最弱で駆ける道

じゃあの

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第一章 『始まりの洞窟』

第十六冊 『最高級の絶望』

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 オークの死体から龍神の剣を抜き、ヨウは浅く息をつく。一つの『何か』を成し遂げたというのに、その達成感は無い。それ以上見ることは辞め、目を逸らした。

 それよりも、圧倒的に重要なことがある。今のヨウが生きている理由、そう言っても過言ではない。
 痛む腕を気にしながら、ヨウはゆっくりと歩いていく。体力を使いすぎた、正直もう一歩も歩きたくないが、そうも言っていられない現実。

 せめてもの腕の治療として、ヨウは残った魔力を全て右手に集中させる。やはりというか、龍神には人間以上の自動治癒能力がある。それ即ち魔力を込める=活性化させるに繋がる訳で、再生はしないにしても、何かしら恩恵はあるだろう。
 実際、ぽたぽたと垂れていた血が止血され、若干痛みが和らいだ気がする。本当なら龍魔法の中から治癒効果のある魔法を探したいが、若しティアが危ない状態だった場合そちらを優先すべきだ。

「ユースティア……」

 重い体を動かし、壁に縛られているティアに近づく。両手首、両足首に縄は括り付けられていて、素手のティアでは千切るのは難しいだろう。|火球(ファイアーボール)だったら焼けるかもしれないが、それだとティア自身も燃えてしまう。それに、手足が使えない状態での魔法使用というのは案外難しいものだ。例えが難しいが、利き手じゃない方の手で鉛筆を書く様な感覚、というのが近いだろうか。詰りは『慣れない』という事だ。

「ユースティア、っく」

 縄を切ろうと手を伸ばすが、体の力が抜けてしまう。同時に、頭から血が流れ始めた。
 やはり、少し無理をしていたようだ。あれほど力を酷使し、さらには湯水の様に魔力を使ったのだ。それも無理は無いだろう。

 だが、ここで辞めてはいけない。ヨウは膝に手を付きながら立ち上がると、フラフラのまま、ティアを縛る縄だけを切断する。地面に落ちるティアを何とか支え、ヨウはゆっくりと降ろす。気絶している様だ。首に手を当てれば、しっかりとした脈動の音、さらには呼吸が聞こえた。

 ティアは生きている。

「……」

 知らずの内に涙が出てきていた。感情を言葉に表せない、胸の中がいっぱいになる気持ちで、ヨウは無意識にティアの頭を撫でていた。同時に、不甲斐なさで笑えて来る。最初から、ヨウが命を張れば助かっていたのだ。

 あの時、見捨てることなく、カルムは死ぬことはなく、ティアも捕らえられることは無かった。フィリアだって、ヨウが龍魔法を使えていれば助かったかもしれない。死んでいたら無理だが、あの時、ヨウと会った時点ではまだぎりぎり生きていた。

「……ぅ……ん」
「! ユースティアッ!」

 頭を撫でていると、ティアの呻く声が聞こえた。同時に瞼がゆっくりと開かれる。ヨウが呼びかければ、ティアはゆっくりと体勢を起こし、あたりをボー、っとした感じで見渡した。

「……ここは……ヨウ君……?」
「えーと、此処はまだ洞窟で、それで、それで……」

 声を聞き、思わず涙が止まらない。声を聴けただけで価値があるというもの。同時に言葉が途切れ途切れに成って、言いたいことを言えなくなってしまう。『生きていてよかった』『無事で良かった』『痛いところは無いか』。そんなことをたくさん聞きたいのに、言えない。けど、顔には笑みが零れていた。
 
「ユースティア……よかった……」
「ヨウ君……生きてたんだね……オークは?」
「お、おれが倒した。いや、嘘だと思うかもしれないけど、強い力を手に入れて、それで、倒した」

 ティアは頭を振りながら、あたりを見渡して尋ねてくる。その顔はまだ意識がはっきりしないのか、朧げな表情だ。それに対し、ヨウは言葉を継ぐ剥ぎで紡いでいく。何となく、普通には喋れなかった。落ち着こうとしても言葉足らずに成って、なんだか初心な少年みたいである。

「そっか、強いんだ─────」
「いやいや、そんなこと、」

 パンッ!

