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エピソード・オブ・少年
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前略、村長様お元気ですか? 僕は相変わらず元気です。あれからもう半日が経ちますね、お変わりありませんか? 村長様も結構いい年ですのでお身体には充分、気を付けて下さい。あとモンスターにも。今日もゴブリン退治を頑張る村長様の姿が目に浮かびますが、どうぞ無理をなされぬようお身体をご自愛ください。えっ? 僕ですか? 僕は今ーーーー
前後左右、上下にいたるまで四方八方、十六方。完全にモンスターに囲まれています。前からはリザードドラゴン、後方からはヘルシャドー、左からはキラーファング、右からはキングベアー、下にはマッドドール、上にはアローバードやフレイムキメラの群れが空を覆わんばかりに飛んでいます。そんな大軍のモンスター達はとても大きな円陣を組んで、我先にと野生の狂気丸出しで一箇所に集まってきています。
彼等のそのあまりの必死さをなにかで例えるような事は僕には出来ません。使命とか、本能とか、そう言ったものに操られて行動しているようで僕自身、かなり引いてますから。半端ないくらいのドン引きです。
そんな狂気に狂い狂った彼等の目指す場所の中心に僕は立っています。
はい、普通に考えて地獄です。
しかし誤解しないで下さい。決してピンチな訳でも、詰んだ訳でもありません。ここ、モンスタースポットで効率良くレベル上げを行いながら同時にお金を稼いでいるんです。村長の為にもの凄い上級装備一式を買って帰るので楽しみにしていてくださいね。
いやいや。それにしても、ここは歩かなくてもモンスターの方から寄って来てくれるので楽ですね。まあ、モンスターの巣穴、つまり僕等で言う所のマイホームに無許可で、しかも土足で上がり込んでいるんですから、そりゃ誰でも怒って襲いかかって来ますよね……。と言っても先程も言ったように、僕にもここに来た理由がある、戦う理由がある、逆ギレのような事をする理由がある。だからモンスター達に対してとても悪い事をしている自覚はあるけど、ここはワガママ通させてもらいます。
ーーーー僕のパーティーの血肉になって貰います。
さて。ずいぶん長くなりましたが、そろそろモンスターの群れが僕の間合いに入ってきそうなのでここらで一旦お別れです、次にお会い出来る日を楽しみにしています。
親愛なる村長様へーーーー勇猛より。
みたいな事を考えていた。
モンスターが怒号をあげ襲い掛かってくる中で俺はそっとまぶたを開き、
静から動へとーーーー転じた。
まずは前方のリザードドラゴン。今まさに炎を吐き出そうと頭を下げかけている、その下げかけた下顎をジャンプしつつ力任せに切り上げ炎の出口を塞ぐ。結果、吐き出そうとした炎が喉の奥に逆流したり閉じた口の間から溢れるなどしてドラゴンの頭全体を包む。
ジャンプの勢いがなくなり地面へと落下する無防備な俺の身体を左右からキラーファングとキングベアーが襲い掛かってくる。俺は木刀を地面に対して垂直に突き立てて落下のタイミングを遅らせキラーファングとキングベアーを正面衝突させる。キラーファングの背中に着地して、着地の勢いそのままに背骨目掛けて木刀を振り下ろし粉砕する。
次いでキラーファングの背中からジャンプして、仁王立ち状態のキングベアーの首元に木刀を深く刺し込む。
キングベアーの首元から木刀を抜きながら後方のヘルシャドーに火炎魔法を撃ち込む。
弓矢の様な鋭さで天空から直滑降してくるアローバードの群れを側転で回避し足元でうごめくマッドドール達と同士討ちさせる。地面にくちばしから突き刺さったアローバードを天高く蹴り上げフレイムキメラ達にぶつける。
「だっははははははははは! どんどん来い! どんっどん! どんっどん来い!」
視線を後方に移し、目の前にいたゴブリンの角を持ち、またも炎を吐き出そうとするリザードドラゴンの口元めがけて投げつけ盾代わりにする。リザードドラゴンの口から吐き出された炎がゴブリンの背中に命中し辺り一面ファイアーウォールよろしく状態に。即席の炎の壁は周囲のモンスターを巻き込み激しく燃え上がる。
「あちちち……」
特大バーベキュー会場から距離をとって、最後に鋼の剣さえも余裕で弾き返す硬い鱗と皮で覆われたリザードドラゴンの身体に存在する唯一無二のウィークポイントである首の吸気口に狙いをすまして木刀を深く差し込む。
恐らく最初の一撃から今に至るまで五分も経っていないと思うがモンスターの群れは一掃され、突撃の波に乗り遅れたひとりぼっちの可哀想なスライムの恐怖におののく鼻っ面を容赦なく蹴った。
インパクトの瞬間『お主こそ天下無双の豪傑よ!』と聞こえた気がした。
何だ、誰だあれは……。
怒号が止み嘘のように静まり返ったモンスタースポットの中心で、俺は再びまぶたを閉じて静へと転じる。
ある人物の事を思い出していた。
その昔、確か69回目の転生の順番待ちをしている際に近くにいた《宮本武蔵さん》の事だ。
武蔵さんから教えて貰った『相手の力を最大限利用した戦闘法』なんでも兵法と言うらしい。この兵法とやらを今回、見よう見まねで戦闘に取り入れてみたのだ。
ちなみに、俺が木刀二刀流なのは武蔵さんの影響がかなりでかい。
ふむ。確かに効率良く戦闘を進められたと思う。
生ぬるい風がモンスターの生臭さ、獣臭さを運んで来た。程なく新たなモンスターの群れが大地を威勢良く踏み鳴らし、うねりを上げて迫ってくる。
