人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉

文字の大きさ
46 / 187
7章 人質姫のもう一つの生活

4

しおりを挟む
「それで、人質な側室を見て、満足されましたでしょうか?」

ぴく。
また眉毛が動く。
神経質そうな方だけど、眉根が寄せられていてもその顔は綺麗なままだ。
男でそんなに綺麗なのって、反則だわ。


「…あの畑を、見ていた」
「はい?」
「あそこが畑になる前から見ていた。お前が土をおこし、タネをまき、あるいは球根を植え、水を撒く姿を、毎日ではないが眺めていた」

…覗き見?

「お前は気付いているか?本宮の目の前の花壇と、お前の畑の成長の違いを」
ギルバート様は身を乗り出してくる。
近い近い。

「…違いますか?」
少し後ろに姿勢を直す。
「違う!お前が育てた方は成長速度が全然違う!なんだ、あのトマトは!もう食えそうじゃないか」
「あら、私ってば庭師の才能があったのかもしれないですね」

ふっ、
ギルバート様に鼻で笑われた。
「庭師の才能はないだろう。植物は育っているが、なんだあのセンスのない花の配置は」
いいですけど…失礼な人ですね。
ちょっと口を尖らせる。

「そう膨れるな。庭師の才能はないが、きっと癒しの才能はある」
「なんですか?それ」
「ずっと見ていたと言っただろう。ここ、離宮だけ時間の流れがおかしい気がする。例えば、ここの侍女だ」
「ジュディがどうかしましたか?」
「普通の侍女より仕事が多いはずなのに、いつも元気だ」
…それは時間の流れではなく、ジュディの体力の問題なのでは…。

「それにこの菓子だ。うまい!」
「それはありがとうございます」
褒められれば単純に嬉しい。
「力が湧いてくるようだ」
「はあ…」

ギルバート様は身を乗り出して力説していた姿勢を元に戻す。
「つまり、何がいいたいかと言うと、」
「言うと?」
私がギルバート様の目を覗き込むと、ギルバート様は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「お前と話したかったんだ」

…これは…なんと可愛らしい…!!
美少年が照れて赤くなって口を尖らせる。
これ以上の破壊力を見たことはない。
「あの、その前に焼いたクッキーもありますのよ。召し上がりますか?」
ギルバート様は、顔を赤くしてそっぽを向いたままで答えた。
「…食う」

私はいそいそと戸棚にしまってあったクッキーを取り出してギルバート様の元へと急ぐ。

「さあ、どうぞ。召し上がれ」
「あぁ」
ギルバート様は不貞腐れたようにそっぽを向いてクッキーを食べた。

「美味しいですか?」
「あぁ、うまい」
「また、焼いておきますから、食べに来てくださいね」
私の言葉に反応して、ギルバート様は勢いよくこちらを向いた。
「いいのか!?」
「もちろんですよ」
「こんな、覗きのようなことをしていたわたしだぞ」
「だって、ギルバート様は私とお話ししたかっただけでしょう?そんなこと、気にしません」
微笑んで、紅茶のおかわりを注ぐと、ギルバート様は嬉しそうな表情をした。
でも、すぐに怒ったような顔をして。
「お前もわたしと話したいんだな。よし、また来てやる」
と、腕を組んで偉そうに言った。


こうして、私のお友達は少しずつ増えて行く。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

今宵、薔薇の園で

天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。 しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。 彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。 キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。 そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。 彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

離婚したいけれど、政略結婚だから子供を残して実家に戻らないといけない。子供を手放さないようにするなら、どんな手段があるのでしょうか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 カーゾン侯爵令嬢のアルフィンは、多くのライバル王女公女を押し退けて、大陸一の貴公子コーンウォリス公爵キャスバルの正室となった。だがそれはキャスバルが身分の低い賢女と愛し合うための偽装結婚だった。アルフィンは離婚を決意するが、子供を残して出ていく気にはならなかった。キャスバルと賢女への嫌がらせに、子供を連れって逃げるつもりだった。だが偽装結婚には隠された理由があったのだ。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

処理中です...