辺境伯令嬢は冒険者としてSランクを目指す

柚木ゆきこ

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第2章 冒険者編 ~シャルモンの街~

昇級の話になりました

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「‥‥話は終わりましたか?」

 ギルド長の声で現実に戻る。しまった、ギルド長の存在を忘れていた。
お母様は慌てる様子もなく、「ええ、待っててくれてありがとう」と和かに話しかけていた。

「じゃあロランくん達は退席かな。あ、以前借りていた杖を返すね」

 ギルド長は杖を渡してくれる。そしてそれを収納魔法に私は仕舞う。
その様子を見ていたお母様はふと思い出したかのように、話出した。

「そう言えば、この子達のランクはどうなるのかしら?強化されたアウラウネを倒したのなら、セリーヌも昇級するだろうし、ロランくんもS級に上がれると思うけど?」

 そんなに簡単に昇級するものなのか‥‥?いや、普通はしないのだろう。
これがロランの言う非常識、ということなのかもしれない。

「それがですね、ロランくんはS級に上げることができますが、セリーヌくんは無理ですね」
「何ですって?何が問題なの?」

 お母様がギルド長に詰め寄っている。‥‥私は昇級しなくても良いんだけど。

「今回のアウラウネ討伐は公表されないのですよね?」
「ええ、無闇矢鱈に公表するのは良くないわ。二人ではなく、うちが倒したことにする予定よ」
「と考えると、セリーヌくんは今回、ワイルドボアのみの討伐となります。それでランクを上げることはできません。それに推薦昇級は一つのギルドで一度までです」

 肩を竦めたギルド長に向かってお母様が机に足を乗せて反論し始める。

「そこはモルガンの権限でどうにかならないの?!」

 どうにかならないから、無理ですね、と言っているのではないだろうか‥‥お母様。
隣にいるロランも置いてきぼりで、苦笑いだ。
ロランもお母様には話しかけられないだろう。私が話すしかない‥‥か。

「お母様、私はすぐにランクを上げたいとは思っていません」
「セリーヌ、そうなの?」
「はい。いきなりランクを上げれば、不必要な危険を呼び込むかもしれませんから」

 はい、完全にロランの受け売りである。だが、そう思っているのも事実だ。
お母様はそう言い切った私を見て、驚いていたがすぐに笑顔に戻り、ソファーに戻った。

「ただ、今回の件は昇級に値するものです。その旨はきちんと手紙に認めておきますので渡しますね。ギルドマスターにのみ見せるようにして下さいね‥‥」

 お母様の対応に疲れたのだろう、ため息を付きながらではあるがギルド長は手紙を渡してくれた。

「ありがとうございます」

 私は手紙を受け取った。今も非常識なスピードで昇級しているらしいけど、少しでもゆっくりと昇級する道を選ぼう。

「ロランくんはどうする?君の実績ならS級にできるけど‥‥」

 ロランが念願のS級!野宿の時に少しだけ話していたことを思い出す。
「俺はS級の冒険者になって、人を助けたい」その夢が一つ叶うのかもしれない。
私たちはロランが肯定すると思っていた。だが、実際は正反対の意見だった。

「いえ、辞退させて下さい」
「どうしてだい?君の実力ならS級でも実力は謙遜ない。問題ないと思うけれども‥‥」

 ギルド長の顔を見ていたロランが、ちらりと私の顔を見る。
そしてお母様とギルド長に向けて、話し始めた。

「私は、今回セリーを守れませんでした。セリーを守れるようになって一人前だと思っています。だから、自分が納得した時に、昇級をお願いしようと思っています」

 そう言い切ったロランを鼓舞する人がいた。お母様だ。

「うふふ、良く言った!ロランくん、素晴らしい決意ね!さっきも言ったけれど、貴方は強くなりなさい。そしてセリーヌを守れるようになりなさい。そして強くなったら‥‥またセリーヌと一緒に顔を見せに来てね?」

 ここまでお母様に気に入られるとは、ロランって凄いんだな。
ギルド長も首を横に「やれやれ」と振っているが、ロランの発言は認めてくれたみたいだ。
手紙にロランくんの件も記載しておきます、と言葉をくれた。

「じゃあ、二人とも頑張って。そうだ二人とも、暇なときでいいから、アドにも手紙を送ってあげてね」
「それじゃあ、報酬はまた改めて渡すから、よろしくね」

 二人に言葉を掛けられた私たちは、ようやく部屋から出るのを許されたのだった。


「お、終わった‥‥なんなんだ‥‥あの空間」

 ロランには初めての体験だろう。
精神的に疲れがどっとでてきたようで、今は近くのカフェでお茶をしている。

「お母様はいつもあんな感じです」
「と言うか、セリーのお父さん、縛られて放置されていたけど良いのか?」
「‥‥‥あ」

 忘れてた!と思わず声を出しそうになったが、寸前のところで止める。
ロランが怪訝な表情でこちらを見ていた。

「その表情じゃ、忘れてたっぽいな」
「お父様はいつもああですから‥‥」
「いつも?」

 ロランが尋ねて来たので、お母様とお父様の喧嘩(ただし一方的)について話す。

「あー、うん。セリーの母さんって凄いな」
「はい。強くて格好良くて‥‥私の憧れです」

 そうロランに宣言すると、ロランの顔が少し引きつったような気がした。

「セリーはそのままで居て欲しい‥‥あ、いや。二人で頑張ろうな」
「はいっ」

 私の耳には最初の方の言葉は聞こえなかったが、気にせず返事をする。
そして二人でお兄様に宛てた手紙を書くために、封書を購入しに街に向かった。
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