 ────言葉は唐突に遮られた。
 同時に、頬が熱く、痛みも感じる。強制的に横を向かされていた。驚き、ティアの方を見れば、いつの間にか立っていて、その顔は憤怒に染まっている。

 涙を流しながら、ティアは、

「─────この、裏切り者……!」

 そう、告げたのだ。

「……え?」

(え? え? え? え? え? え? え? え? え? え? え? え? え? え? え? え?え? え? え? え? え? え? え? え? え? え? え? え? え? え? え? え?)

 大量の疑問符が脳裏に浮かぶ。先ほど、ティアが生きていたことを知った時以上の混乱だ。現状を脳裏で整理しても、結論にたどり着かない。何度も何度も『分からない』という言葉が頭を埋め尽くしていた。
 そんなヨウを無視して、ティアは捲し立てる。

「裏切り者……! どうして、どうしてあの時逃げたの!?」
「──────」
「そんな、そんな、腕一本だけを犠牲にしてあの|化け物(オーク)を倒せるんだったら、なんであの時逃げたの!? ヨウ君が戦って居れば助かったかもしれないのに!」
「─────────」
「確かに怖いよ? けど、怖いから何なの!? なんで逃げたの!? 怖くても、助け合えるのが仲間じゃないの!? 私たち、仲間じゃないの!? 私とカルムとフィリアとヨウ君、四人で、頑張ってきたんじゃないの!? それなのに、なんで見殺しにしたの!」

 ティアの怒号はまだまだ止まらない。いつの間にかヨウもティアも大粒の涙を流していた。

「その程度なの? 私たちの今までの冒険は、『怖いから』程度で終わってしまう様なくだらないものなの? ねぇ、なんで逃げたの? 怖いから、めんどくさいから、臆病だから!? 違うよね、ヨウ君は自分の命が惜しいから、私たちを見捨てたんだよね!」
「────俺は……」
「何も言わないで、聞きたくない! ヨウ君の中では、自分の腕と私たち三人の命を天秤にかけたら、自分の腕が大切ってことだよね! そりゃ、腕を犠牲にしろとは言わないよ! けど、ヨウ君の力に私とカルムが手伝えば、全員無事であの|化け物(オーク)を倒せたかもしれない! フィリアは無理かもしれないけど、それでも、治せたかもしれない。まだ、笑ってたかもしれない!」
「────俺、は……」

 考えてもみなかった可能性だ。だって、オークは半端ない化け物である。それを三人で協力して、倒せただろうか。ヨウが好きに動けたからこそ倒せたのでは─────その思考が、カルムとティアとフィリアを下に見ていると、気づいて、涙が止めどなく溢れてくる。

「ヨウ君─────何で見捨てたの! なんで、なんで……何でッ!」

 嗚咽を交えながら、ティアは叫び続ける。
 何をバカなことを考えていたのだろうか、ヨウは。浅はかで、怠惰で、酷く傲慢な考えだ。オークを倒せばハッピーエンドだと思って居た。そんなはずはない。そんな訳がない。

 ヨウは一人で自己完結していただけだ。いつの間にか救われたつもりに成っていて、三人のことを考えていなかった。裏切られているのだ、カルムとティア、間接的にフィリアも。ようやく訪れたと思った希望に裏切られる気持ちを想像して、吐きそうになった。

「なんで、なんでなんでぇ……なんで、裏切ったの……! 私、何か悪いことした? してないよね……何が悪かったの? 私の行動が? なにが……」
「─────違うッ! 」
「……何が、何が違うの!」
「違うッ! そんなんじゃない、俺が……俺が臆病だっただけだ……ただの臆病で、カルムとフィリアを殺して……それで!」

 何を言ってもダメな気がした。何を言っても、手遅れで、全てが惡で。
 もう戻ってこない。四人が笑える未来は、もうない。関係が戻ることもないし、全てが崩壊している。

「……何を言っても、どうにもならないよ。二人は死んだの」
「……」
「……無理だよ、赦せるわけがないよ。」

 残酷な静寂が、空間を支配した。
 ティアは力なくその場に座り込み、ヨウは自分の頭を掴みながら後悔を繰り返している。たった一つの『恐怖』、それによって、笑い合っていた二人はここまで堕ちてしまった。

