繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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エピソード・オブ・少年

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「久しぶりだな、タケル」

 大きなウィザードハットの陰に隠れていた人物、俺はその人物を知っている。

「あ……うん。久しぶり。デューク」

 目元まで垂れた黒く長い髪、その奥から放たれる人の心までも見透かしてしまいそうなほど冷たい眼差し、感情が一切読み取れない表情、全身から漂う怪しげな雰囲気、見るからに上品な衣服に身を包む冒険者。

 デューク。

「で? 何をやっていたと聞いている。何やら一人で騒いでいたようだが……私と、このシドであれこれ考えていたんだが全く理解できん」

 シド……というのはこの見るからに魔法使いな感じの人か。

「やはりどこか遠くに離れた人物と会話していたのではないでしょうか?」

 ぽつり、白く長いひげに隠されたシドの口から言葉が溢れる。

「どうなんだ? タケル。正解か?」

「えっ⁉︎ ああ、えっと……まあ、そんな……ところかな。あはは……」

「ふむ。ならばシドの勝ちという事になるのか」

 デュークは若干残念そうに肩を落として言う。

「デューク様。恐れ入ります」

 シドは軽く会釈して3歩後ろへと退がった。

 どうやら俺が知らないところで、俺がいったい何をやっているんでしょうかゲームが行われていたらしい。

 そして、今回の勝者はシド。

 デュークがいったいどんな予想をしていたのかが、かなり気になったがやや機嫌が悪そうなので聞くのはやめておいた。

 だから、とりあえず別の話題を振ってみた。

「仲間……出来たんだね」

「ああ。あの時お前と別れて少ししてな」

「そうなんだ……ジョブは魔法使い、かな?」

 そう言い放った俺の言葉に対し敏感に反応したのはシドだった。

 深く被ったハットを右手でひょいと持ち上げてようやく露わになった細く鋭い目つきで俺を真っ直ぐに睨む。

「……ちっ!」

 えぇ⁉︎ 舌打ち⁉︎ 何で⁉︎ 俺、何かした⁉︎

 シドは明らかすぎる怒りの感情を全身で表して、ぶつぶつと呟きながらまたも大きなウィザードハットを深々と被り視界を遮断した。

「あ、あの……」

 俺は戸惑い困惑しとりあえずデュークに助けを求めたが、

「いきなり何を言っているのだ。ちゃんと『黒』を付けろ。単なる魔法使いなどと言うとシドが怒るのは当然だろう」

「何で俺が然るべき常識をわきまえていないみたいな感じになってんだよ! 黒魔法使い、としか呼ばれたくないとか知るかっ! どうでもいいわ、そのこだわり!」

 ふんっ!

 と、ついつい全力で突っ込んでしまった。

「ふむ。相変わらず面白い奴だな。どうだ? 私の仲間にならんか?」

 無ー理ーだーろー⁉︎ たった今、初対面にも関わらずシドとの関係性にかなり深い亀裂が入ったばかりなのに。仲間に入った途端にバトル開始だよ? 目も当てられないような醜い身内の骨肉の争い勃発だよ? いいの? デュークは? 本当にそれでいいの? 楽しいの?

 でもまあ、デュークなら『喧嘩もほどほどにな……』とかクールに言いながら一人でスタスタ歩いて行きそうなものだが。

 そして、時折、後ろを振り返ると棺桶が二つ地面に転がっているのだ。教会へ出向いて蘇生を終えた瞬間に第二ラウンド開始である。『全くお前達はーーーー』などと言いながら教会から出ようとしたら、すでに後ろには棺桶が二つ地面に転がっているのだ。

 何が楽しいんだ、そんなパーティー。

 神父さんはウハウハなんだろうけど。

 とにかく。

 俺は二度目のお誘いを丁重にお断りした。

「ふむ。そうか。嫌ならば仕方がない」

 デュークはもう用は済んだ、と言わんばかりに視線をきって歩き出した。シドもそれに続く。

 俺は二人の背中を見送って、ぽつりと呟く。

「ありがとうデューク。なんとかオチがついたよ」

 俺も一人、大草原を歩き出した。
 

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