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第2章 冒険者編 ~シャルモンの街~
お兄様とロラン
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私がお兄様の妹だと分かった後、ロランは色々と気さくに話をしてくれた。
知っている人の妹だった、ということが大きいのだろう。
かくいう私も、お兄様の知り合いと聞いて、気を許し始めていた。
話はどんどん変わっていき、ロランがお兄様と冒険者として活動していた日々ーー流転のロランの時代の話になる。
流転、というパーティー名はお兄様が考えたそうだ。
そのパーティー名を聞いて、本当に紅玉という名前で良かったのか、と思えてくる。
そのことを恐る恐るロランに聞いたら
「あ?良いんだよ。俺らにピッタリだと思うぞ」
と言ってくれたので、あの時きちんと伝えて良かった、と思う。
「だが、セリーはアドから話を聞いていないのか?話す機会だってあったろうに」
そう、実は私はお兄様から冒険の話は一切聞いたことがなかったのだ。
冒険のイロハはーー、と言って基本的なことを教わっただけである。
「お兄様もお忙しい方ですから‥‥時間があるときに冒険のイロハだけ教えて貰いました」
ロランが「確かに忙しそうだったな、あいつ」と言っているので、何があったのだろうと首を傾げる。
その私の仕草に気づいたロランがすぐに教えてくれた。
「あいつの通り名、黒髪の紳士って言うんだけどな。ちなみに通り名って言うのは、S級の冒険者に付けられる称号みたいなものだって言うのは知ってたか?まあ例外はあるが」
S級の冒険者に、の部分は知らなかった。お父様もお母様もS級だが‥‥お兄様はA級だったはずだ。
「いつからか忘れたが、アドは黒髪の紳士と呼ばれるようになった。それが通り名としていつの間にか定着していたわけだ。滅多にないらしいがな」
それとお兄様が忙しい理由は何かあるのだろうか?
「で、この辺境伯領に来る前にアドに会ったんだ。そのとき通り名をA級で持っているせいで、学園の騎士科の生徒に喧嘩を売られていて困ってる、と言っていた」
「喧嘩、ですか?」
「ああ、簡単に言えば手合わせしろってことさ。引っ切り無しに来るらしいぞ?叩き潰しても、騎士科の生徒はめげずに挑戦するらしいから、捌くのに大変らしい。あとは辺境伯代理の仕事も学業の傍、関わっているから実家に帰れないんだよね、って言っていたぞ」
ロランがお兄様の真似をする。似ていた。
「ふふふ、お兄様らしいですね」
「そうだな、その通りだな。また会いに行ってやるか、文句の一つでも言ってやらないとな」
会いに行ってやる、との言葉に私はぴくん、と反応した。
私も一年程会っていないのだ。お兄様に会いたいな、と思っていたところだ。
「私も一緒に連れて行って貰えませんか?」
お兄様に会いたい一心で質問してみた私だが、どうもその質問が的外れだったらしい。
ロランは笑って私の頭をぽんぽん、と優しく撫でた。
「勿論、言われなくても連れて行ってやるよ」
その横顔は今までの誰よりも頼りになる横顔に見えた。
そして朝を迎える。
昨日、交代で見張りをするかどうかと言う話になったのだが、私が警備魔法を使うことができたので、ゆっくり休むことができた。
不審物や人が近づくと、音が鳴る仕組みだ。
これを防音魔法と組み合わせれば、外部に気づかれることはない。
ロランは警備魔法の存在は知っていたが、お兄様から教えてもらうことができなかったとのこと。
何故かは私にもロランにも分からないけど。
だからついでにロランにも警備魔法を教えておく。
最初は頭を悩ませていたようだが、何度か練習したら、きちんと発動するようになっていた。
お兄様が教えた魔力操作の訓練をずっとしていたというし、彼の努力の成果なのかもしれない。
少し疑問に思ったので一人の時はどうしていたのかと聞くと、商人の護衛の依頼を受けていたらしい。
