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私、前世を思い出しました。
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目を覚ますと、辺りは明るくなっていた。
どうして私はここに居るんだろう。そう考えた瞬間、意識を失う前の事を思い出した。
バッと体を起こし、周りを見れば、すぐ横に彼が居た。
「……良かった。生きてる……っ」
聞こえてくる規則正しい呼吸音にホッと一息つく。
だけど私がしたのはあくまでも時間稼ぎだ。
流れ出た血をどうにか出来た訳じゃないし、無理したらすぐに傷が開いてしまうかもしれない。
「………かと言って担いでいくなんて無理よねぇ。」
今の私はまだ子供で、自分と同じくらいの男の子を担ぐなんて出来やしないし、昨日の様に引き摺るとしても帰り道も分からないのに闇雲に動かして傷を開かせてしまうのは得策ではない。
前世の私ならもしかしたら彼を担げたかもしれないが、今世の私は生粋のお嬢様だ。腕力なんて必要最低限しかついてない。
木からここまで引き摺るのさえ、凄い体力消耗したし、何度も転んだのだ。
どう考えても現実的じゃない。
「……探して、くれてるのかしら」
日の傾き的に今はお昼くらいだろうか。
メイドがいつもの様にお越しに来ているなら、もう私が居ないのはわかってる筈。いや、もしかしたら昨日の内からわかっているかもしれない。
それなのに捜索隊が出された気配はない。
こんなに時間が経っているのだ。捜索隊が出ているならもう見つけていてもおかしくはないし、こんなにも周囲が静かな筈はない。
それに加え、何度もこの森で訓練をしている家の騎士達なら、森に居る私を見つける事くらい容易い筈なのだ。
「………余り、期待はできないかもしれないわね。」
両親から愛されてない訳ではない。可愛がられていない訳でもない。
けれど、どうしても完全な信頼を置けないのはきっと…………。
「ん………っ、いっ…」
「あ、起きたのね…っ!駄目よ動いちゃ。傷が開いちゃうわ!」
動こうとする彼を慌てて寝かせれば、彼の瞳が私を映す。
「き、みは……」
「私はティアナ。貴方は?」
「…ぼ、くは、ルキ」
戸惑っているのか視線を彷徨わせながら彼が答える。
ゲームで聞いた声より少し高い声は掠れていた。
「喉乾いてない?お水あるわよ」
革の水筒を彼に渡すと、彼は恐る恐る受け取り、私の方をチラチラと見ていた。
「好きなだけ飲んでいいわよ。水なら沢山あるもの。
それとも何か入ってると思ってるのかしら?」
「…そ、れは」
何かを身構える様に身体を縮こまらせながら、彼が震えた声で呟く。
「ちょっと貸して。いい事?ちゃんと見てるのよ?」
彼が顔を上げたのを確認してから、私は水筒を傾けた。
口をつけたら飲んでるかわからないから、少しだけ飲み口から口を離して水を飲む。こんな事したと知られたらはしたないと怒られてしまうけど、今は緊急事態だから仕方ない。
「ほら、なんともないでしょ?」
少しこぼれた水を袖で拭いながら、水筒を彼に渡せば恐る恐る飲み始めた。
水は困らないだけあるけれど、食料はそうもいかない。
遭難なんてするとは思っていなかったし、彼がこんな状態になっているとも思っていなかったから、おやつに食べようとこっそり隠していたクッキー3枚しか持っていない。
しかも腐ってはないけど、とても硬くなっているクッキーだ。
怪我人にこのまま食べさせて窒息死とかしないかとても心配だし、3枚ではそう長く過ごせないだろう。
こういう時小説でよく見るようなチート能力があれば困らないんだろうけど、皮肉な事に私にチート能力は一切備わっていない。
あるのは沢山の死亡フラグだけだ。本当に現実は残酷なものである。
「これ、口の中で柔らかくしてから食べて。」
クッキーを割り、自分の口に一欠片入れてから、欠片を彼の口に押し付ける。
私が食べたからか、彼は抵抗もせず欠片を口に含んだ。
少ししょっぱいクッキーは栄養価的にはとても微妙だろうが、コレしか食料がないのでそこはおおめにみてもらいたい。。
