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ベネツィ大食い列伝
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とうに限界を迎えたパンパンな胃袋をさらに膨らませ、引き伸ばし、許容スペースを作っては飲み下していく。
「…………」
ありがとう、パティ、じろう。
君らの想いは絶対にムダにしない。
俺の両隣りには激戦の末倒れた、誇らしい仲間達がいる。
ハーフエルフの美少女アリシア。
ベネツィの小さな騎士パティ。
ステータス上は《がーでぃあん》らしい、じろう。
そんな仲間達の努力と想いをムダにせぬよう必死に食べ進める。
負けたくない、負けられない。
意識も視界も歪み、周りの状況も掴めない。
「あたしら男と女の中間を生きるーーーー」
「ーーーーシド。二度目、行けるか? そうか……」
「炭水化物ばんざーい! 脂肪ばんざーい! デブは生物の頂点にーーーー」
「ふぃまっぱ、はめんほほったらひればほいれほらんど!」
状況は簡単には想像できないが、他のチームも悪戦苦闘しているらしい。
なので、すでに勝負がついてしまっている訳ではないのだろうけれど、だけどそれでもどう足掻いても覆せないほどの状況なのかもしれない。
逆転勝ちは絶対に無理。
それにそもそも、実はもう負けてしまっているのかもしれないのだ。
負けた事にも気付かず、ただムダに苦しい思いをしているだけなのかもしれない。
意地と根性だけで、ただひたすらに目の前の食べ物を食べ続けているだけなのかもしれない。
そう、ぼんやりと考えながらも食べ進め、ついに最後のカルロス炒飯のほんの少し残った一口を口に放り込み咀嚼する。
終わった……。何もかも。
俺達は、やり遂げたんだ。
大会の勝敗は分からないけど、少なくともあの感覚がかなりズレた店主に俺達は勝ったんだ。
「ーーーーっとーーーーました」
途切れ途切れに誰かの声が耳に届いた。
何だ? 誰だ?
まさか俺達の勝ちを知らせる祝いの言葉?
「ーーーーここでーーーー豆腐ーーーー!」
この声は……デイルさん? 豆腐……?
いったい、何を言って……。
もはやまともに思考も出来ない頭に、訳の分からない単語だけがぽつりぽつりと舞い込んでくる。
「…………」
口内にて粉々に砕かれた最後のカルロス炒飯を飲み下したその瞬間に、テーブルの上に運ばれてきたモノを一目見た途端、俺は驚愕した。
「デザートの杏仁豆腐でーす!」
若い女の子の店員さんがにこにこしながら運んで来たそのどんぶりの中には、白く角張った杏仁豆腐やフルーツの類いがたっぷりと入っておりテーブルに置く際の揺れでプルプルと揺れている。
「デ……ザート……」
俺は、そうぽつりと言葉を漏したと思う。
ここに来てまさかの裏ボス登場に今までどうにか奮い立たせてきた俺の中の何かが、はっきりとした音をたてて真っ二つに折れてしまった。
勇猛はこの日、何十年、何百年かぶりの敗北を喫した。
俺の意識はーーーー遠退いていった。
「…………」
ありがとう、パティ、じろう。
君らの想いは絶対にムダにしない。
俺の両隣りには激戦の末倒れた、誇らしい仲間達がいる。
ハーフエルフの美少女アリシア。
ベネツィの小さな騎士パティ。
ステータス上は《がーでぃあん》らしい、じろう。
そんな仲間達の努力と想いをムダにせぬよう必死に食べ進める。
負けたくない、負けられない。
意識も視界も歪み、周りの状況も掴めない。
「あたしら男と女の中間を生きるーーーー」
「ーーーーシド。二度目、行けるか? そうか……」
「炭水化物ばんざーい! 脂肪ばんざーい! デブは生物の頂点にーーーー」
「ふぃまっぱ、はめんほほったらひればほいれほらんど!」
状況は簡単には想像できないが、他のチームも悪戦苦闘しているらしい。
なので、すでに勝負がついてしまっている訳ではないのだろうけれど、だけどそれでもどう足掻いても覆せないほどの状況なのかもしれない。
逆転勝ちは絶対に無理。
それにそもそも、実はもう負けてしまっているのかもしれないのだ。
負けた事にも気付かず、ただムダに苦しい思いをしているだけなのかもしれない。
意地と根性だけで、ただひたすらに目の前の食べ物を食べ続けているだけなのかもしれない。
そう、ぼんやりと考えながらも食べ進め、ついに最後のカルロス炒飯のほんの少し残った一口を口に放り込み咀嚼する。
終わった……。何もかも。
俺達は、やり遂げたんだ。
大会の勝敗は分からないけど、少なくともあの感覚がかなりズレた店主に俺達は勝ったんだ。
「ーーーーっとーーーーました」
途切れ途切れに誰かの声が耳に届いた。
何だ? 誰だ?
まさか俺達の勝ちを知らせる祝いの言葉?
「ーーーーここでーーーー豆腐ーーーー!」
この声は……デイルさん? 豆腐……?
いったい、何を言って……。
もはやまともに思考も出来ない頭に、訳の分からない単語だけがぽつりぽつりと舞い込んでくる。
「…………」
口内にて粉々に砕かれた最後のカルロス炒飯を飲み下したその瞬間に、テーブルの上に運ばれてきたモノを一目見た途端、俺は驚愕した。
「デザートの杏仁豆腐でーす!」
若い女の子の店員さんがにこにこしながら運んで来たそのどんぶりの中には、白く角張った杏仁豆腐やフルーツの類いがたっぷりと入っておりテーブルに置く際の揺れでプルプルと揺れている。
「デ……ザート……」
俺は、そうぽつりと言葉を漏したと思う。
ここに来てまさかの裏ボス登場に今までどうにか奮い立たせてきた俺の中の何かが、はっきりとした音をたてて真っ二つに折れてしまった。
勇猛はこの日、何十年、何百年かぶりの敗北を喫した。
俺の意識はーーーー遠退いていった。
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