成る程、護衛依頼なら複数のパーティーで行えるから見張りも交代交代で済むわけだ。
これからは安心して眠れるな、とはにかんで喋るロランは少し子どものようなはしゃぎようだった。
準備が整い、私たちは歩き始める。
メール村に向かう道には、商隊も冒険者も人も全く見かけない。
ただただ揺れる草と道があるだけだ。
いつになったら着くのだろう、ちょっと探索魔法をかけてみても良いかな?と考えていた頃。
静かだったロランが私に話しかけてきた。
「セリー、この調子ならあと1時間も経たずに着く。昼は村で調達しようと思うが、いいか?」
「大丈夫です」
「あとは武器屋のおやじから貰った鉄扇も念の為装備しておくと良い」
そうそう、鉄扇も貰っていた。すぐに取り出せるよう、腰のあたりに紐でくくりつけておく。
「そう言えば、おやじから買ったグローブ、使えそうか?」
「残念ながら‥‥攻撃には使えそうもありません。回復系の魔法なら使えます。光魔法を使用すると、魔力を増幅させる効果があるようです。普通に殴る分には問題なさそうですが……」
「よく分かったな。試してみたのか?」
「‥‥魔力の流れから判断しました」
一瞬、ロランの足が止まる。
「何を聞いても驚かないぞ、と思ったが。これは思った以上に、ぶっ飛んでるな。帝都の大魔導が聞いたら、絶対真っ青になって倒れるぞ」
「大魔導様はこれくらい普通にできると思うのですが‥‥」
「いやいやいや、むしろそれができる大魔導なんて聞いたことないぞ。セリーの方が大魔導より上だな、確実に。アドだって、〝妹は、大魔導師になっても良いと思うんだ〟って言ってたくらいだ」
以前言っていたお兄様のあの言葉は本気だったらしい。
しかも私の時は大魔導で、ロランには大魔導師と言っていたのか‥‥呼び名が違っているんだけど。
「改めて言うが、セリーの当たり前は世間の非常識だ。だから、この前ウスターの魔法を見せたわけだ」
「分かりました。それでは今回討伐の際に使う魔法は、土属性の下級か無属性魔法のみ。ウスターさんのような魔法を使います。何かあった場合にのみ光属性の回復魔法を使うようにします」
「ははっ、やっぱりアドの妹だ。物分かりがいい」
私の素性も隠しつつ、変な人に狙われないようにするためには能力を隠すことが大事。
お兄様の冒険者イロハの中に、ロランの言葉も残しておくのだった。
知っている人の妹だった、ということが大きいのだろう。
かくいう私も、お兄様の知り合いと聞いて、気を許し始めていた。
話はどんどん変わっていき、ロランがお兄様と冒険者として活動していた日々ーー流転のロランの時代の話になる。
流転、というパーティー名はお兄様が考えたそうだ。
そのパーティー名を聞いて、本当に紅玉という名前で良かったのか、と思えてくる。
そのことを恐る恐るロランに聞いたら
「あ?良いんだよ。俺らにピッタリだと思うぞ」
と言ってくれたので、あの時きちんと伝えて良かった、と思う。
「だが、セリーはアドから話を聞いていないのか?話す機会だってあったろうに」
そう、実は私はお兄様から冒険の話は一切聞いたことがなかったのだ。
冒険のイロハはーー、と言って基本的なことを教わっただけである。
「お兄様もお忙しい方ですから‥‥時間があるときに冒険のイロハだけ教えて貰いました」
ロランが「確かに忙しそうだったな、あいつ」と言っているので、何があったのだろうと首を傾げる。
その私の仕草に気づいたロランがすぐに教えてくれた。
「あいつの通り名、黒髪の紳士って言うんだけどな。ちなみに通り名って言うのは、S級の冒険者に付けられる称号みたいなものだって言うのは知ってたか?まあ例外はあるが」
S級の冒険者に、の部分は知らなかった。お父様もお母様もS級だが‥‥お兄様はA級だったはずだ。
「いつからか忘れたが、アドは黒髪の紳士と呼ばれるようになった。それが通り名としていつの間にか定着していたわけだ。滅多にないらしいがな」
それとお兄様が忙しい理由は何かあるのだろうか?