 何を言っていいのか分からない。何をするのが正解なのかが分からない。生きる目的も、理由もなくなった。もう、生きていいかすら分からない。
 ただひとつ、願うことがあった。

「……ユース、ティア」
「何……?」
「────死ぬな「死なないよ」よ」

 遮られて、ヨウは目を丸くする。唯一つ願うこと、それはティアが死なないことだ。ティアが死んでしまったら、それこそ最悪だ。ヨウは最高の絶望で生きていくことになる。
 そんなこと抜きにしても、ティアは死んじゃだめだと思った。

 ティアは「はー……」と息をつくと、

「私、死にたくないし。ヨウ君に言ったよね、『死んだらそれこそ生き物に失礼だ』って、それで私が死んだら……それこそ、ヨウ君と同じに成っちゃうよ」
「─────」

 ごもっともだ。

 ティアの言葉の一つ一つが胸に突き刺さる。けど、それに反論することも疑問を持つことも許されない。選択の機会はいくつもあった、けど、その全てを棒に振ったのはヨウ自身だ。甘んじて受け入れるだとか、そんな茶地なモノではない。

「……」
「……」

 再び無言に成り、ティアは静かに立ち上がる。そして、ヨウをしっかりと見据えると、

「……ヨウ君」
「なんだ? もう行くのか?」

 用件は、それかと思った。もうどうでもいい、どうせ二人の関係は修復できない。もうどうでもいい。ティアがどうなろうとも、ヨウには関係ないことだ。
 だから、ティアはここを離れるのかと思った。一瞬『剣も無く、ここを離れてどうするんだ』なんて浮かんだが、もうどうでも良かった。

 けど、ティアはそれも・・・許さない。

「……私、ヨウ君を恨んでる」
「うん。分かってる」
「でもね、完全には恨み切れてないの」
「うん……うん?」

 意外な答えが飛んできた。飛んでくる言葉は罵倒か恨み言かと思ったのに、煮え切らない言葉だ。『恨み切らない』、何て曖昧な言葉を、ティアは一度たりとも逝った事は無かった。思わず疑問の言葉が出てしまうが、ティアはそれを押さえつけて言葉を続ける。

「私前に言ったよね? 『仲間が何より大切』だって」
「あぁ、言ってたな。『私には仲間しか残っていない』とも」

 記憶の糸を辿り、その言葉を引っ張ってくる。確かに、そう言っていた。けれど、それが何の関係があるというのだ。その仲間は、もう死んだ。フィリアとカルムはヨウのせいで死んだ。

「私は、ヨウ君のことも仲間だと思っててた。蹂躙白狐アルビノフォックスから助けてくれたヨウ君を、仲間だって。それに、恨みが強いけれど、さっきも助けてくれたことに変わりはない」
「……? あぁ、それがどうし─────」

 そこまで言って、気づいた。というより、察した。それは─────救いの様で、ある意味最悪の地獄だ。

「だから、さ」

 ティアは紡ぐ。枯れ果てたはずの涙をもう一度、流して。

「─────もう一度だけ、ヨウ君を信じていいかな」
「それは─────」
「もう一度だけ、ヨウ君を『仲間』だと思っていいかな……!?」

 ティアは酷く泣いていた。ポロポロと零れる涙は果てる事は無い。それは、ティアにとって一番苦しい選択だったはずだ。そのことに、ヨウは気づいてしまった。複雑な意図、けど、この数十日で得た、ティアへ対する理解力で。今だ残る、恋心で。

 ティアはさっきこう言った、『私は死なないと』。そして、『もう一度仲間だと思っていいかと』。それは即ち、ヨウを支えとして生きることを意味する。普通、こんなことには気づかない。けれど、ヨウだから、ティアを『好きな』ヨウだから、気づいてしまった。気づかざる負えなかった。