さてさて、この先どうしたものか。
捜索隊が出ていない前提で動かなければいけない。
だって期待して実は来てませんみたいなオチは一番笑えないもの。
食料問題は狩りなんてした事がない唯一動ける私が動物を狩れるかにかかっているが……もし狩れたとしても果たして動物を捌けるのかが問題になってくる。
前世でもサバイバル経験なんてないし、今世で生粋のお嬢様育ちな私はナイフなんて持っていない。
持っている物といったら紙とペンと少しのお金だ。
これが街に近いとかならお金で何か買えたが、こんな森の中では何の役にもたたない。
彼にクッキーを食べさせながら今後の事を考えたが、残念な事にいい未来は殆ど見えてこない。
可能性があるとしたらお兄様だろうけど、どんなに早く来たとしても王都にある学園から私が今いる領地に来るまでに少なくとも4日はかかる。
連絡が行くのに4日かかるとして、最低でも8日はこっちに帰ってこれないだろう。
それに加えお兄様はまだ後継ぎだ。
スカーレット家の全権は握ってない。独断で捜索隊は出せないだろうからお兄様の個人的な私兵を使い少数で探す事になるだろう。それで私の居場所を探るのにどれだけかかるか……。
それにもし私が誘拐されたと思われたら、森よりも他に目がいくかもしれないし、もっと時間がかかるだろう。
これが王都の家だったらもっと早いかもしれないが、王都の家には森なんてないからまずこんな事態に陥っていない。
水魔法を空高く打ち上げて見る事も考えたが、誰かが見ていないとなんの意味もないし、今の私にそんな魔力は残っていない。
もしやるとしてももう少し回復してからでなければ、最悪魔力が枯渇して死んでしまうのがオチである。
「ん………?待って?そういえば……っ!!!」
バッと立ち上がったせいか、彼がビクッと体を震わせた。
何だか申し訳なくなり、これ以上怖がらせない様にゆっくりと動き湖に手をつけた。
此処にくる前、私は水の精霊王と契約したのだ。
水の精霊王ならば、魔力がない状態でも湖を媒介にして呼ぶ事が出来るのでは?それが出来なくとも、彼を通して誰かを呼ぶことが出来るかもしれない。
「ヴェン……お願い、この声が聞こえているならどうか来て」
こんな呼びかけで応じてくれるのかはわからない。
だけど出会った時、水に触っていたら来たのだ。賭けではあるがやって損はない。
目を瞑って、何度も何度も呟いていると、水の揺らめきを感じた。
「呼んだか?」
目を開き、前を向けば、そこにはヴェンの姿があった。
「!!!??聞こえたんですか!?」
「??呼んだのはティアナじゃろう?」
何当たり前のことを言ってるんだと言いたげに眉をクイッと上げたヴェンが私の額に手を伸ばした。
「少し会わない間にこんなに傷をつけて何をしておったんじゃ?それに……こんな所に随分面白い男を連れて」
チラリと後ろにいるルキに物有りげな視線を投げかけて、視線を私に戻した。
「それに魔力が枯渇しかけておるのぅ。
ふむ、大方そこの男に治癒でも施してやったか?」
「!?」
何故わかった!?と驚いていると、ヴェンがクククと笑い始めた。
「そんなもの視ればわかる。そこの男はティアナの魔力を纏っておる。その量と其方の枯渇具合を考えたら答えは簡単に出るじゃろう?」
「そ、そんなのも見れるのですね」
そんな事は習った覚えがないから、精霊特有の物なのかもしれない。
「ヴェンに聞きたいことがあるのです。」
「儂に答えられる事なら何でも聞くといい。」
ヴェンは私を膝の上に乗せて、湖の傍に座った。
「捜索隊は出ていますか?家の者は……私を探していましたか?」
探されてないと言われたら、別の道をどうにか考えなければいけない。
時間がかかり過ぎれば、もしかしたら籍を抜かれてしまう可能性もある。
今の私なら平民としても生きていけるとは思うけど、子供の体で何処まで出来るのかわからない。それに今はルキが居る。
未だ万全には程遠い彼を連れてどこまで行けるのか……。
「どうであろうなぁ。少し待て。アソコに精霊を置いてあるから聞いてやろう」
