おたすけ部っ!

簪狐

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おたすけ部の活動

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 放課後の高校の廊下は、場所によっては人気が無い。遠くから聞こえてくる運動部の掛け声が静けさに拍車をかける。西日が差す中を、榊望さかきのぞむはスカートを揺らしながら歩いていた。自分の足音がやけに響く。首筋と耳に触れる毛先が煩わしい。301Aと札のついた教室の扉の前で、望はため息をついた。部活の名にふさわしくない、姦しい噂話が扉から漏れている。

「そういえば、あの二人、別れたらしいよ~」

「あの二人?それは誰と誰のことかな、神原かんばら君」

「誰と誰って……前にも話したでしょ?A組の牧野ちゃんとC組の木野くんだよ~」

「ああ、あの異物混入型ヤンヘラ女と自己陶酔サイコシスコン野郎のカップルかい?よくもまあ、あんなのが三ヶ月ももったものだね。彼らの意地は称賛されるべきだよ」

 そこまで聞いて、望は扉を勢いよく開け放った。ばんっと音がして軽く跳ね返ってくる扉を、少々行儀が悪いが足で軽く押さえる。教室の中で話していた部活仲間2人が振り返る。

「ちえり、お前それもうちょっと言い方何とかならなかったの?」

望がそう聞くと、幼馴染であり、部活仲間である奥宮おくみやちえりは薄く笑った。

「事実だろう?」

落ち着いていて、どこか少年のような響きの声。その隣で、同じく部活仲間である神原優奈かんばらゆなは、うんうんとでも言うように頷いて、悪戯気な笑みを浮かべていた。

「いや、うん、まあそうだけどさ……」

先ほどちえりが言っていたそれは言い過ぎではあるが、同時に事実であるから始末が悪い。望は歯切れの悪い声を出してから、この話を深堀してもろくなことにならないと判断して、話題を変えることにした。ちょうど、話題を変えるのにぴったりの物を彼女は持っている。

「まあいいや、本題な」

ポケットから取り出した手紙をひらひらとさせながら、望は軽く笑みを浮かべた。

「依頼が来てるよ、お嬢さん方?」

「マジで!?」

椅子を倒すような勢いで優奈は立ち上がり、

「おや、昨日に引き続きとは運がいい」

ちえりは楽し気に目を輝かせた。

「それで、依頼内容は?できれば昨日と同じ猫探しでなければいいんだけれど。引っかかれて大変だった」

「うるさいな、アタシらが選べる立場じゃないだろ。それじゃあ、読み上げるぞ」

 ここは『おたすけ部』。人助けを目的とする部活だ。部員は榊望、神原優奈、奥宮ちえり以上3名が所属している。もはや同好会に近い形態だ。和気あいあいとした、ひょっとすると姦しいと評されるかもしれないくらいに賑やかな彼女たちの活動人助けが、今日も始まる。
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