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ベネツィ大食い列伝
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「タケルさん! タケルさんってば!」
「んむぅ……」
「タケルさん。寝付きが良すぎですよ……病気的ですよ」
いったい何度目の気絶なのか……。何度やっても幸せだな。
しかし、この問題も解決しておかないとな。
「やぁ……アリシア。ふぁ……あ、待ちかねたよ」
大きくあくびをして誤魔化す。
「ごめんなさい遅くなりました」
「いやいや、そんなに待ってなんかないよ。それじゃあそんなアリシアに少し魔法をかけるね?」
「えっ⁉︎ いきなり過ぎません⁉︎ いったい何の話で、何の魔法ですか⁉︎」
「ああ、ごめんごめん。アリシアがエルフの血を引いているって言うのは、当然俺ら以外には知られちゃいけない。見た目的にほとんど人間と変わらないから大丈夫だとは思うんだけど、念には念を入れてアリシアの存在が霞む魔法をかけておいた方がいいのかなってずっと思ってたんだ。もしアリシアの身に何かあったら俺たぶんドイルさんに《豪快すぎる木こりの手斧》をやられちゃうと思うからさ」
「なるほど。確かにそうですね。私の事が噂になればエルフの里のみんなに迷惑が掛かるかもしれないですね。そうなったら、お父さんとお母さんがーーーーなんて言ってられないですもんね」
「うん。そうだね」
「それで……存在が霞む魔法っていうのはいったい……」
「これは本来、襲いかかるモンスターの標的にならないようにする為の魔法なんだけれどね。その魔法を掛ける事で他の人達がアリシアの存在に気付き辛くなる。あまり印象に残らない物事ってあるだろ? ざっくり言うとそんな感じ」
「なるほど。みんな私の事を気に留めなくなる。考え方としては何だか寂しいですね……」
なんだか透明人間みたいです。とアリシア。
「でも、全く見えなくなる訳じゃないから注意してね? あくまで注意を引きつけず、印象に残らないってだけ。もちろん旅が終われば魔法を解く事は出来るから」
「はい……分かりました。お願いします」
アリシアはグッと目を閉じて魔法に備える。
「…………」
「…………」
「……ん? えっ⁉︎ タ、タケルさん⁉︎ 何でこのタイミングで寝るんですか⁉︎」
「あ……いや、ごめん。最後だと思ったらちょっと欲が出ちゃって……本当、ごめん」
俺は目を閉じて呪文を詠唱しそして、
「中級幻影魔法!」
アリシアに右手を向けた。
俺の右手から銀色の光が発生し煌びやかなヴェールの様にアリシアの身体を優しく包んでいく。
「うわぁ……綺麗……これが魔法……」
幻影魔法の光に包まれたアリシアは想像を絶する花嫁のような仕上がりとなっていて、その美しさを前に俺は余裕で死にかけた。
あそこで例の金色の目を見ていたら確実に死んでいたな……。
誰も知らないところで勝手に九死に一生を得た辺りで魔法は無事に効果を発揮したようで、いつものアリシアの姿へと戻った。
いつもの、というか良い意味で存在がぼやけて魅力が落ち着いた。
これでようやく町で評判の可愛い子ちゃんレベルってところか。
まったく、人騒がせな容姿だぜ。
「よしっ、これでいいかな。どこか体調悪いとかはない? アリシア」
「はい。今のところ大丈夫です」
「そっか、そりゃ良かった。それでーーお母さんはどうだった? 寂しがっていたんじゃない?」
「はい、少しだけ。でもなぜか私が旅に出るのが最初から分かっていたみたいな口調でしたね。私、前に言っちゃってたのかな?」
「うーん。言ってなくても普段の行動や会話の内容から察してたんじゃない? 親って子供のそういうところよく観察しているらしいから」
「お母さんは……そうですね、そんな気がします。何も言わないでも心の中を見透かしてそう。でもお父さんは違いますね。目先のことや意地張ることや強がることしか考えてないと思います。うん、絶対そうですね」
アリシアの言葉に俺は心の中で、そうでもないかもよー? っと、軽く突っ込んでおく。
「あはは! かもね。と、じゃあそろそろ行こうか? やり残した事はない?」
「はい。大丈夫です」
俺はパティを起こしてーーーー厳密に言えば寝ているパティの上体を起こして手を引く。
すると、
「ほっ⁉︎」
パティの顔の上で寝ていたじろうは目を覚まして、いつものパティの頭頂部のポジションに移動すると俺の目をジッと見つめてそして、
「ZZZ……」
と、パティの頭に突っ伏しまた寝入ってしまった。
そんな愛らしいパティとじろうの姿を見て微笑ましく思い、一刻も早く宿屋に行く事を決意する。
パティの手を引き数歩歩いたところの木の陰から突然人影が現れて、
