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乙女ゲーの攻略対象

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皆さんの作戦タイムの間、俺の事は超放置プレイでした。
魔法陣の中、棒立ちで待機してましたよ。
椅子でも持ってきてくれるとありがたかったんだけどな?

時間にして5分ほどだろうか。
とりあえずの話がまとまったのか、カラフル男子たちと黒ローブ集団がこちらに向きなおり一礼。
カラフル男子たちが上げた顔には、見事な営業スマイルが貼りついていた。

いやいやいや、さっき思いっきりしかめっ面してましたよね。
取り繕えると思ってんのかーい。

思わず脳内でツッコミを入れてしまう。
俺が女子だったら、イケメンフェイスパワーで押し切れたのかもしれないけど。
胡散臭いものしか感じてない俺には無理だ。
ただただ、胡散臭い。

代表して金髪碧眼コンビが話しかけてきた。
この2人は兄弟かな?
品行方正な王子様とフェロモン垂れ流しのチャラ男。
歳はチャラ男の方が少し上に見える。
王子の方は俺と同じくらいかな。
タイプは違うけど、顔の造りは似通っている。
胡散臭いけど。

「ようこそ、聖者さま」

「どうか私どもの話をお聞き下さい」

胡散臭い丁寧な口調で話しかけてくる。

おっとー。そうきたか。
聖女じゃなくて聖者扱いにして、異世界人をキープする考えのようだ。
でもさっき、「男だと…?」とか言ってたの、しっかり聞いてましたよ?
見事な手のひら返しだ。
俺の中では胡散臭いに拍車がかかっている。
そろそろ胡散臭いがゲシュタルト崩壊しそうだ。

「話、ですか?」

今もキラキラ輝いている魔法陣の上で、俺は首を傾げる。
とりあえず言質は取られないようしないとな。
顔には出さないけど、警戒モード発動中です。

それにしてもこの魔法陣、光りっぱなしでいいのか?
足元の光に目をやると、俺以外の人間も戸惑っているようだ。
誰も魔法陣の中に踏み込んで来ようとしない。

「ひとまず落ち着けるところでお話しましょうか」

「どうぞそちらから降りてきて下さい」

金髪コンビも魔法陣の外から呼びかけてくるけど、中に入ってこない。
まあ、こんなピカピカしてて怪しいところには入りたくないよなー。
ただ、どうしてなのだろう。
俺の勘はここから出ない方がいいと言っている。

「…」

「…」

エスコートするようにこちらに手を差し出している金髪王子。
その手を見つめてスルーする俺。

だって男にエスコートされても、ねぇ。
絵面を想像するとサムい。

沈黙の重たい室内。
少しずつ増えていく一般兵。
動こうとしない俺に焦れたのか、兵士を使って連れ出したいらしい。
でもその兵士さんたちも腰が引けてる。

さて、どうしようかな。
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