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呪われの旅仕度編
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さて、武器の状況を伺いたいところではあるが、道が分からない。
道に迷ってる姿というのは、どうにも情けなく格好悪いのでなるべく二人に見られたくないものなのだが、さてさてどうしたものか……。
「ふむ」
ここはやはり素直に現地の人間に頼るのが一番手っ取り早いだろう。
「パティ君?」
「ーーーーなに?」
俺の呼びかけに新しい防具の端をいじりながらパティは見上げる。
「地元民である君の知識を見込んで聞くのだが……」
「な……なに? なんかすごい期待されてるっぽいけど……僕、あんまり物知りじゃあないよ……?」
「いや、大丈夫。君なら絶対知ってる。知らないわけがない。君は知っていなければいけないんだ」
「なになに……普通に怖いんだけど……もっと普通に聞いてよ。それ、もし僕が知らなかったらどうなるの?」
「大丈夫、君なら、知ってる」
「カタコトに、なって、るよ。あっ! つられちゃった! それで、なにを聞きたいのさ?」
「うむ。俺達が始めて出会った広場があるだろう?」
「うーー、ん。うん、あそこだね」
パティは自身の記憶から位置を把握できたようだ。
「あの辺の路地にいっつも座ってる、何だか怪しい感じの人……知らない?」
「ーーーーへぇ⁉︎ なにそのざっくりとした情報、そんなので分かるわけーーーーある!」
と、パティはあまりに少ない情報量に驚きつつも自身の記憶に手掛かりとなるものを見つけ、結構自信満々に言ってみせた。
「当たりかどうかは分かんないけど、その情報に会う人は一人いる。もちろん名前も分からないし、家も知らないよ?」
「ふむ。じゃあ、一旦その人の所へ行ってみようではないか」
「何しに?」
子供のように小首を傾げて聞くパティ。
無論、純粋な子供なのだが。
「それは秘密。というか行ってからのお楽しみ」
「何だか怖いな……アニキのその笑い」
普通に微笑んでいたつもりなのだが、不敵な笑みになっていたのだろうか?
「じゃあ、えっと……着いて来て」
俺とアリシアはパティに案内され歩き出した。
そのまま歩く事約10分。パティは薄暗い路地で足を止めて、
「うーん。いつもはだいたいここら辺にいるんだけど、今日はいないみたいだね……」
「ふぅむ。ここまでくれば、後は勘でいけるだろう」
そう呟いて俺は路地の角をいくつか折れて、なんとなく見覚えのある古い扉の民家に行き着いた。
慎重に扉をノックして、ゆっくりと扉を開く。
「すみませーん……」
小声で言いつつ、薄暗い部屋の中に目を凝らす。
ほんの少しだけ開けた扉から射し込む光が、部屋の奥の方を照らした辺りで聞き覚えのある声が響いてきた。
「よぉ……」
部屋の中から響く、低い男の声。
「あ……」
一声漏らし、確信する。
どうやら無事にあの男の仕事場に到着したようだ。
ゆっくりと扉を開けると、あの男は椅子に深く腰掛け一息ついていた。ちょうど作業が終わったところなのだろうか? かなり汗だくで、疲れきっていたが俺の顔を見るなり、
「待ちかねたぞ! 見てくれ俺の作った作品を!」
椅子から立ち上がるやいなや、まるで自慢の息子を紹介するように堂々とした様子でテーブルの上を指差す。
テーブルの上に並べられた武器をじっくりと観察する。注文通り、左から杖が二本、細身の剣、そして大、小二本の刀がある。
それらは、今は静かにテーブルに横たわっているが内に秘めた力強さを肌で感じる事が出来る。それぞれの武器の中にバカでかいエネルギータンクがあって、エネルギーが今にも溢れ出しそうなのを外殻が悲鳴をあげながらも何とか押さえ込んでいる光景を無理やり想像させられる。
俺は慎重に大、小二本の刀を手に取る。
計り知れない力の塊が大波となって俺の全身に流れ込んでくる。油断するとその大波に飲み込まれそうになるように感じる。
「二本ともアンタが言ったように木刀を媒体にして作った武器だ。まずはその長い方、こいつは魔法の力を取り込み自らの攻撃力を高める事が出来るいわゆる、魔法剣って奴だ。で、短い方が大抵の魔法を跳ね返す事が出来るように作ってある。この二本の刀《エックスカリバー》は二本で一つだ、片方だけ持ってても真の力を発揮出来ないから気を付けろ」
何かぎりっぎりな名前だな。まさかこの刀を持つものは真の王として認められる的な、あれだろうか?