「ふぅ……」
まだーーーーもう少し時間がある。
PS. 僕は今までの勇者人生で1番強くなって帰って来ます、村長様を護りたいから。次、会った時は俺だって気付かないかも知れませんね。
1日も早く会いたいです。
前後左右、上下にいたるまで四方八方、十六方。完全にモンスターに囲まれています。前からはリザードドラゴン、後方からはヘルシャドー、左からはキラーファング、右からはキングベアー、下にはマッドドール、上にはアローバードやフレイムキメラの群れが空を覆わんばかりに飛んでいます。そんな大軍のモンスター達はとても大きな円陣を組んで、我先にと野生の狂気丸出しで一箇所に集まってきています。
彼等のそのあまりの必死さをなにかで例えるような事は僕には出来ません。使命とか、本能とか、そう言ったものに操られて行動しているようで僕自身、かなり引いてますから。半端ないくらいのドン引きです。
そんな狂気に狂い狂った彼等の目指す場所の中心に僕は立っています。
はい、普通に考えて地獄です。
しかし誤解しないで下さい。決してピンチな訳でも、詰んだ訳でもありません。ここ、モンスタースポットで効率良くレベル上げを行いながら同時にお金を稼いでいるんです。村長の為にもの凄い上級装備一式を買って帰るので楽しみにしていてくださいね。
いやいや。それにしても、ここは歩かなくてもモンスターの方から寄って来てくれるので楽ですね。まあ、モンスターの巣穴、つまり僕等で言う所のマイホームに無許可で、しかも土足で上がり込んでいるんですから、そりゃ誰でも怒って襲いかかって来ますよね……。と言っても先程も言ったように、僕にもここに来た理由がある、戦う理由がある、逆ギレのような事をする理由がある。だからモンスター達に対してとても悪い事をしている自覚はあるけど、ここはワガママ通させてもらいます。
ーーーー僕のパーティーの血肉になって貰います。
さて。ずいぶん長くなりましたが、そろそろモンスターの群れが僕の間合いに入ってきそうなのでここらで一旦お別れです、次にお会い出来る日を楽しみにしています。
親愛なる村長様へーーーー勇猛より。
みたいな事を考えていた。
モンスターが怒号をあげ襲い掛かってくる中で俺はそっとまぶたを開き、
静から動へとーーーー転じた。
まずは前方のリザードドラゴン。今まさに炎を吐き出そうと頭を下げかけている、その下げかけた下顎をジャンプしつつ力任せに切り上げ炎の出口を塞ぐ。結果、吐き出そうとした炎が喉の奥に逆流したり閉じた口の間から溢れるなどしてドラゴンの頭全体を包む。
ジャンプの勢いがなくなり地面へと落下する無防備な俺の身体を左右からキラーファングとキングベアーが襲い掛かってくる。俺は木刀を地面に対して垂直に突き立てて落下のタイミングを遅らせキラーファングとキングベアーを正面衝突させる。キラーファングの背中に着地して、着地の勢いそのままに背骨目掛けて木刀を振り下ろし粉砕する。
次いでキラーファングの背中からジャンプして、仁王立ち状態のキングベアーの首元に木刀を深く刺し込む。
キングベアーの首元から木刀を抜きながら後方のヘルシャドーに火炎魔法を撃ち込む。
弓矢の様な鋭さで天空から直滑降してくるアローバードの群れを側転で回避し足元でうごめくマッドドール達と同士討ちさせる。地面にくちばしから突き刺さったアローバードを天高く蹴り上げフレイムキメラ達にぶつける。
「だっははははははははは! どんどん来い! どんっどん! どんっどん来い!」
視線を後方に移し、目の前にいたゴブリンの角を持ち、またも炎を吐き出そうとするリザードドラゴンの口元めがけて投げつけ盾代わりにする。リザードドラゴンの口から吐き出された炎がゴブリンの背中に命中し辺り一面ファイアーウォールよろしく状態に。即席の炎の壁は周囲のモンスターを巻き込み激しく燃え上がる。
「あちちち……」
特大バーベキュー会場から距離をとって、最後に鋼の剣さえも余裕で弾き返す硬い鱗と皮で覆われたリザードドラゴンの身体に存在する唯一無二のウィークポイントである首の吸気口に狙いをすまして木刀を深く差し込む。
恐らく最初の一撃から今に至るまで五分も経っていないと思うがモンスターの群れは一掃され、突撃の波に乗り遅れたひとりぼっちの可哀想なスライムの恐怖におののく鼻っ面を容赦なく蹴った。
インパクトの瞬間『お主こそ天下無双の豪傑よ!』と聞こえた気がした。
何だ、誰だあれは……。
怒号が止み嘘のように静まり返ったモンスタースポットの中心で、俺は再びまぶたを閉じて静へと転じる。
ある人物の事を思い出していた。
その昔、確か69回目の転生の順番待ちをしている際に近くにいた《宮本武蔵さん》の事だ。
武蔵さんから教えて貰った『相手の力を最大限利用した戦闘法』なんでも兵法と言うらしい。この兵法とやらを今回、見よう見まねで戦闘に取り入れてみたのだ。
ちなみに、俺が木刀二刀流なのは武蔵さんの影響がかなりでかい。
ふむ。確かに効率良く戦闘を進められたと思う。
生ぬるい風がモンスターの生臭さ、獣臭さを運んで来た。程なく新たなモンスターの群れが大地を威勢良く踏み鳴らし、うねりを上げて迫ってくる。
「ふぅ……」
まだーーーーもう少し時間がある。
PS. 僕は今までの勇者人生で1番強くなって帰って来ます、村長様を護りたいから。次、会った時は俺だって気付かないかも知れませんね。
1日も早く会いたいです。
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