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エピソード・オブ・タケル
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と、このまま流れに任せて外に出てしまうところだったが、すんでのところで思いとどまった。
「そういや残りHP確か2だったな」
解毒したとはいえ猛毒の猛威がもたらした結果を思い出した。
この辺のモンスターにやられる事はないと思うが念の為にステータスを確認してみる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
勇猛
Lv 1
HP 14/14
MP 9/9
力 14
守り 9
早さ 8
魔力 3
職業 100回目の勇者
装備 旅人の服
お金 0G
状態 普通
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「えっ……」
HP 14……。
状態異常どころかHPが全回復していた。
ーーーーあなたが多くの血を吐くので。
ーーーー特別な感じがしませんか?
ドーグさんの言葉が脳裏をよぎる。
「はは…………」
驚きと混乱が交錯する中、俺の口角は自然と上がっていく。
優しい思いが込められた道具には奇跡が起こるのだと、俺は100回目の勇者人生にして初めて知ったのであった。
常識では考えられない出来事。それが奇跡か。
胸に込み上げるなんとも言えない気持ちが溢れ出してきて、俺は背にしていたドーグさんの村に深々と一礼して村の外へと出た。
久しぶりに高鳴る気持ちのまま村から数歩歩いたところで視界の端に人影を発見し、そちらへちらりと視線を送る。
男だった。
もちろんドーグさんではない。
年齢こそ同じくらいに見えるが、全くの別人。
別の人。というよりもなんていうか、そう。種類が違う。あるいはタイプが。同じ人間なのに全くの別物だ。
俺がなぜそう思うのかというと、恐らくはあの人物の顔つき、主に目つきだろう。
ドーグさんは常にニコニコとしてほっこりした癒し系な感じの人だったが、あの男は全くの逆だ。
目にかかるくらいまで伸びた黒髪、その奥から放たれる人の心までも見透かしてしまいそうなほど冷たい眼差し、感情が一切読み取れない表情、全身から漂う怪しげな雰囲気、見るからに上品な素材で作られたデザインの衣服、見ようによってはどこかの国の王子様にも見える。
第一印象で感想を述べるならば、ちょっと苦手なタイプの人間。
明らかに俺より格好いいところが特に大きな減点対象だ。
男はそんな査定を行なっている俺の近くまで歩いてくるやいなや、俺の全身を上から下からじっくりと見て口を開く。
「ふむ、お前はここら辺に住む人間か?」
「え……ああ、はい……。そうです」
突然の質問に対し、つい嘘をついてしまった。
「そうか……名は?」
「タ……タケルと言います」
男は腕組みしながら目を閉じて更に言葉を発する。
「……そうかタケルか。覚えておこう。私の名はデューク。私は今、色々と世界を見て回っている最中なのだ」
「冒険者……ですか……」
デュークと名乗った男は俺の言葉に少し引っかかったような素振りを見せて、
「……ふむ。冒険者か。それもいいかもしれないな」
腕組みしながら冒険者という言葉の響きを堪能するように頷くデューク。
「…………」
「…………」
気まずい沈黙が続く中、俺はどうにか会話を続けようと試みる。
「た……旅の……旅の目的とかってあるんですか⁉︎」
言い終わったと同時に、さっき世界を見て回っていると言っていた事を思い出し、どきりとした。
「目的はなんでもいい……ただ見聞を広げたい。ふむ、そうだな。あと、趣味というほどのものではないが強者を探している」
「強者……ですか……」
もしここで俺がふざけて『俺も結構強いですよ!』とか言ったら襲いかかってきそうな気がする。
「強いといえば、恐ろしく強いといえば……やっぱり大魔王とかになるんでしょうか」
デュークは虚をつかれたように目を見開いて笑う。
「大魔王か……確かにそうだな。モンスター達の親玉。ふむ。大魔王を倒す旅というのも面白いのかもしれん」
「…………」
ーーーー何っ⁉︎
大魔王を倒す⁉︎
男の放った一言に驚きが隠せない。だってそんな人物今まで見たことないぞ。
まあ、冷静に考えれば魔王討伐を目指す強者はどこかにいるにはいるんだろうが……今まで俺が気が付かなかっただけで別の場所でモンスター達と戦い勝利し、また敗北する者は相当数いるんだろうが……。
でも、こうして目の前に現れたことは今まで一度もなかったんだが……。
そもそも転生直後の状態といい、ドーグさんといい、この男、デュークといい、なんだか始めての事ばかりだ。
今のところ景色ぐらいしか判断できるものはないけれど、ざっと見る限りにおいてこの世界は今までと全く同じ世界なんだけれどな。やはりスタートが今までと違っているから多少の変化点があるのだろうか?
