悪役令嬢の居場所。

葉叶

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その頃国では…

チナside

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怒りで我を失いそうになるのを必死に堪える。
何の為に我慢していたのかわからなくなる。
姫様が幸せになるならと離れたのに、何故姫様が傷つけられるのかわからない。
姫様が何をしたと言うんだ…

クゥーン

「ふふ、大丈夫だよ。
まだ本番が残ってるからね。理性は残しておかないと」

僕の仲間が心配そうに僕を見つめる。

セッカ達も殺してしまわないよう頑張って理性を保ってるみたいだね。
とは言ってもセッカの場合はセラが死にそうになる度回復させているから何度も殺してるのと変わらないか

「ねぇ、王様?
それでさ何で契約やぶっちゃったの?
アンタが姫様を預けた家は自分の娘が産まれるのと同時に姫様を虐めてた様だけど?
それに、学園でも虐めがあった。
お前本当に何も気づかなかった訳?
本当に気づかなかったっていうのならそれはお前の怠慢なんじゃない?
一国の主ならば、どんな手を使っても姫様の様子を知る事が出来る筈だ。
ましてや、契約の日から何年も経ちお前にも自分の部下が居るのだから」

僕だってセッカだってアヤメだって自分たちの国を持ってる。
もしも、本当に姫様を気にかけていたのなら
僕だったら常時姫様には隠密部隊をつける。
もし、姫様が傷つけば国が滅ぶんだからそんな事簡単な事だ。
それをしない事を選んだのは国王だ。

「まぁ、もしもこれが長年他国と戦争をしていて監視をつける人員さえ居なかったっていうなら百歩譲ってまだわかる。
けれど、この国は姫様が来てから平和だったよね?
国境には各種族の戦闘要員が居て国内にも精霊王が各地に居た。
食べる事にも困らず生きる事にも困らないお前には余裕があった筈だよね?」

「…っ」

「お前は知っていただろう?
あの日僕達がした事も、姫様が傷つけばこうなる事も。
…やっぱり人間は駄目だね。平和が続けば馬鹿になる。
それが誰によって守られているのかも知らず
それが当たり前だと思うようになる。
お前の息子、見てみなよ。
こんな状況なのにまるでわかっていない。
既に生きているのはここに居る者なだけな事も。
どうしてこんな事になったのかも。
あぁ、一人だけ賢い息子が居るみたいだね。」

醜く喚く王子は、セッカの手によって蹴られセラの手によって猿轡をはめられてた。
そんな様子を泣くでも怒るでもなく
只馬鹿を見る目で拘束される…確か第一王子だったかな?

「お前達、あの子連れてきてくれる?
後、娘も一人ね」

仲間の狼達がコクリと頷き拘束されている第一王子だの所へ向かった

「な、何をするつもりだ!?」

妃も娘と息子から離され泣き叫んでいた。
あ、セラが猿轡はめてる。

「嫌っ!離して!お父様助けて!!」

耳障りな声に、つい眉間にシワが寄る。

「お前達、ありがとう。」

連れてきてくれた狼達の頭を撫で
持ってきていた鞄からナイフを取り出す。
いや、自分の爪でも切れるけどナイフの方が切れ味悪いから、ねぇ?

「ねぇ、王様知ってた?
お前はさっき妃と息子達を助けてくれって言ったけどね
この場で姫様を傷つけていないのは彼だけなんだ。
頭のいい王様なら勿論この意味わかるよね?」

「っまさかっ!?お前あの子をイジメたのか!?」

「あの子とは誰なのですお父様!?
この方々は何が狙いなんですの!?兵士は何をしているのです!」

「ティアラ・チュードリッヒ。
お前が私が止めるのを鼻で嗤いイジメ続けた少女の事だよ。
只自分より美しいからと僻んでね。
お前は昔は可愛い女だったが
いつからか努力を怠り心まで酷く醜くなった
お前の心が醜すぎて顔も醜く見えるのだ。」

ゴミでも見るかの様に第一王子は妹を見て鼻で笑った。
そんな彼を見て驚愕する国王。

本当こんなんでどうやって国王やってたんだろ?
というか、コイツは今迄何を見てきたのだろう。

僕達だって離れたまま何もしてなかった訳じゃない。
定期的に骸が姫様を連れ各種族を周る時にしか会えない。
だからこそ、何か違和感を感じたらすぐ調べた。
家でのイジメの事だって知ってた。
けれど、骸は姫様を温室育ちにはしたくないと言った
姫様を檻に閉じ込め守り可愛がる事はとても簡単な事だけど、それじゃあいつか姫様はこの王子達のように全てが当たり前になる。優しくされるのも守られるのも当たり前だと。
国にいる間は出来る限り姫様の心のダメージを和らげるから僕達が会った時は可愛がってやってくれ、と
僕達が人形を愛してるのはでないなら今は手を出すなと言って介入を拒んだ。


その為の数年間の様子見であった。
そこで今回の事件が起きた。姫様は国から追放され何処かの土地に捨てられた。
流石にもう待つ事も出来なかったし、骸も流石にコレは駄目と腰を上げて今の事態に至る訳なんだけど…

姫様怪我とかしてないかな?
誰かに拐われて嫌な思いしてないかな?

僕達は、どれだけ探知に長けた仲間がいても
姫様が一度でも視界から外れてしまえば見つける事は出来ない。
姫様が視界から居なくなるだけで臭いを辿る事も魔力の痕跡を辿る事も何も出来ない。
この世界で姫様を探し出せるのは骸だけ。
姫様の手によって作られた…彼だけ。
かなり嫉妬するけど、あの日骸を作ったのは間違いなく赤子であった姫様の意思。

僕は頭がおかしくなる程姫様が好きで…好きで堪らないけど
姫様の意思を奪って自分のモノにしたいとは…思わない。
…こんなのは理性がある今だけだってわかってる。
だけど、理性を失えば僕は只の獣だ。
本能に身を任せれば僕は…いや、僕達は姫様を殺してしまうんだ。
少し力の加減を間違えてしまうだけでそれだけで簡単に傷つける事が出来てしまう。
だからこそ、この理性だけは…決して手放してはいけない。
例え誰かが理性を失ったとしても
僕は姫様を傷つける奴を廃除する。
例え…それが仲間でも…幼馴染でも。絶対に。

姫様…僕の願いはね、姫様が幸せで姫様が笑って暮らせる事なんだ。
例え姫様を幸せに出来るのが僕じゃなくとも…姫様が幸せなら僕も幸せだから。
だから…僕は今日も本能を抑え続ける。


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