「で、この辺境伯領に来る前にアドに会ったんだ。そのとき通り名をA級で持っているせいで、学園の騎士科の生徒に喧嘩を売られていて困ってる、と言っていた」
「喧嘩、ですか?」
「ああ、簡単に言えば手合わせしろってことさ。引っ切り無しに来るらしいぞ?叩き潰しても、騎士科の生徒はめげずに挑戦するらしいから、捌くのに大変らしい。あとは辺境伯代理の仕事も学業の傍、関わっているから実家に帰れないんだよね、って言っていたぞ」
ロランがお兄様の真似をする。似ていた。
「ふふふ、お兄様らしいですね」
「そうだな、その通りだな。また会いに行ってやるか、文句の一つでも言ってやらないとな」
会いに行ってやる、との言葉に私はぴくん、と反応した。
私も一年程会っていないのだ。お兄様に会いたいな、と思っていたところだ。
「私も一緒に連れて行って貰えませんか?」
お兄様に会いたい一心で質問してみた私だが、どうもその質問が的外れだったらしい。
ロランは笑って私の頭をぽんぽん、と優しく撫でた。
「勿論、言われなくても連れて行ってやるよ」
その横顔は今までの誰よりも頼りになる横顔に見えた。
そして朝を迎える。
昨日、交代で見張りをするかどうかと言う話になったのだが、私が警備魔法を使うことができたので、ゆっくり休むことができた。
不審物や人が近づくと、音が鳴る仕組みだ。
これを防音魔法と組み合わせれば、外部に気づかれることはない。
ロランは警備魔法の存在は知っていたが、お兄様から教えてもらうことができなかったとのこと。
何故かは私にもロランにも分からないけど。
だからついでにロランにも警備魔法を教えておく。
最初は頭を悩ませていたようだが、何度か練習したら、きちんと発動するようになっていた。
お兄様が教えた魔力操作の訓練をずっとしていたというし、彼の努力の成果なのかもしれない。
少し疑問に思ったので一人の時はどうしていたのかと聞くと、商人の護衛の依頼を受けていたらしい。
成る程、護衛依頼なら複数のパーティーで行えるから見張りも交代交代で済むわけだ。
これからは安心して眠れるな、とはにかんで喋るロランは少し子どものようなはしゃぎようだった。
準備が整い、私たちは歩き始める。
メール村に向かう道には、商隊も冒険者も人も全く見かけない。
ただただ揺れる草と道があるだけだ。
いつになったら着くのだろう、ちょっと探索魔法をかけてみても良いかな?と考えていた頃。
静かだったロランが私に話しかけてきた。
「セリー、この調子ならあと1時間も経たずに着く。昼は村で調達しようと思うが、いいか?」
「大丈夫です」
「あとは武器屋のおやじから貰った鉄扇も念の為装備しておくと良い」
そうそう、鉄扇も貰っていた。すぐに取り出せるよう、腰のあたりに紐でくくりつけておく。
「そう言えば、おやじから買ったグローブ、使えそうか?」
「残念ながら‥‥攻撃には使えそうもありません。回復系の魔法なら使えます。光魔法を使用すると、魔力を増幅させる効果があるようです。普通に殴る分には問題なさそうですが……」
「よく分かったな。試してみたのか?」
「‥‥魔力の流れから判断しました」
一瞬、ロランの足が止まる。
「何を聞いても驚かないぞ、と思ったが。これは思った以上に、ぶっ飛んでるな。帝都の大魔導が聞いたら、絶対真っ青になって倒れるぞ」
「大魔導様はこれくらい普通にできると思うのですが‥‥」
「いやいやいや、むしろそれができる大魔導なんて聞いたことないぞ。セリーの方が大魔導より上だな、確実に。アドだって、〝妹は、大魔導師になっても良いと思うんだ〟って言ってたくらいだ」
以前言っていたお兄様のあの言葉は本気だったらしい。
しかも私の時は大魔導で、ロランには大魔導師と言っていたのか‥‥呼び名が違っているんだけど。
「改めて言うが、セリーの当たり前は世間の非常識だ。だから、この前ウスターの魔法を見せたわけだ」
「分かりました。それでは今回討伐の際に使う魔法は、土属性の下級か無属性魔法のみ。ウスターさんのような魔法を使います。何かあった場合にのみ光属性の回復魔法を使うようにします」
「ははっ、やっぱりアドの妹だ。物分かりがいい」
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お兄様の冒険者イロハの中に、ロランの言葉も残しておくのだった。
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