人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉

文字の大きさ
107 / 187
14章 告白のその後で

6

しおりを挟む
忙しい日々を送っているうちに、刻々と夜会の日は近付いてくる。

他国の令嬢たちは、夜会当日の準備もたくさんあるので、数日前からランバラルドに滞在できるように計らっている。
パラパラと、他国から令嬢たちがランバラルド城に入場していく。
そうすると、オレの仕事は外交一色になる。

これで生涯の伴侶が見つかれば、婚姻の上、地ならしをして数年もしないうちに即位することになるだろう。

各国の令嬢はそれがわかっているからか、到着して城に慣れると、与えた部屋やガゼボ、温室の使用許可を取り、お茶会を開いてオレを招待する。

今日もオレとフレッドは、ガゼボでエルシアの第3王女とお茶を飲んでいる。

エルシアの王女ティアナ姫は、オレより3つ年下の15歳。
だが、さすがに王女としてきちんとした教育を受けてきたのだろう。
落ち着いていて、15歳とは思えない。
ロッテの方が年下と言っても納得ができるな……。

豊かな赤みがかったブロンドの髪を縦にロールさせて、マーメイドラインのドレスを身に纏っている。
薄い腰が幼さを強調する。

テーブルには王女とオレとフレッドの3人が着いていた。
「とても素敵な庭園ですわね。ランバラルドは植物の研究にも力を入れていると聞きますわ。花は人の心を癒やすことができますし、穀物は国を豊かにいたします。さすがは大国ランバラルドですわ」
いや、うちは大国と言われるほどではないんだけど……。
中堅国より少し国土が広いだけだ。

オレがうまく返せないでいると、フレッドが助け舟を出してくれる。
「エルシアでは産業に力を入れていると聞きますよ。たくさんの技術者がいるとうかがっております。先日お贈りいただいた揺れが少ない馬車は、国王も素晴らしい技術だと驚いておられましたよ」
ティアナ姫は扇を口元にあて、ほんのり微笑む。
「あれは我が国でも最高の逸品ですわ。ですが、今はディデアの鉱山が封鎖されておりますでしょ? 鉄を輸入するのが難しくなっておりまして、早く開放していただけるのを心待ちにしておりますの」

なるほど……。
ボナールからディデアの鉱山をもらい受けた我が国と、手を組むとエルシアの産業が栄えると言うわけか。
エルシアには技術者は沢山いるが、多量の鉄を使うには、鉱山が必要だ。

ぼんやりと話に耳を傾けていると、ティアナ姫がオレに話を振る。
「わたくし、夜会当日の衣装を決めかねておりますの。ライリー王子は、どんなドレスがお好みですの?」
「えっ、あぁ、女性らしい可愛らしいドレスがいいですね」
「まあ……!」
ティアナ姫はあきれたような表情でオレを見た。

フレッドが慌ててフォローする。
「お、王子が言う女性らしいと言うのは、優しさを表すような、そんなドレスと言うことですよねっ! フリルがたくさん付くような、そんなドレスが王子はお好みです。ねっ、王子!」
よくわからないが、失言をしたらしい。
オレはフレッドに同意する。
「もちろんです。フリルのたくさん付いた、華やかなドレスがいいですね」

やっと、ティアナ姫の表情が和らぐ。
「そうでしたの。では、フリルとレースのたくさん付いたドレスを選びましょう」

その後は、庭園に咲く花の話をしたり、青空に白い屋根のガゼボは綺麗に映える等、他愛もないおしゃべりをして、お茶会はお開きになり、ティアナ姫を見送った。

ティアナ姫の姿が見えなくなると、フレッドがどっと疲れたように、テーブルに突っ伏した。
「王子~、ちゃんと諸外国のマナーの勉強した?」
オレは残った茶菓子のマドレーヌを口に入れながら返事をする。
「王太子教育でマナーは学んだぞ」
「じゃ、なんであんなこと言うの? 女性らしいドレスって言うのは、エルシアでは「性的な目で見ています」って事になるんだぞ」
「……は?」
「あそこは技術者に女性も多い。男性らしく、女性らしくと言う言葉はあんまり使っちゃいけないんだ。男女平等を謳う政党が出てきたくらいの新進国なんだから。可愛らしいって付け加えてくれてたからなんとかなったけど、オレが渡した重要項目だけでも目を通しておいてよね」

まったく、フレッド達には頭が上がらない……。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】見返りは、当然求めますわ

楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。 この国では、王太子が10歳の時に婚約者が二人選ばれ、そのうちの一人が正妃に、もう一人が側妃に決められるという時代錯誤の古いしきたりがある。その伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかしーー 「私の正妃は、アンナに決めたんだ。だから、これからは君たちに側妃の座を争ってほしい」 微笑ながら見つめ合う王太子と子爵令嬢。 正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。 ※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))

結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。 そして、屋敷から出ると決め 計画を実行したら 皮肉にも失敗しそうになっていた。 そんな時彼に出会い。 王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす! と、そんな時に聖騎士が来た

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

死を望まれた王女は敵国で白い結婚を望む。「ご安心ください、私もあなたを愛するつもりはありません」

千紫万紅
恋愛
次期女王として王位継承が内定していたフランツェスカ。 だが戦況の悪化を理由に父王に争いの最前線に送られた。 それから一年、命からがら王都へ戻った彼女を待っていたのは労いの言葉ではなく、敵国・シュヴァルツヴァルトの王太子への輿入れ命令。 しかも父王は病弱な異母妹アリーシアを王妃に据え、フランツェスカの婚約者レナードを王にするという。 怒りと絶望の中フランツェスカはかつて敵将であったシュヴァルツヴァルト王太子・フリードのもとへお飾りの妻として嫁ぐことを決意する。 戦地での過去を封じ、王族としての最後の務めを果たすために。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

処理中です...