そう言ったヴェンは何処か遠くを見ていた。
まるで時が止まった様に動かないヴェンを見つめながら、どうか私の嫌な予感が当たらないで欲しいと願った。
どうして私はここに居るんだろう。そう考えた瞬間、意識を失う前の事を思い出した。
バッと体を起こし、周りを見れば、すぐ横に彼が居た。
「……良かった。生きてる……っ」
聞こえてくる規則正しい呼吸音にホッと一息つく。
だけど私がしたのはあくまでも時間稼ぎだ。
流れ出た血をどうにか出来た訳じゃないし、無理したらすぐに傷が開いてしまうかもしれない。
「………かと言って担いでいくなんて無理よねぇ。」
今の私はまだ子供で、自分と同じくらいの男の子を担ぐなんて出来やしないし、昨日の様に引き摺るとしても帰り道も分からないのに闇雲に動かして傷を開かせてしまうのは得策ではない。
前世の私ならもしかしたら彼を担げたかもしれないが、今世の私は生粋のお嬢様だ。腕力なんて必要最低限しかついてない。
木からここまで引き摺るのさえ、凄い体力消耗したし、何度も転んだのだ。
どう考えても現実的じゃない。
「……探して、くれてるのかしら」
日の傾き的に今はお昼くらいだろうか。
メイドがいつもの様にお越しに来ているなら、もう私が居ないのはわかってる筈。いや、もしかしたら昨日の内からわかっているかもしれない。
それなのに捜索隊が出された気配はない。
こんなに時間が経っているのだ。捜索隊が出ているならもう見つけていてもおかしくはないし、こんなにも周囲が静かな筈はない。
それに加え、何度もこの森で訓練をしている家の騎士達なら、森に居る私を見つける事くらい容易い筈なのだ。
「………余り、期待はできないかもしれないわね。」
両親から愛されてない訳ではない。可愛がられていない訳でもない。
けれど、どうしても完全な信頼を置けないのはきっと…………。
「ん………っ、いっ…」
「あ、起きたのね…っ!駄目よ動いちゃ。傷が開いちゃうわ!」
動こうとする彼を慌てて寝かせれば、彼の瞳が私を映す。
「き、みは……」
「私はティアナ。貴方は?」
「…ぼ、くは、ルキ」
戸惑っているのか視線を彷徨わせながら彼が答える。
ゲームで聞いた声より少し高い声は掠れていた。
「喉乾いてない?お水あるわよ」
革の水筒を彼に渡すと、彼は恐る恐る受け取り、私の方をチラチラと見ていた。
「好きなだけ飲んでいいわよ。水なら沢山あるもの。
それとも何か入ってると思ってるのかしら?」
「…そ、れは」
何かを身構える様に身体を縮こまらせながら、彼が震えた声で呟く。
「ちょっと貸して。いい事?ちゃんと見てるのよ?」
彼が顔を上げたのを確認してから、私は水筒を傾けた。
口をつけたら飲んでるかわからないから、少しだけ飲み口から口を離して水を飲む。こんな事したと知られたらはしたないと怒られてしまうけど、今は緊急事態だから仕方ない。
「ほら、なんともないでしょ?」
少しこぼれた水を袖で拭いながら、水筒を彼に渡せば恐る恐る飲み始めた。
水は困らないだけあるけれど、食料はそうもいかない。
遭難なんてするとは思っていなかったし、彼がこんな状態になっているとも思っていなかったから、おやつに食べようとこっそり隠していたクッキー3枚しか持っていない。
しかも腐ってはないけど、とても硬くなっているクッキーだ。
怪我人にこのまま食べさせて窒息死とかしないかとても心配だし、3枚ではそう長く過ごせないだろう。
こういう時小説でよく見るようなチート能力があれば困らないんだろうけど、皮肉な事に私にチート能力は一切備わっていない。
あるのは沢山の死亡フラグだけだ。本当に現実は残酷なものである。
「これ、口の中で柔らかくしてから食べて。」
クッキーを割り、自分の口に一欠片入れてから、欠片を彼の口に押し付ける。
私が食べたからか、彼は抵抗もせず欠片を口に含んだ。
少ししょっぱいクッキーは栄養価的にはとても微妙だろうが、コレしか食料がないのでそこはおおめにみてもらいたい。。
さてさて、この先どうしたものか。
捜索隊が出ていない前提で動かなければいけない。
