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5章 新しい生活
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「姫様、もう大丈夫ですか?」
無理矢理ベッドに押し込められた私に、ジュディが心配そうに聞く。
草むしりに熱中し過ぎて貧血になり、座り込んだところをジュディに見られてしまったのだ。
「大袈裟ね。少しふらついただけでしょ。暑い太陽の下に長時間いることに慣れていなかったから。今まで昼間はあまり外に出なかったものね」
体を起こし、ジュディから冷たい水をもらう。
「もう、心配させないでくださいね。倒れ込む姫様を見たときのわたしの気持ちをわかってください」
真っ青な顔で駆け寄ってきたジュディを思い出す。
「ほんとうにごめんなさい」
「ところで姫様、その格好はなんなんですか?」
私が大丈夫とわかり、安心したジュディは、お説教モードに舵を切る。
「あ、そうそう!ジュディ、王宮に行ったばかりで申し訳ないけど、物資の申請に言ってもらえないかしら?畑を作りたいと思うの!」
「…まさか、ご自分で?」
「もちろん!」
「だからお仕着せを?」
「…そう。働きやすいように…。でもね、最初はちゃんと自分の服の中から動きやすい服を探したのよ?でも、なかったから。それでこの服が余ってるのを思い出してね、それで着替えたらなかなか似合うな~なんて」
「思いません!」
照れながら自画自賛をしていたらバッサリ切られた。
「姫様みたいな色が白くて華奢なメイドはいません。どう見てもコスプレです」
「コスプレってなあに?」
「遊びで自分の職業以外の制服を切ることです」
「まあ、ひどい!遊びじゃないわ。お菓子や料理に使う、野菜やハーブを作りたいのよ」
「だいたい!そんな格好でいるところを見られたらどうするんです?」
「こんなお城の端っこに、誰が来るの?」
必要物資は、今はジュディがカートで運ぶから、本当に人は全然来ない。
「それに、この格好を見られると何が困るの?だって、所詮人質だからいるだけでいいわけだし、華美なドレスで遊び呆けている方が反感買わない?」
ぐっ、とジュディは押し黙り、それから観念したように息を吐き出した。
「はぁ。わかりました。お仕着せで動き回ってもいいです。よく考えたら、走り回って裾に足を引っ掛けて転ぶより、お仕着せで動いていた方が怪我も少ないでしょう」
「ほんとにいいの?ありがとう、ジュディ。大好きよ」
微笑んでジュディを見ると、ぽっとジュディは赤くなった。大好きって言葉に照れてしまったらしい。ジュディかわいい。
こうして、私はジュディに許可をもらい、お仕着せで働くことになった。
お仕着せって素晴らしい…!(二度目)
お掃除の時もスカートの裾を捌かなくていいし、何より汚れが目立たない…!
夕刻になると、ジュディとふたりで夕食を作る。
もちろん、二人しかいない離宮で食事をするので、私とジュディは同じ食卓につく。
本来なら侍女と主人が同じテーブルにつくなどありえないことだが、私たちは特例だ。
異国の地にたった二人きりなのだし、この暮らしている離宮の中でもふたりきりなのだから。
できたての食事をふたりで取っていると、ジュディが昼間に本宮であったことを話してくれた。
「ここから本宮まで結構歩きますが、本宮に着いてから王太子の執務室までもかなり長いんですよ」
「フレッド様には会えたの?」
「フレッド様って、偉い人なんですね。取り次ぎ取り次ぎで結局合わせてもらえませんでした。そりゃ、王太子の側近ですもんね。もしかしたら、クッキーもお手に渡らなかったかもと、不安に、なります」
「そう。でもそれならそれで仕方ないわ。私のお菓子の評価を覆せないのは残念だけど」
シチューをスプーンで口に入れる。
お菓子だけでなく、お料理もうまくなったんだけどな。
披露する相手はジュディだけ。
ちょっと寂しい。
「あ、あと昼間言っていた手紙の件ですが、こちらからボナールへ送ることも可能ですし、ボナールからの手紙を受け取ることも可能ですって。検閲は入るらしいですけど、ランバラルド王国に知られてまずい内容に書くこともないでしょうから、たいした問題ではないですよね。明日、庭に巻く種の申請をしに行きますが、もし今夜手紙を書くなら持っていきますよ」
「ぜひお願い。マリーとアーサーに書くわ。あと、申請する種はハーブをお願い。物語でお姫様が飲んでたミントティーを飲んでみたいのでミントと、あとは育てやすそうなものを何種類か」
「かしこまりました」
次の日は、朝からお仕着せをして働いた。
掃除と洗濯と夕飯の下ごしらえを分担してやる。
廊下の壺を磨いていると、ジュディから声をかけられた。
「姫様、わたしは本宮まで種の申請に行ってきますね。姫様とわたしが書いた手紙も出してきます」
「うん。行ってらっしゃい」
仕事に対する年季が違うからなのか、いつもジュディの方が私より早く終わる。
う~、私も早く一人前のメイドになりたいわ!
