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16章 想いの行方
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「シャーロットとなんの話が?」
ギルバートがセリーヌ王女を睨んだ。
「何かないと会うこともできないんですの? 血を分けた姉妹ですのに」
セリーヌ王女はわざとらしく目を潤ませる。
「シャーロットは人質だ。そうそう、ボナールの人間と会わせることはできない」
ギルバートはきっぱりと断った。
セリーヌ王女は、今度はオレの方を見る。
「オレもギルバートと同じことしか言いませんよ」
先に釘を刺す。
「シャーロットも側妃だったり人質だったり、忙しい立場ですこと。では、結構ですわ。ギルバート様。温泉、期待していますわ。新しいドレスで、ゆっくり寛ぐのが楽しみですこと。では、ここで失礼いたします」
セリーヌ王女は気分を害したようで、早々に席を立って本宮の方へ帰って行った。
姿が見えなくなったところで、ギルバートが口を開く。
「ドレス、支払いは王家につけとくぞ」
「なんの話だ?」
「さっきセリーヌ王女が言っていただろう。新しいドレスで寛ぐのが楽しみだと。昨日、夜会の会場から追い出す際に、必要な物があれば言えといって追い出したら、風呂上りに新しいドレスを要求してきた。後で何着かプレタポルテのドレスを持って来させて、セリーヌ王女の身体に合わせて仕上げさせるつもりだ」
ギルバートはセリーヌ王女が居なくなったところで、茶菓子に手を付ける。
「やっぱり、パウンドケーキはシャーロットの作るものの方がわたしの口には合うな。城のパティシエが作るものは絶品だが、シャーロットの方が慣れた味になったようだ」
「ボナールは王女に新しいドレスも買ってやれないほど、金がないのか……。って、ギルバート、なんだと?」
「何がだ?」
「なんでお前がシャーロットのパウンドケーキの味に慣れ親しんでるんだよ」
「ふん。昨日も言ったが、わたしはシャーロットの手助けをしていたんだぞ。マリーとアーサーは、わたしがいたから無事にランバラルドへ来れたようなものだ。パウンドケーキくらい飽きるほど食べても不思議ではあるまい。まあ、飽きないが」
ドヤ顔でギルバートに言われてムカついたが、これからオレもシャーロットにはたくさん作ってもらうさと、心を落ち着かせた。
ギルバートと別れ、執務室へと足を運ぶと、ディリオンとコンラッドが、机に向かっていた。
「ディリオン、コンラッド、昨日はお疲れ。フレッドはどうした?」
オレが声をかけると、ディリオンが顔を上げてこちらを見た。
「フレッドは他国の来賓の相手をしている。今後の観光や慰問の手配はほとんどあいつがやっているからな」
そしてすぐに書類に視線を戻す。
フレッドに社交部分を任せてしまっているが、後でオレも挨拶に向かわないと。
オレも自分の机に座ろうとすると、コンラッドが言いにくそうにオレを見た。
「なんか言いたいことでもあるのか?」
「ああ、シャーロット殿下のことだが……」
「なんだ?」
「実は、何件かお茶会の誘いが来ている。他にも、城の使用人から、側妃に会うにはどうしたらいいか聞かれているということと、離宮の護衛から「そんなに厳重に守っているのは側妃か」と聞かれて困ったと報告が上がっている」
離宮まで追いかけるとは、どこのどいつだ。
最後まで未練のありそうだったあいつか?
