辺境伯令嬢は冒険者としてSランクを目指す

柚木ゆきこ

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第2章 冒険者編 ~シャルモンの街~

魔法講義をしました 前

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 お兄様へ送る封書を買って帰った次の日。
ギルドでいつものように依頼を見ていると、マリオンさんが私たちに声をかけてきた。

「せ、セリーさん、今、よろしい、ですか?」

 私の後ろにはロランもいるのだが、彼女はロランが見えていないらしい。
ちらっとロランを見ると、彼は両手を肩まで上げて首を横に振っている。
少しだけ喋ることができるようになっている(気がする)私は、返事をすることにした。

「はい、何かご用でしょうか?」

 すぐに周りがざわざわっと騒々しくなるが、一瞬で騒々しさがなくなる。
実は騒がしくなった瞬間に、ロランが周りを睨んでいたのだが、その事を私は知らない。
彼女は震える声で私に話しかけ始める。

「ぎ、ギルド長からですが‥‥報酬の件は、に‥‥2、3日待ってほしい、とのことです‥‥」
「ワイルドボアの件ですか?」
「は、はい。そのように聞いております‥‥」

 言い終わった彼女は顔を真っ赤にして下を向いてしまったので、私が何か悪い事をしたのかもしれない。
どうしよう、まだ私には早かった?と目を泳がせていると、横からロランがぶっと噴き出していた。

「ロランさん?!貴方もいらっしゃったのですか?」
「さっきから後ろにずっといたが?」

 笑い続けているロランに、顔を真っ赤にして突っかかっていくマリオンさん。
彼女の姿を見て杞憂だった事に気づくが、私は無愛想なので怖いのかもしれない、とふと思った。

「マリオンさん、ごめんなさい。私、愛想が良くないので‥‥怖がらないでいただけると嬉しいです」

 その言葉に言い合いをしていた二人は目を丸くして私を見ると、すぐにロランは口を抑えて、肩を震わせていた。
一方のマリオンさんは慌てて私の言葉を否定していた。聞いたところ、同じ人見知りらしい。
それでもロランは背中を向けて、笑いを堪えているように見えるが、何故なのか。

 そうして言い合いはすぐに終結した。

「セリーは凄いな」とロランが笑いながら言っていたが、何が凄いのか、全くわからなかった。

 そんなやり取りを終え、依頼を見ていたが、中々良さそうな依頼が見つからない。
二人で困っていたが、ロランが「それならば」と私に提案してきたのは、魔法の講義である。

 それならば、とギルドのくつろぎスペースで、どこで魔法講義を行うか話し合う。
訓練場は予約が入っていて使えなかった。ならば‥‥

「最初にゴブリンの討伐依頼があったところはどうでしょうか?」

 という私の一言で、その場所に決まった。

 私とロランは、宿の先の大通りにある雑貨屋さんに向かう。
そこで紙と鉛筆と色鉛筆を購入した後、二人で洞窟まで駆け足で走っていった。
周りを見るが、人も魔物もいない。ギルドの警戒区域が解けたばかりだからだろう。

「この辺りで良いか?」

 以前ゴブリンメイジたちと戦った洞窟の目の前までやってきた。丁度開けている。

「大丈夫です。誰も居ないようですね」

 そうして魔法講義は始まった。


 お兄様の教えている魔力操作訓練法は、多分私と一緒に遊びながらやっていたものと思われる。
その予想通りロランは無属性魔法の「明かり」の詠唱魔法を唱えた後手のひらに魔力を溜め、魔力を思う通りの形に変えていくやり方だ。

「アドが、これを上手くできるようになれば、もっと魔法が上手くなるよ!って言っていたが‥‥これ以上、どう扱えばいいか分からなくてな」

 ロランの明かりは、球体、三角錐、立方体と形を変えていく。
ここまでは非常に綺麗な形だった。
練習している成果なのだろう、と思う。

「では次に進みましょう」

 と言って私は買ってきた紙と鉛筆にサラサラ、と訓練の流れを書き留める。
ロランも首を傾げて見てきたが、気にしない。

1、魔力操作
 a 球体・三角錐・立方体
 b aの大きさを変える
 
2、イメージ
 a 絵に描く

 まだ書きたい事はあるのだが、上手く言葉で表せずそこで止める。

「これで終わりか?」
「いいえ、まだありますが‥‥上手く言葉で表せないので」

 なるほどな、と理解してくれたようだ。
まずロランには、大きさを上手く変えられるかを実践してもらうことにする。

「ロラン、球体を出してもらえますか?その球体を私が出す大きさに変えてください」

 手のひらに出したのは、1cmほどの球体。ロランはその10倍以上の大きさだ。

「え?できるのか?」
「ええ、自分の魔力ですから、魔力は身体に戻すこともできます」

 ロランは悪戦苦闘している。見てみると、魔力を出すのは得意なのだろうが、制限したり戻したりすることが苦手なのだろう。

「それが出来れば、無駄な魔力を消費することがなくなります」
「アドが言っていたが‥‥こりゃ難しいな」
「最終的には、この紙の薄さまで魔力を伸ばせるようにしてもらいます」

 ロランの顔が引きつる。
紙の薄さまで魔力操作出来るようになれば、もっと楽に魔法を出せると思うので頑張って欲しい。
ロランの訓練中、私も時間があったのでロランの様に訓練していた。
訓練のおかげで今は、1秒ほどで大きさをパパッと変えることが出来る様になっている。
 ロランは信じられないものを見た様な顔をしていたが。

 そろそろロランも疲れが溜まってきそうなので、もう一つの方に進めよう、と私は腰を上げた。
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