掃除が終わり手が空いたので、畑にする予定の庭へと向かった。
昨日、結構がんばって雑草を取ったけれど、また少し残っていたので、それをやってしまおうと思ったのだ。
スコップを片手に庭へと出る。
土を掘り起こして雑草を抜いて行く。
この辺りにハーブを植えよう。
あと、プチトマトも育ったら可愛いよね。
お花は、玄関に近いところに植えたいな。
それから…。
妄想の中で家庭菜園と家庭花壇を思い浮かべてニヤニヤしていると、不意に声をかけられた。
「あれ?キミ、もう一人の侍女さん?シャーロットちゃんとジュディちゃんはどこかな?」
振り返るとフレッド様が立っていた。
無理矢理ベッドに押し込められた私に、ジュディが心配そうに聞く。
草むしりに熱中し過ぎて貧血になり、座り込んだところをジュディに見られてしまったのだ。
「大袈裟ね。少しふらついただけでしょ。暑い太陽の下に長時間いることに慣れていなかったから。今まで昼間はあまり外に出なかったものね」
体を起こし、ジュディから冷たい水をもらう。
「もう、心配させないでくださいね。倒れ込む姫様を見たときのわたしの気持ちをわかってください」
真っ青な顔で駆け寄ってきたジュディを思い出す。
「ほんとうにごめんなさい」
「ところで姫様、その格好はなんなんですか?」
私が大丈夫とわかり、安心したジュディは、お説教モードに舵を切る。
「あ、そうそう!ジュディ、王宮に行ったばかりで申し訳ないけど、物資の申請に言ってもらえないかしら?畑を作りたいと思うの!」
「…まさか、ご自分で?」
「もちろん!」
「だからお仕着せを?」
「…そう。働きやすいように…。でもね、最初はちゃんと自分の服の中から動きやすい服を探したのよ?でも、なかったから。それでこの服が余ってるのを思い出してね、それで着替えたらなかなか似合うな~なんて」
「思いません!」
照れながら自画自賛をしていたらバッサリ切られた。
「姫様みたいな色が白くて華奢なメイドはいません。どう見てもコスプレです」
「コスプレってなあに?」
「遊びで自分の職業以外の制服を切ることです」
「まあ、ひどい!遊びじゃないわ。お菓子や料理に使う、野菜やハーブを作りたいのよ」
「だいたい!そんな格好でいるところを見られたらどうするんです?」
「こんなお城の端っこに、誰が来るの?」
必要物資は、今はジュディがカートで運ぶから、本当に人は全然来ない。
「それに、この格好を見られると何が困るの?だって、所詮人質だからいるだけでいいわけだし、華美なドレスで遊び呆けている方が反感買わない?」
ぐっ、とジュディは押し黙り、それから観念したように息を吐き出した。
「はぁ。わかりました。お仕着せで動き回ってもいいです。よく考えたら、走り回って裾に足を引っ掛けて転ぶより、お仕着せで動いていた方が怪我も少ないでしょう」
「ほんとにいいの?ありがとう、ジュディ。大好きよ」
微笑んでジュディを見ると、ぽっとジュディは赤くなった。大好きって言葉に照れてしまったらしい。ジュディかわいい。
こうして、私はジュディに許可をもらい、お仕着せで働くことになった。
お仕着せって素晴らしい…!(二度目)
お掃除の時もスカートの裾を捌かなくていいし、何より汚れが目立たない…!
夕刻になると、ジュディとふたりで夕食を作る。
もちろん、二人しかいない離宮で食事をするので、私とジュディは同じ食卓につく。
本来なら侍女と主人が同じテーブルにつくなどありえないことだが、私たちは特例だ。
異国の地にたった二人きりなのだし、この暮らしている離宮の中でもふたりきりなのだから。
できたての食事をふたりで取っていると、ジュディが昼間に本宮であったことを話してくれた。
「ここから本宮まで結構歩きますが、本宮に着いてから王太子の執務室までもかなり長いんですよ」
「フレッド様には会えたの?」
「フレッド様って、偉い人なんですね。取り次ぎ取り次ぎで結局合わせてもらえませんでした。そりゃ、王太子の側近ですもんね。もしかしたら、クッキーもお手に渡らなかったかもと、不安に、なります」
「そう。でもそれならそれで仕方ないわ。私のお菓子の評価を覆せないのは残念だけど」
シチューをスプーンで口に入れる。
お菓子だけでなく、お料理もうまくなったんだけどな。
披露する相手はジュディだけ。
ちょっと寂しい。
「あ、あと昼間言っていた手紙の件ですが、こちらからボナールへ送ることも可能ですし、ボナールからの手紙を受け取ることも可能ですって。検閲は入るらしいですけど、ランバラルド王国に知られてまずい内容に書くこともないでしょうから、たいした問題ではないですよね。明日、庭に巻く種の申請をしに行きますが、もし今夜手紙を書くなら持っていきますよ」
「ぜひお願い。マリーとアーサーに書くわ。あと、申請する種はハーブをお願い。物語でお姫様が飲んでたミントティーを飲んでみたいのでミントと、あとは育てやすそうなものを何種類か」
「かしこまりました」
次の日は、朝からお仕着せをして働いた。
掃除と洗濯と夕飯の下ごしらえを分担してやる。
廊下の壺を磨いていると、ジュディから声をかけられた。
「姫様、わたしは本宮まで種の申請に行ってきますね。姫様とわたしが書いた手紙も出してきます」
「うん。行ってらっしゃい」
仕事に対する年季が違うからなのか、いつもジュディの方が私より早く終わる。
う~、私も早く一人前のメイドになりたいわ!
掃除が終わり手が空いたので、畑にする予定の庭へと向かった。
昨日、結構がんばって雑草を取ったけれど、また少し残っていたので、それをやってしまおうと思ったのだ。
スコップを片手に庭へと出る。
土を掘り起こして雑草を抜いて行く。
この辺りにハーブを植えよう。
あと、プチトマトも育ったら可愛いよね。
お花は、玄関に近いところに植えたいな。
それから…。
妄想の中で家庭菜園と家庭花壇を思い浮かべてニヤニヤしていると、不意に声をかけられた。
「あれ?キミ、もう一人の侍女さん?シャーロットちゃんとジュディちゃんはどこかな?」
振り返るとフレッド様が立っていた。
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