24 / 135
エピソード・オブ・村長
14
しおりを挟む
翌日。
早朝から村のあちこちでは騒々しい音が鳴り響いた。村人全員での大修理が始まったのだ。
今回のキラーファング襲撃による被害は実際のところ大したものでは無かったが、村全体を包んでいたギクシャクとした空気感が綺麗さっぱり取り払われ、村の至る所に出始めてはいたがどうにも手付かずになってしまっていた様々な箇所のガタも同時に修理してしまおう! と、村人達がこぞって立ち上がったのだ。
若い男達は木材やレンガなどを運び、壁の塗り替え、柵の修復、建て付けの狂ったドアの調整などにてんてこ舞い。
若い女達は村で採れた野菜や果物を使った料理の準備に精を出し、手が余った者は男達の作業の補助を務めたりと、こちらもやはりてんてこ舞い。
子供達もやはりその例外ではない。中でもお兄さんお姉さんと呼ばれるような年代の子供達は自分の兄弟ではない小さな子供達の面倒を買ってでるなどして微力ながらも頑張る大人達の補助として、てんてこ舞い。
だが、そんな世話をされる小さな子供達だって負けてはいない。あんなに小さな身体のどこから出てくるのだと不思議に思うほどに元気いっぱいに村中を走り回って騒がしい村の活気に華を添えている。
また、いつもは気怠く寝ている道端の犬だって、ここぞとばかりに吠えあげて、尻尾をちぎれんばかりに振っている。
ガネーシャ村は、今まさに一体感に包まれていた。
秋の冷たく乾いた風をものともしないほどに熱気に包まれ活き活きとしている。
どこからか香ってきた料理の匂いを肺いっぱいに吸い込んで、俺は一人ガネーシャ村を出る事にした。
「ーーーータケル殿」
急な呼びかけに両の肩がびくりと跳ね上がる。
「そ……村長」
「もう、行くのかい?」
「……うん。キラーファングを倒した事でジーナさんの敵討ちは出来たと思うし、リーダーを失ったモンスター達はこの辺一帯から姿を消す筈だからね……」
「そうかい……」
「…………」
「…………」
俺達の間にらしくない空気が漂い、沈黙が辺りを支配する。
そして、俺はバカな事だと十分
に分かってはいるが意を決して言葉にする。
「「あの……」」
だが、同時に喋りだしてしまい会話のリズムが整わずにまたも沈黙が続く。
ふう。
落ち着け。冷静に。冷静に。
「あのさ……村長。とんでもない事言ってみてもいい?」
村長は一瞬、目を丸くしていつものように『ホッホッホ! ええよ』と頷いた。
目を閉じて大きく息を吸い込んで心の準備を整える。途中、薄眼を開けて村長の様子をちらりと伺うと村長は、いつもの白い歯むき出しの笑顔で俺を見つめている。
大丈夫……なのかな、こんな事言って。
でも。俺の素直な気持ちで、素直な願いだ。
言うだけ……言ってみよう。
いくよ?
せーのっ
「仲間になってくれないかなっ⁉︎」
何となくとか、気のせいレベルの予感なんだけど感じていた。
何一つ確証はないけど、それでも不思議と確信はしていた。
絶対ーーーー同じ気持ちだって。
俺の言葉に村長はあいも変わらず、白い歯むき出しの笑顔でいて、
そして、
「もちろんじゃとも」
村長は右手の親指をぐいと立てた。
早朝から村のあちこちでは騒々しい音が鳴り響いた。村人全員での大修理が始まったのだ。
今回のキラーファング襲撃による被害は実際のところ大したものでは無かったが、村全体を包んでいたギクシャクとした空気感が綺麗さっぱり取り払われ、村の至る所に出始めてはいたがどうにも手付かずになってしまっていた様々な箇所のガタも同時に修理してしまおう! と、村人達がこぞって立ち上がったのだ。
若い男達は木材やレンガなどを運び、壁の塗り替え、柵の修復、建て付けの狂ったドアの調整などにてんてこ舞い。
若い女達は村で採れた野菜や果物を使った料理の準備に精を出し、手が余った者は男達の作業の補助を務めたりと、こちらもやはりてんてこ舞い。
子供達もやはりその例外ではない。中でもお兄さんお姉さんと呼ばれるような年代の子供達は自分の兄弟ではない小さな子供達の面倒を買ってでるなどして微力ながらも頑張る大人達の補助として、てんてこ舞い。
だが、そんな世話をされる小さな子供達だって負けてはいない。あんなに小さな身体のどこから出てくるのだと不思議に思うほどに元気いっぱいに村中を走り回って騒がしい村の活気に華を添えている。
また、いつもは気怠く寝ている道端の犬だって、ここぞとばかりに吠えあげて、尻尾をちぎれんばかりに振っている。
ガネーシャ村は、今まさに一体感に包まれていた。
秋の冷たく乾いた風をものともしないほどに熱気に包まれ活き活きとしている。
どこからか香ってきた料理の匂いを肺いっぱいに吸い込んで、俺は一人ガネーシャ村を出る事にした。
「ーーーータケル殿」
急な呼びかけに両の肩がびくりと跳ね上がる。
「そ……村長」
「もう、行くのかい?」
「……うん。キラーファングを倒した事でジーナさんの敵討ちは出来たと思うし、リーダーを失ったモンスター達はこの辺一帯から姿を消す筈だからね……」
「そうかい……」
「…………」
「…………」
俺達の間にらしくない空気が漂い、沈黙が辺りを支配する。
そして、俺はバカな事だと十分
に分かってはいるが意を決して言葉にする。
「「あの……」」
だが、同時に喋りだしてしまい会話のリズムが整わずにまたも沈黙が続く。
ふう。
落ち着け。冷静に。冷静に。
「あのさ……村長。とんでもない事言ってみてもいい?」
村長は一瞬、目を丸くしていつものように『ホッホッホ! ええよ』と頷いた。
目を閉じて大きく息を吸い込んで心の準備を整える。途中、薄眼を開けて村長の様子をちらりと伺うと村長は、いつもの白い歯むき出しの笑顔で俺を見つめている。
大丈夫……なのかな、こんな事言って。
でも。俺の素直な気持ちで、素直な願いだ。
言うだけ……言ってみよう。
いくよ?
せーのっ
「仲間になってくれないかなっ⁉︎」
何となくとか、気のせいレベルの予感なんだけど感じていた。
何一つ確証はないけど、それでも不思議と確信はしていた。
絶対ーーーー同じ気持ちだって。
俺の言葉に村長はあいも変わらず、白い歯むき出しの笑顔でいて、
そして、
「もちろんじゃとも」
村長は右手の親指をぐいと立てた。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる