人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉

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19章 戴冠

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早朝、私たちは2台の馬車に分かれてランバラルド城を出発した。

1台目にはライリー殿下と側近、2台目には私とマリー、ジュディが乗っていた。

「ねぇ、マリーはランバラルドに居てくれてよかったのよ?」
ボナールで命を狙われたマリーだ。
私はボナールへ戻ることに反対していた。

「いいえ。もう姫様のお側を離れません。第一、ボナールはわたしが生きていると知っても、手出しができないでしょう。ランバラルドの側妃付きの侍女としてお城に上がるのです。それに、わたしがランバラルドに渡った時に、秘密のすべてを話されていると思うのが普通でしょう。もう、危険をおかしてまでわたしの命を狙う必要はありません」

ジュディも言う。
「それに、姫様。アーサー兄さんもいます。それに、わたしもいますから。姫様はもちろん、母さんもちゃーんと守ります」
ドンっと胸を叩くジュディ。
外には護衛でアーサーも居る。

「そうね。みんな、ありがとう」

こうして、私たちはボナールへと急ぐのだった。


来るときはのんびりと5日かけてやって来たが、今度の行程は4日でボナールに到着するように組まれている。

宿泊も着いたら食事をして、入浴が済んだらすぐに寝なくては、翌朝の出発時間に待ち合わない。
ライリー殿下の馬車に乗っていた面々も、疲れが滲み出ていた。
特に、コンラッド様は、この度の誘拐奴隷売買の解放のため、帝国まで行っていたそうで、帰国してからすぐの出発だったので、疲れは取れないようだった。

明日はいよいよボナール城へ到着するという日、やっと宿泊施設に着いて、入浴も済ませてホッとして果実水を飲んでいた時、ドアがノックされた。

ジュディが応対に出ると、やってきたのはフレッド様だった。

「こんばんは。シャーロットちゃん。体の調子はどう?」
にこやかに言うフレッド様だが、目の下にうっすらと疲れが見える。
「フレッド様こそ、大丈夫ですか? 私たちは何もせずに馬車に揺られているだけですが、フレッド様たちはボナール到着後の話し合いを馬車の中でしていると聞いています。夜は早くお休みになってくださいませ」
「うん……」

フレッド様は少し微笑む。
「シャーロットちゃん、オレ、シャーロットちゃんとボナールに残ろうかと思うんだ」
「まあ! 確かにフレッド様にいていただけたら心強いですが、フレッド様がお残りになられたらライリー殿下がお困りになるのではないでしょうか?」
「ん、王子は困るだろうね。シャーロットちゃんにオレみたいなのが近付いたら」
「そうですよね。フレッド様はライリー殿下の側近ですもの。いらっしゃらなければ困りますわ。私もみなさんとお勉強したのですもの。ちゃんとやって見せます。ですから、私がランバラルドへ帰るのを、待っていてくださいませ」

フレッド様はより一層笑みを深くする。
「そう言う意味じゃないから、その辺は大丈夫だよ。まあ、ボナールへ着いてからの話し合いにもよるけどね」
「はい。明日はよろしくお願い致します」
私が頭を下げると、フレッド様がポンポンと、私の頭を撫でた。
「じゃ、おやすみ」
「は、はい。おやすみなさいませ」

私はフレッド様の背中を見送っていた。

「姫様、フレッド様と2人っきりで会ったらダメですよ」
やり取りの様子を見ていたアーサーが後ろからきて、ドアを閉める。
「あら、今もみんないるじゃない」
部屋の中には、アーサーは護衛だからもちろん、マリーやジュディもいる。
そう言っても、アーサーは曖昧に笑みを浮かべるだけだった。


さあ。
明日はいよいよボナール城へ到着する。
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