「しかし……今回の仕事は初めて取り入れた技法ばかりだったからかなり大変だったが納得のいく生涯最高の武器を作ることが出来た。礼を言うよ、ありがとう」
「さすがは魔界一の刀匠、名に恥じぬ仕上がりだ。大切に使わせて貰うよ、本当にありがとう!」
「おい」
と、男は口の前に指を立てて俺に合図を送る。
「あぁ、ごめん……」
ついつい興奮して声がでかくなってしまった事に気付き、慌てて声のトーンを落とす。
この男はなぜか自身が鍛冶屋を営んでいる事を極端に隠したがるのだ。
いや……こんな町中で槌を振るうくらいなので鍛冶屋である事を隠したい訳ではないのか。
単に自身が魔族である事か。
ときおり、何かに怯えるように辺りを警戒する節があるので誰かに追われているのかもしれない。
そんな事をぼんやりと考えていると、
「これを持っていってくれないか?」
男は一振りの剣を俺に差し出してきた。
道に迷ってる姿というのは、どうにも情けなく格好悪いのでなるべく二人に見られたくないものなのだが、さてさてどうしたものか……。
「ふむ」
ここはやはり素直に現地の人間に頼るのが一番手っ取り早いだろう。
「パティ君?」
「ーーーーなに?」
俺の呼びかけに新しい防具の端をいじりながらパティは見上げる。
「地元民である君の知識を見込んで聞くのだが……」
「な……なに? なんかすごい期待されてるっぽいけど……僕、あんまり物知りじゃあないよ……?」
「いや、大丈夫。君なら絶対知ってる。知らないわけがない。君は知っていなければいけないんだ」
「なになに……普通に怖いんだけど……もっと普通に聞いてよ。それ、もし僕が知らなかったらどうなるの?」
「大丈夫、君なら、知ってる」
「カタコトに、なって、るよ。あっ! つられちゃった! それで、なにを聞きたいのさ?」
「うむ。俺達が始めて出会った広場があるだろう?」
「うーー、ん。うん、あそこだね」
パティは自身の記憶から位置を把握できたようだ。
「あの辺の路地にいっつも座ってる、何だか怪しい感じの人……知らない?」
「ーーーーへぇ⁉︎ なにそのざっくりとした情報、そんなので分かるわけーーーーある!」
と、パティはあまりに少ない情報量に驚きつつも自身の記憶に手掛かりとなるものを見つけ、結構自信満々に言ってみせた。
「当たりかどうかは分かんないけど、その情報に会う人は一人いる。もちろん名前も分からないし、家も知らないよ?」
「ふむ。じゃあ、一旦その人の所へ行ってみようではないか」
「何しに?」
子供のように小首を傾げて聞くパティ。
無論、純粋な子供なのだが。
「それは秘密。というか行ってからのお楽しみ」
「何だか怖いな……アニキのその笑い」
普通に微笑んでいたつもりなのだが、不敵な笑みになっていたのだろうか?
「じゃあ、えっと……着いて来て」
俺とアリシアはパティに案内され歩き出した。
そのまま歩く事約10分。パティは薄暗い路地で足を止めて、
「うーん。いつもはだいたいここら辺にいるんだけど、今日はいないみたいだね……」
「ふぅむ。ここまでくれば、後は勘でいけるだろう」
そう呟いて俺は路地の角をいくつか折れて、なんとなく見覚えのある古い扉の民家に行き着いた。
慎重に扉をノックして、ゆっくりと扉を開く。
「すみませーん……」
小声で言いつつ、薄暗い部屋の中に目を凝らす。
ほんの少しだけ開けた扉から射し込む光が、部屋の奥の方を照らした辺りで聞き覚えのある声が響いてきた。
「よぉ……」
部屋の中から響く、低い男の声。
「あ……」
一声漏らし、確信する。
どうやら無事にあの男の仕事場に到着したようだ。
ゆっくりと扉を開けると、あの男は椅子に深く腰掛け一息ついていた。ちょうど作業が終わったところなのだろうか? かなり汗だくで、疲れきっていたが俺の顔を見るなり、
「待ちかねたぞ! 見てくれ俺の作った作品を!」
椅子から立ち上がるやいなや、まるで自慢の息子を紹介するように堂々とした様子でテーブルの上を指差す。
テーブルの上に並べられた武器をじっくりと観察する。注文通り、左から杖が二本、細身の剣、そして大、小二本の刀がある。
それらは、今は静かにテーブルに横たわっているが内に秘めた力強さを肌で感じる事が出来る。それぞれの武器の中にバカでかいエネルギータンクがあって、エネルギーが今にも溢れ出しそうなのを外殻が悲鳴をあげながらも何とか押さえ込んでいる光景を無理やり想像させられる。
俺は慎重に大、小二本の刀を手に取る。
計り知れない力の塊が大波となって俺の全身に流れ込んでくる。油断するとその大波に飲み込まれそうになるように感じる。
「二本ともアンタが言ったように木刀を媒体にして作った武器だ。まずはその長い方、こいつは魔法の力を取り込み自らの攻撃力を高める事が出来るいわゆる、魔法剣って奴だ。で、短い方が大抵の魔法を跳ね返す事が出来るように作ってある。この二本の刀《エックスカリバー》は二本で一つだ、片方だけ持ってても真の力を発揮出来ないから気を付けろ」
何かぎりっぎりな名前だな。まさかこの刀を持つものは真の王として認められる的な、あれだろうか?
「しかし……今回の仕事は初めて取り入れた技法ばかりだったからかなり大変だったが納得のいく生涯最高の武器を作ることが出来た。礼を言うよ、ありがとう」
「さすがは魔界一の刀匠、名に恥じぬ仕上がりだ。大切に使わせて貰うよ、本当にありがとう!」
「おい」
と、男は口の前に指を立てて俺に合図を送る。
「あぁ、ごめん……」
ついつい興奮して声がでかくなってしまった事に気付き、慌てて声のトーンを落とす。
この男はなぜか自身が鍛冶屋を営んでいる事を極端に隠したがるのだ。
いや……こんな町中で槌を振るうくらいなので鍛冶屋である事を隠したい訳ではないのか。
単に自身が魔族である事か。
ときおり、何かに怯えるように辺りを警戒する節があるので誰かに追われているのかもしれない。
そんな事をぼんやりと考えていると、
「これを持っていってくれないか?」
男は一振りの剣を俺に差し出してきた。
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