なんだかんだと考えていると、デュークからとんでもない提案をされる事となった。
「タケル。どうだ貴様、私の仲間にしてやろうか?」
「そういや残りHP確か2だったな」
解毒したとはいえ猛毒の猛威がもたらした結果を思い出した。
この辺のモンスターにやられる事はないと思うが念の為にステータスを確認してみる。
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勇猛
Lv 1
HP 14/14
MP 9/9
力 14
守り 9
早さ 8
魔力 3
職業 100回目の勇者
装備 旅人の服
お金 0G
状態 普通
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「えっ……」
HP 14……。
状態異常どころかHPが全回復していた。
ーーーーあなたが多くの血を吐くので。
ーーーー特別な感じがしませんか?
ドーグさんの言葉が脳裏をよぎる。
「はは…………」
驚きと混乱が交錯する中、俺の口角は自然と上がっていく。
優しい思いが込められた道具には奇跡が起こるのだと、俺は100回目の勇者人生にして初めて知ったのであった。
常識では考えられない出来事。それが奇跡か。
胸に込み上げるなんとも言えない気持ちが溢れ出してきて、俺は背にしていたドーグさんの村に深々と一礼して村の外へと出た。
久しぶりに高鳴る気持ちのまま村から数歩歩いたところで視界の端に人影を発見し、そちらへちらりと視線を送る。
男だった。
もちろんドーグさんではない。
年齢こそ同じくらいに見えるが、全くの別人。
別の人。というよりもなんていうか、そう。種類が違う。あるいはタイプが。同じ人間なのに全くの別物だ。
俺がなぜそう思うのかというと、恐らくはあの人物の顔つき、主に目つきだろう。
ドーグさんは常にニコニコとしてほっこりした癒し系な感じの人だったが、あの男は全くの逆だ。
目にかかるくらいまで伸びた黒髪、その奥から放たれる人の心までも見透かしてしまいそうなほど冷たい眼差し、感情が一切読み取れない表情、全身から漂う怪しげな雰囲気、見るからに上品な素材で作られたデザインの衣服、見ようによってはどこかの国の王子様にも見える。
第一印象で感想を述べるならば、ちょっと苦手なタイプの人間。
明らかに俺より格好いいところが特に大きな減点対象だ。
男はそんな査定を行なっている俺の近くまで歩いてくるやいなや、俺の全身を上から下からじっくりと見て口を開く。
「ふむ、お前はここら辺に住む人間か?」
「え……ああ、はい……。そうです」
突然の質問に対し、つい嘘をついてしまった。
「そうか……名は?」
「タ……タケルと言います」
男は腕組みしながら目を閉じて更に言葉を発する。
「……そうかタケルか。覚えておこう。私の名はデューク。私は今、色々と世界を見て回っている最中なのだ」
「冒険者……ですか……」
デュークと名乗った男は俺の言葉に少し引っかかったような素振りを見せて、
「……ふむ。冒険者か。それもいいかもしれないな」
腕組みしながら冒険者という言葉の響きを堪能するように頷くデューク。
「…………」
「…………」
気まずい沈黙が続く中、俺はどうにか会話を続けようと試みる。
「た……旅の……旅の目的とかってあるんですか⁉︎」
言い終わったと同時に、さっき世界を見て回っていると言っていた事を思い出し、どきりとした。
「目的はなんでもいい……ただ見聞を広げたい。ふむ、そうだな。あと、趣味というほどのものではないが強者を探している」
「強者……ですか……」
もしここで俺がふざけて『俺も結構強いですよ!』とか言ったら襲いかかってきそうな気がする。
「強いといえば、恐ろしく強いといえば……やっぱり大魔王とかになるんでしょうか」
デュークは虚をつかれたように目を見開いて笑う。
「大魔王か……確かにそうだな。モンスター達の親玉。ふむ。大魔王を倒す旅というのも面白いのかもしれん」
「…………」
ーーーー何っ⁉︎
大魔王を倒す⁉︎
男の放った一言に驚きが隠せない。だってそんな人物今まで見たことないぞ。
まあ、冷静に考えれば魔王討伐を目指す強者はどこかにいるにはいるんだろうが……今まで俺が気が付かなかっただけで別の場所でモンスター達と戦い勝利し、また敗北する者は相当数いるんだろうが……。
でも、こうして目の前に現れたことは今まで一度もなかったんだが……。
そもそも転生直後の状態といい、ドーグさんといい、この男、デュークといい、なんだか始めての事ばかりだ。
今のところ景色ぐらいしか判断できるものはないけれど、ざっと見る限りにおいてこの世界は今までと全く同じ世界なんだけれどな。やはりスタートが今までと違っているから多少の変化点があるのだろうか?
なんだかんだと考えていると、デュークからとんでもない提案をされる事となった。
「タケル。どうだ貴様、私の仲間にしてやろうか?」
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