「─────信じてくれ」
 
 虫の良すぎる話だ。同時に、希望的で、絶望的過ぎる話でもある。

 ユースティアは──────ティアは、自らの一番大切な人達を、見殺しにした人間に縋って、これからを生きていく。

「ッ」

 ヨウは鳴いた。嗚咽を漏らし、今度こそ大声で泣いた。

 自分の不甲斐なさに、自分のゴミの様な生き方に、自分の総てに。ティアは、自分の最も大切な人を殺した人間を、支えにして、生きていかなければならない。それが誓いだからだ。生きなければならないから、ヨウを『仲間』にして生き続ける。そんな、誰も幸せに成らない様な決断をしたティアに泣いた。

「ヨウ君─────」
「信じてくれ……信じてくれ」
「……わかった」

 ティアはヨウを抱き寄せて、同じく泣いた。泣きながら、ヨウの頭を撫でてくれた。憎しみでしょうがないはずなのに、今すぐにでも殴りたいはずなのに、二人の生きた意味を無くさないために、そんなことまでして。

 耳元でティアの泣く声が聞こえる。ヨウは代わりに、ティアの背中を摩っていた。

 二人は泣き続けた。今までの日常の終わりと、これからの生き方に。

~~~~~~~~~~~~~~~~

 どれだけの時間、そうしていただろうか。もう、出すものも出し尽くしてしまった。
 いつの間にか、二人は離れていた。お互いに背中合わせで座って、俯いている。やがてどちらともなく立ち上がれば、ヨウは声をかけた。

「飯、食べるか?」
「うん……そうだね。お腹すいちゃった。久し振りにヨウ君の料理食べたいな」

 ティアは少し頬を赤らめて、お腹を摩った。不謹慎なことはいけないが、その動作をされると少し複雑な思いだ。いつになっても天然だな、なんて考えてヨウは広場の出口の方へ歩き始める。

「? ヨウ君、何処行くの?」
「食料の調達と、燃える物の確保。俺がカルムから預かっていた道具系統は全て何処かに落としてしまったからな」
「食料の調達なら、私が─────」

 そこまで言って、ティアは自分の剣が無いことを思い出し、バツが悪そうな顔をする。そういえば、ティアの剣は何処に言ったのだろうか。何れ探さなければならないが、今は腹ごしらえだ。ヨウは少し微笑を浮かべる。

 オークに拘束されたとき、奪われたか、落としたか、破壊されたか。いや、ティアの剣は不変性をもった神製道具アーティファクトなので、破壊は無いだろう。となると、落とした可能性である。何が起きるかは分からないが、洞窟にあるのなら回収する必要があるだろう。

「付いてくるか? 一人でいるのは避けた方がいいだろうし……」
「ううん、私は火の確保でもしてるよ。それに、剣なら」

 そこまで言いかけて、ティアは死んだオークの方へ歩み寄り、巨剣を片手で軽々と持ちあげる。「ほらっ」、と笑いながら言う姿はホラー感が漂っていた。
 ヨウは引き攣った笑みを浮かべながら、「まぁ、それなら大丈夫かな」と言った。

 ヨウはその間に再生していた右手がしっかり動く事を確認し、龍神の剣を召喚する。空中に出現した剣を右手で掴み、しっかり剣を振るえることも、入念に確認した。
 ティアが眼を輝かせて「おぉっ!」と感嘆の声を上げるが、何回も止めていることを申し訳なく思ったのか、口を塞いで笑った。

「帰ってきたらこの剣も見せるよ。たぶん、相当業物だと思うぜ?」
「うん、楽しみにしてるね」

 そうして、二人は別々の道に歩き出す。

 だが、

「?」

ブシュッ

 ヨウの視界の端、何かが光を発したかと思うと、



「あ」


 ─────ティアの全身から、血が噴き出していた。そのまま、バタリと力なく体が崩れ落ちる。

「────っっっ、ユースティアアァァアァァアァァァァァアアアアアアアッ!!」

 絶叫が響き渡る。終わらせないぞ、とでもいうかのように、絶望がヨウを嘲笑っていた。




『アァ─────『龍神の試練』、これが最後だ』

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