「む? タケル。また会ったな」
今回はものすごく短いスパンでの登場である。
「んむぅ……」
「タケルさん。寝付きが良すぎですよ……病気的ですよ」
いったい何度目の気絶なのか……。何度やっても幸せだな。
しかし、この問題も解決しておかないとな。
「やぁ……アリシア。ふぁ……あ、待ちかねたよ」
大きくあくびをして誤魔化す。
「ごめんなさい遅くなりました」
「いやいや、そんなに待ってなんかないよ。それじゃあそんなアリシアに少し魔法をかけるね?」
「えっ⁉︎ いきなり過ぎません⁉︎ いったい何の話で、何の魔法ですか⁉︎」
「ああ、ごめんごめん。アリシアがエルフの血を引いているって言うのは、当然俺ら以外には知られちゃいけない。見た目的にほとんど人間と変わらないから大丈夫だとは思うんだけど、念には念を入れてアリシアの存在が霞む魔法をかけておいた方がいいのかなってずっと思ってたんだ。もしアリシアの身に何かあったら俺たぶんドイルさんに《豪快すぎる木こりの手斧》をやられちゃうと思うからさ」
「なるほど。確かにそうですね。私の事が噂になればエルフの里のみんなに迷惑が掛かるかもしれないですね。そうなったら、お父さんとお母さんがーーーーなんて言ってられないですもんね」
「うん。そうだね」
「それで……存在が霞む魔法っていうのはいったい……」
「これは本来、襲いかかるモンスターの標的にならないようにする為の魔法なんだけれどね。その魔法を掛ける事で他の人達がアリシアの存在に気付き辛くなる。あまり印象に残らない物事ってあるだろ? ざっくり言うとそんな感じ」
「なるほど。みんな私の事を気に留めなくなる。考え方としては何だか寂しいですね……」
なんだか透明人間みたいです。とアリシア。
「でも、全く見えなくなる訳じゃないから注意してね? あくまで注意を引きつけず、印象に残らないってだけ。もちろん旅が終われば魔法を解く事は出来るから」
「はい……分かりました。お願いします」
アリシアはグッと目を閉じて魔法に備える。
「…………」
「…………」
「……ん? えっ⁉︎ タ、タケルさん⁉︎ 何でこのタイミングで寝るんですか⁉︎」
「あ……いや、ごめん。最後だと思ったらちょっと欲が出ちゃって……本当、ごめん」
俺は目を閉じて呪文を詠唱しそして、
「中級幻影魔法!」
アリシアに右手を向けた。
俺の右手から銀色の光が発生し煌びやかなヴェールの様にアリシアの身体を優しく包んでいく。
「うわぁ……綺麗……これが魔法……」
幻影魔法の光に包まれたアリシアは想像を絶する花嫁のような仕上がりとなっていて、その美しさを前に俺は余裕で死にかけた。
あそこで例の金色の目を見ていたら確実に死んでいたな……。
誰も知らないところで勝手に九死に一生を得た辺りで魔法は無事に効果を発揮したようで、いつものアリシアの姿へと戻った。
いつもの、というか良い意味で存在がぼやけて魅力が落ち着いた。
これでようやく町で評判の可愛い子ちゃんレベルってところか。
まったく、人騒がせな容姿だぜ。
「よしっ、これでいいかな。どこか体調悪いとかはない? アリシア」
「はい。今のところ大丈夫です」
「そっか、そりゃ良かった。それでーーお母さんはどうだった? 寂しがっていたんじゃない?」
「はい、少しだけ。でもなぜか私が旅に出るのが最初から分かっていたみたいな口調でしたね。私、前に言っちゃってたのかな?」
「うーん。言ってなくても普段の行動や会話の内容から察してたんじゃない? 親って子供のそういうところよく観察しているらしいから」
「お母さんは……そうですね、そんな気がします。何も言わないでも心の中を見透かしてそう。でもお父さんは違いますね。目先のことや意地張ることや強がることしか考えてないと思います。うん、絶対そうですね」
アリシアの言葉に俺は心の中で、そうでもないかもよー? っと、軽く突っ込んでおく。
「あはは! かもね。と、じゃあそろそろ行こうか? やり残した事はない?」
「はい。大丈夫です」
俺はパティを起こしてーーーー厳密に言えば寝ているパティの上体を起こして手を引く。
すると、
「ほっ⁉︎」
パティの顔の上で寝ていたじろうは目を覚まして、いつものパティの頭頂部のポジションに移動すると俺の目をジッと見つめてそして、
「ZZZ……」
と、パティの頭に突っ伏しまた寝入ってしまった。
そんな愛らしいパティとじろうの姿を見て微笑ましく思い、一刻も早く宿屋に行く事を決意する。
パティの手を引き数歩歩いたところの木の陰から突然人影が現れて、
「む? タケル。また会ったな」
今回はものすごく短いスパンでの登場である。
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