繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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エピソード・オブ・タケル

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 気が付けば俺は草原の中に横たわっていた。
 背の高い雑草を大きく揺らす風が肌に冷たく思わずその場で丸くなる。
 季節は冬だろうか? 随分と肌寒い。
 身体の調子を確認しながらゆっくりと立ち上がり掌で身体をさすって暖める。辺りを見渡すと木々が赤や黄の葉で着飾っているので季節は秋だと認識する。
「ーーーーん?」
 様子がおかしい事には、すぐに気が付いた。
「え……」
 視線を自分の身体へと落とす。
 ーーーーパンツ一丁だった。
 俺はすぐさまその場にしゃがみ込み熟考する。
 なっ……なんだよコレ。いつもと違うじゃん! いつもは《旅人の服》とかじゃん! 何これ《旅人のパンツ》!? 
 もはやただのパンツじゃん。 
 俺が慌てふためき取り乱していると、俺がしゃがみ込んでいる草むらのすぐ近くにあるあぜ道を一人の男が歩いて来た。
 俺はすぐさま男の視界から逃れる為にバックステップからのうつ伏せ姿勢で雑草の中に身を隠す、湿った土の匂いが妙に懐かしい。
 すると、俺は突然血を吐いた。
「ごふっ……」
 なんだコレ……急に体調が悪くなったぞ。頭ぼーっとするし脂汗がどんどん出てくる。
「ちょっ……ステータス」
 目の前に見慣れたステータスが表示される。

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 勇猛

 Lv 1
 HP 14/11
 MP 9/9
 力  14
 守り 9
 早さ 8
 魔力 3
 職業 100回目の勇者
 装備 
 お金 0G
 状態 猛毒

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 ステータスの一部に酷い悪意を感じた。
「何で転生してすぐ猛毒くらってんだあああ!? 初期装備は!?」
 ふと、神の、親父の顔が脳裏をよぎる。それはそれはとてつもなく悪い顔付きだった。
「お前の仕業か!? クソ親父! 子供みたいな嫌がらせしてんじゃねぇ! どーすんだコレ!? 俺死ぬぞ!? 村にも辿り着けねえぞ!?」
 天界。すなわち空を見上げて大声でわめき散らした。
 すると俺の声に気が付いたさっきの男が不思議そうな顔をして近付いてきた。
 俺はすぐに黙って気配を消したが、俺が隠れているのはもうバレていた。
「あの……誰ですか? どうかされましたか? お困りですか?」
 男はあぜ道から雑草の中の俺を見下ろす形で問う。
 男に俺のパンツ姿を見られてそうでかなり気が気じゃないが、パンツ一丁だとわかっていたらあんなにまじまじとこちらを見ないだろうと思い、根拠の無い安心感を胸に俺は男の問いに答えた。
「あ……いや……何て言うか、その……。子供みたいな親父と喧嘩して、子供なのに親に逆らったら、あり得ないほどの嫌がらせを……」
「……? なんだかよく分かりませんが、盗賊に身包みを剥がされてしまった。みたいな事ですか?」
「盗賊? ああ、ええ。まあ、そんなところです」
 もはや盗賊みてぇなもんだろ、あのクソ親父! 
「でしたら、まずはコレでよかったら着てください。今の季節、パンツ姿ではさすがにお寒いでしょう?」
 そう言って男は肩から下げていた袋から服を取り出して俺に差し出した。
 パンツ一丁なのバレてた……。
「私の仕事着です。ボロですが無いよりはマシでしょう? 私はあっちを向いてますから誰か来ない内にお早く」
 何て良い人だ、まさに捨てるバカあれば、拾う神ありだ。
 もう恥ずかしがってる場合じゃない、俺は男の申し出を受ける事にした。
「助かります! 早速着させて貰います」
 雑草の中で隠れるように素早く仕事着に着替えた。
 俺は草むらから立ち上がり村人に向き直って心からお礼を言った。雑草越しだと気付かなかったが、男は俺と同じぐらいの年齢で切り揃えられた短髪が爽やかで、がっちりとした体格の好青年だった。近くの村の青年だろうか?
 とりあえず見た目の問題は解消し安心した。俺は空――天界を見つめて思いを馳せる。
 しかし、青年はどうしたのか明らかに狼狽した様子で俺の身体を上から下に舐めるようにまじまじと見つめる。
 そして青年は震える声でこう告げた。
「ーーーー全身……紫色ですよ?」

 
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