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こうなったら神なんてカスよ

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初めて狂夜に会った時、全てが止まったような錯覚を覚えた。



 勿論、自分以外の時間は動いていて、狂夜本人は、突然現れたことで、こちらを驚かせたと、勘違いしたようで、それはそれで慌てた様子で…



「あ~、あやしい者じゃない?いや、あやしい者なんだ……違うな」



 ものすごくテンパっていた。



 私はこの世界の選ばれし聖女であると、幼い頃から自覚しており、周囲も、そのように扱ってきた。



 第一聖女候補、それが私の立ち位置だった。



 私とは対極の立ち位置の人間がいた。



 それが、亜人と言われていたエロール人である。



 町で悲鳴を聞けばエロール人と、それを虐しいたげる、自分を選ばれた人間と勘違いした貴族だった。



 耳障り、貴族程度が偉そうに…奴隷と何の違いがあるか…



 良心ではない、私こそが本当に選ばれし者だから思った。



「貴様ごときが偉そうに、奴隷と何の大差がある!」



 蹴り飛ばし、馬車用のムチで叩いた時の顔ったらない。自分には絶対に起こらないと思っていことが、その身に降りかかり、その上、自分が逆らえない人間…



「そんな理不尽な…」



「そんなことを言われてもなw」



 平等に、エロール人の奴隷にも、蹴りを入れてムチを打った。



「ツッッ……」



 当たり前なのだろう、反応があまりない。



「おい、この貴族を、立たせて抑えろ。」



「なっ何を!?」



 しっかりと振り上げて、しっかりと顔面を叩く。



「ひぃぃ!痛い!やめてください!」



 エロール人もついでに叩く。



「クッ……」



 イマイチ~



 やっぱ叩くならよく鳴く豚に限る。



 豚狩りを始めて数日後、第三高官国の辺境に住む、没落貴族の老婆にあった、聞けば、後継ぎもなく、ただ国に奪われるよりも、私に預けたいとのことだった。

 

「ロコック様、聖女や勇者が一人でないとしたら信じますか?」



「愚問ね、一人だから人は選ばれし者と言うのよ」



「そうですね、では候補は一人ではないとしたら?」



「それは今の状態と同じだから、私には意味がない。」



 老婆は微笑むと、一冊の本を差し出した。



 タイトルは『ネコノクロミン』、中はクロ猫のクロミンが、あらゆる事件を膝蹴ひざげりで解決していく、痛快ミステリー格闘ラブロマンスだった。



「私が生きた150年で、一番面白い本です。」



 150?思ったよりメッチャ婆が進める本は、確かに面白かった。



「但し、一つだけお気をつけを…それは…」



 それは、この本を本当の名前で呼ばないこと、破やぶれば、本当の姿を表あらわし、世界の真実を目まの当たりとする。



 ある日私は、戯れにタイトルの文字を組み換え、たまたま本当の名を引き当てた。



 世界の仕組み、この国の成り立ち、神の作ったシステム………





 私は立ち尽くしていた。



 狂夜が近くに居たのを覚えている。



 聖女も勇者も、神の作った歯車を回すネジ、聖女や勇者にとって、人を思う気持ちは、神にとって、歯車を廻すネジの調整に過ぎないのだと……



 途端に全てが気持ち悪くなった。



 聖女が!勇者が!選ばれし者とか!世界を守るだとか!神だとか!



 私にとって、気持ち悪くない瞬間は唯一つ…



「私は…理不尽の理不尽になる。」



 そして私は辿り着いた。



 顔を上げ、周りを見れば、タン=クーオ、狂夜御剣、聖女マリアにクロエ、魔王にオルガーノにダークエルフ…



 神の導きだかなんだか知らないが気持ちの悪い!!



 ならばもういい!私は私の望む存在になる!!



「いまこそッ!!私は世界唯一の理不尽となるッッ!!!」



 神器メテオスターが唸りを上げる、咄嗟に聖女マリアがバリアを張らなければ、ただでは済まなかったろう。



 そしてメテオスターの鉄球は、ロコックの鎧を貫き、その心臓を打ち砕いた。
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