「コンラッド、茶会は全て断ってくれ。まだ正式に公表していないことを理由にしとけ。あと、離宮の方は、心配なら護衛の人数を増やしてもいいぞ。……いっそ、本宮の王族居住エリアに引っ越させるか……」
オレのつぶやきを聞いて、ディリオンが顔を上げる。
「王族エリアの、どこの部屋を使うのだ?」
「そりゃ、妃なんだから、オレの隣だろう」
「バカを言うな。貴様の隣は正妃の部屋だ。続き部屋になっていて、間のドアは行き来自由だろうが。敵国の人質を住まわせる部屋ではない」
「敵国って……シャーロットはオレを殺したりしないよ」
「そうであったとしても、実際の正妃でない者を隣の部屋に入れるのは良くないだろう」
「隣が一番護衛しやすいんだがなー」
「ふん。一番危ないオオカミからは守れそうにないがな」
ディリオンはちらと横目でオレを見て、また書類に視線を戻した。
誰がオオカミだ。誰が。
ギルバートがセリーヌ王女を睨んだ。
「何かないと会うこともできないんですの? 血を分けた姉妹ですのに」
セリーヌ王女はわざとらしく目を潤ませる。
「シャーロットは人質だ。そうそう、ボナールの人間と会わせることはできない」
ギルバートはきっぱりと断った。
セリーヌ王女は、今度はオレの方を見る。
「オレもギルバートと同じことしか言いませんよ」
先に釘を刺す。
「シャーロットも側妃だったり人質だったり、忙しい立場ですこと。では、結構ですわ。ギルバート様。温泉、期待していますわ。新しいドレスで、ゆっくり寛ぐのが楽しみですこと。では、ここで失礼いたします」
セリーヌ王女は気分を害したようで、早々に席を立って本宮の方へ帰って行った。
姿が見えなくなったところで、ギルバートが口を開く。
「ドレス、支払いは王家につけとくぞ」
「なんの話だ?」
「さっきセリーヌ王女が言っていただろう。新しいドレスで寛ぐのが楽しみだと。昨日、夜会の会場から追い出す際に、必要な物があれば言えといって追い出したら、風呂上りに新しいドレスを要求してきた。後で何着かプレタポルテのドレスを持って来させて、セリーヌ王女の身体に合わせて仕上げさせるつもりだ」
ギルバートはセリーヌ王女が居なくなったところで、茶菓子に手を付ける。
「やっぱり、パウンドケーキはシャーロットの作るものの方がわたしの口には合うな。城のパティシエが作るものは絶品だが、シャーロットの方が慣れた味になったようだ」
「ボナールは王女に新しいドレスも買ってやれないほど、金がないのか……。って、ギルバート、なんだと?」
「何がだ?」
「なんでお前がシャーロットのパウンドケーキの味に慣れ親しんでるんだよ」
「ふん。昨日も言ったが、わたしはシャーロットの手助けをしていたんだぞ。マリーとアーサーは、わたしがいたから無事にランバラルドへ来れたようなものだ。パウンドケーキくらい飽きるほど食べても不思議ではあるまい。まあ、飽きないが」
ドヤ顔でギルバートに言われてムカついたが、これからオレもシャーロットにはたくさん作ってもらうさと、心を落ち着かせた。
ギルバートと別れ、執務室へと足を運ぶと、ディリオンとコンラッドが、机に向かっていた。
「ディリオン、コンラッド、昨日はお疲れ。フレッドはどうした?」
オレが声をかけると、ディリオンが顔を上げてこちらを見た。
「フレッドは他国の来賓の相手をしている。今後の観光や慰問の手配はほとんどあいつがやっているからな」
そしてすぐに書類に視線を戻す。
フレッドに社交部分を任せてしまっているが、後でオレも挨拶に向かわないと。
オレも自分の机に座ろうとすると、コンラッドが言いにくそうにオレを見た。
「なんか言いたいことでもあるのか?」
「ああ、シャーロット殿下のことだが……」
「なんだ?」
「実は、何件かお茶会の誘いが来ている。他にも、城の使用人から、側妃に会うにはどうしたらいいか聞かれているということと、離宮の護衛から「そんなに厳重に守っているのは側妃か」と聞かれて困ったと報告が上がっている」
離宮まで追いかけるとは、どこのどいつだ。
最後まで未練のありそうだったあいつか?
「コンラッド、茶会は全て断ってくれ。まだ正式に公表していないことを理由にしとけ。あと、離宮の方は、心配なら護衛の人数を増やしてもいいぞ。……いっそ、本宮の王族居住エリアに引っ越させるか……」
オレのつぶやきを聞いて、ディリオンが顔を上げる。
「王族エリアの、どこの部屋を使うのだ?」
「そりゃ、妃なんだから、オレの隣だろう」
「バカを言うな。貴様の隣は正妃の部屋だ。続き部屋になっていて、間のドアは行き来自由だろうが。敵国の人質を住まわせる部屋ではない」
「敵国って……シャーロットはオレを殺したりしないよ」
「そうであったとしても、実際の正妃でない者を隣の部屋に入れるのは良くないだろう」
「隣が一番護衛しやすいんだがなー」
「ふん。一番危ないオオカミからは守れそうにないがな」
ディリオンはちらと横目でオレを見て、また書類に視線を戻した。
誰がオオカミだ。誰が。
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