だって期待して実は来てませんみたいなオチは一番笑えないもの。
食料問題は狩りなんてした事がない唯一動ける私が動物を狩れるかにかかっているが……もし狩れたとしても果たして動物を捌けるのかが問題になってくる。
前世でもサバイバル経験なんてないし、今世で生粋のお嬢様育ちな私はナイフなんて持っていない。
持っている物といったら紙とペンと少しのお金だ。
これが街に近いとかならお金で何か買えたが、こんな森の中では何の役にもたたない。
彼にクッキーを食べさせながら今後の事を考えたが、残念な事にいい未来は殆ど見えてこない。
可能性があるとしたらお兄様だろうけど、どんなに早く来たとしても王都にある学園から私が今いる領地に来るまでに少なくとも4日はかかる。
連絡が行くのに4日かかるとして、最低でも8日はこっちに帰ってこれないだろう。
それに加えお兄様はまだ後継ぎだ。
スカーレット家の全権は握ってない。独断で捜索隊は出せないだろうからお兄様の個人的な私兵を使い少数で探す事になるだろう。それで私の居場所を探るのにどれだけかかるか……。
それにもし私が誘拐されたと思われたら、森よりも他に目がいくかもしれないし、もっと時間がかかるだろう。
これが王都の家だったらもっと早いかもしれないが、王都の家には森なんてないからまずこんな事態に陥っていない。
水魔法を空高く打ち上げて見る事も考えたが、誰かが見ていないとなんの意味もないし、今の私にそんな魔力は残っていない。
もしやるとしてももう少し回復してからでなければ、最悪魔力が枯渇して死んでしまうのがオチである。
「ん………?待って?そういえば……っ!!!」
バッと立ち上がったせいか、彼がビクッと体を震わせた。
何だか申し訳なくなり、これ以上怖がらせない様にゆっくりと動き湖に手をつけた。
此処にくる前、私は水の精霊王と契約したのだ。
水の精霊王ならば、魔力がない状態でも湖を媒介にして呼ぶ事が出来るのでは?それが出来なくとも、彼を通して誰かを呼ぶことが出来るかもしれない。
「ヴェン……お願い、この声が聞こえているならどうか来て」
こんな呼びかけで応じてくれるのかはわからない。
だけど出会った時、水に触っていたら来たのだ。賭けではあるがやって損はない。
目を瞑って、何度も何度も呟いていると、水の揺らめきを感じた。
「呼んだか?」
目を開き、前を向けば、そこにはヴェンの姿があった。
「!!!??聞こえたんですか!?」
「??呼んだのはティアナじゃろう?」
何当たり前のことを言ってるんだと言いたげに眉をクイッと上げたヴェンが私の額に手を伸ばした。
「少し会わない間にこんなに傷をつけて何をしておったんじゃ?それに……こんな所に随分面白い男を連れて」
チラリと後ろにいるルキに物有りげな視線を投げかけて、視線を私に戻した。
「それに魔力が枯渇しかけておるのぅ。
ふむ、大方そこの男に治癒でも施してやったか?」
「!?」
何故わかった!?と驚いていると、ヴェンがクククと笑い始めた。
「そんなもの視ればわかる。そこの男はティアナの魔力を纏っておる。その量と其方の枯渇具合を考えたら答えは簡単に出るじゃろう?」
「そ、そんなのも見れるのですね」
そんな事は習った覚えがないから、精霊特有の物なのかもしれない。
「ヴェンに聞きたいことがあるのです。」
「儂に答えられる事なら何でも聞くといい。」
ヴェンは私を膝の上に乗せて、湖の傍に座った。
「捜索隊は出ていますか?家の者は……私を探していましたか?」
探されてないと言われたら、別の道をどうにか考えなければいけない。
時間がかかり過ぎれば、もしかしたら籍を抜かれてしまう可能性もある。
今の私なら平民としても生きていけるとは思うけど、子供の体で何処まで出来るのかわからない。それに今はルキが居る。
未だ万全には程遠い彼を連れてどこまで行けるのか……。
「どうであろうなぁ。少し待て。アソコに精霊を置いてあるから聞いてやろう」
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