元悪役令嬢は何でも屋になる。

葉叶

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トラウマは忘れた頃に戻ってくる。

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「っう……ハァッ……ハァッ……」
「手が止まってるわよ、ジル」
「わ、わかってるっ!何で…エル君そんなケロッとしてるの!?」

ポタポタと汗を流しながら片手で腕立て伏せをするジル。
あれから半年くらい経った。
ジルは能力も暴走する事が減って今は体を鍛えてる最中だ。

「ん?これくらいで何で汗かくのかわからん。」

ジルは大分私達とも打ち解けたと思う。
私達をちゃん付けするくらいには仲良くなれたと思いたい。
実際あれから別室にジルの部屋を作ったものの能力の暴走が寝てる時に起こる事があり、結局私達と寝ていたりする。

「はい、今日の筋トレ終わりっ!」

バンッ

「ハル!エル!!!」
「あら、どうしたの?クリス」

突然部屋の扉を壊れんばかりの勢いで開けて私とエルの手を掴み何処かに走るクリス。ジルニア置いてきてしまったけど…大丈夫かしら?

バタバタと走り辿り着いた先は応接室の前。

「エル、いつもの着替えをエルとハルにやって!」
「わ、わかった」

いつもの、というのは依頼を受ける時に着るのが多い服装の事。
新作があればそちらを着るが無ければ和の国から報酬で貰った着物に面で顔を隠した格好。

「クリス、どうしたの?そんなに慌てて」
「今ある国から使者が来てるんだ。一応そこの応接室に通したんだけど…」

ある国…このクリスの感じからして…あの国かしらね

「わかったわ。エル、念の為クリスにも服を。声を変える面もね。」
「ん、わかった」

パチンと指を鳴らせば一瞬で早変わり。

「さて、行きましょうか」

扉を開けると見た事ある顔ぶればかり。

「ようこそ、Diabloへ。
今回はミストリア王国からわざわざこんな所まで何の御用で?」

ミストリア王国…。私が生まれ育った国。そして、私が捨てた国。

「私はミストリア王国で外交官をしているギリシア・ダリンソンと申します。この度は我が国の王より手紙を預かって参りました」

渡された手紙に目を通し横にいるエルに渡すと、エルは鼻で笑ってクリスに渡した

「ギリシアさん。このお話はお断りした筈ですが?」

手紙には創立記念パーティーに来てほしいと書いてあった。
Diabloは今まで公の場に出た事はない。
そんな場所へ行けばDiabloが支持していると勘違いされかねないからだ。Diabloは何処の国にも所属しない自由な団体。はみ出し者の集まりだ。
誰にも縛られず、自由に生きる、それがDiablo。

「もし日程が合わないのであれば幾らでも調整します。」

ニッコリ笑ってはいるが断ることを許さないと言いたげに圧をかけてくる。

「暇があっても行かないとハッキリ言われるのが好みですの?
私達は何処の国だろうと傘下には入りません。例えどんなに報酬が良くてもね。」
「何故断るのですか!貴方方にとっても悪い話ではありません!」
「ユフィリア!黙りなさい!
すいません、愚息はまだ修行中の身でして…」

「別に気にしてませんわ?
Diabloはミストリア王国だけではなく各国から招待状を貰っていますの。
もしかしたら私達の気分が変わってその招待を受ける事があるかもしれません。
ですけどね?貴方方の国だけは未来永劫招待を受ける事はありませんわ。あぁ、ついでに依頼を受けるのもやめましょうか?
私達はミストリア王国の依頼がなくても困る事はありませんし。」

あの国に関わりたくない。
だけど幸せそうに生きてるのを見るのはとてつもなく嫌だ。
もっと不幸であれ、もっと嘆いてくれ。そう願ってしまう。

「それではお帰りを。
此処ではどの国の法律も意味を成さない。
此処はDiabloだ。お前たちを殺すのくらい簡単だ。
死にたくなければ早く帰るといい」

クリスは扉を開けて腕を組んだ
ギリシア達は何か言いたげにしながらも帰っていった。

扉がしまった瞬間エルが私を抱きしめた

「ハル、よく頑張ったね。偉い偉い」

小さな子を褒めるようによしよしと優しく頭を撫でられる。
本当は今も怖い。震えを止めるのに必死で、気丈に振る舞うので精一杯だった

「…っ声震えてなかった…?」
「うん。強気なボスらしかったよ。
だけどね、今は僕だけだから……だから怖がりで寂しがりで泣き虫な僕の可愛いハルに戻っていいんだよ」

震える私の身体をきつく抱きしめながら優しい声で話しかける。

その言葉を聞いた瞬間私は泣いた。
怖くて怖くて堪らなかった。傷が疼いて痛くて堪らなかった。もう二度と会いたくなんてなかった

「大丈夫。僕がいる。ハルには僕が居るから。」

エルは私が落ち着くまでずっと抱き締めてくれた。
ずっと優しく私を癒やしてくれた。


彼は知ってる
私から消えてくれない過去を、私を捕らえて離さない傷を。



小さなエルのちいさな太ももに膝枕されながらぼーっと壁を見る

「このまま…引き下がると思う…?」
「それはないんじゃないかな。いまやDiabloはどの国も喉から手が出る程欲しいものだもん。
戦力 情報力 経済力何をとっても何処の国にも負けないんだからさ。」

優しく私の頭を撫でながら応えた。
アイツ等が諦めるわけない。わかってる、わかってるけど……っ

「ハル、僕もクリスも…他のメンバーもハルだから着いてきたんだ。
誰からも見放されて誰からも愛されなくて孤独だった僕らを闇の底から救い上げたのはハルだ。
ハルが決めた事なら僕達はそれがどんな決断でも従うよ。
ハルの意思はDiabloの意思だ。」
「……ありがとう…エル。」

例え立ち上がれなくても、今の私には差し伸べられる手がある。
あの頃にはなかった…手が。

「エル、クリスに言伝を頼みたいの。皆を集会所にに集めてって。
泣いてばかり居られないわよね。」

涙を拭いて立ち上がる私を見てエルは微笑み部屋から出て行った。
今の私は一人じゃない。守らなきゃいけない家族がある。
支えてくれる家族がある。

……逃げてばかりもいられない。





「皆急に集めてごめんなさい。今回は大事な話があるの。」

壇上に上がりメンバーを見渡す。

「今回皆を呼んだのには訳があるわ。
ミストリア王国から創立記念パーティーへの招待状が来た。
今回もいつもの通り断ったけれど、これから先どんな事をしてくるかわからないわ。
…ミストリア王国と私のイザコザを知ってる人は多いと思うわ。」

震えそうになる手を強く握る。

「知らない人の為に…言うわ。
私は元々ミストリア王国の公爵令嬢だったの。
ミストリア王国は私の母国であり私が一番忌む国でもある。」
「ハル、無理に話さなくてもいいんだぜ?」

横にいたクリスが私の手を握る。温かく優しい温もり。

「…大丈夫よ。どのみち知る事になるのだから
皆には私の口から伝えたいの。」

今回私が考えた事を実行に移すならば遅かれ早かれ知る事になる。

「ことの始まりは私が…学園の高等部に入った時よ。」

それまでは他の令嬢と変わりなく親から愛され皆から慕われる公爵令嬢として生きてきた。

そう、あの日までは。

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