが必要です。」
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