もう一度あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜

雪野 結莉

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番外編 ローゼリア

29

翌月、戴冠式の時とは違い、少ない人数でルーク達はやってきた。

今回はルークが来るかわからなかったが、結局来たのは首相のルークだった。
だが、副首相のオリバーは同伴していなかった。

そして、部屋も謁見の間は使わず、応接室を使うと言われた。
まあ、多少の歳の差はあれど、同年代同士の会談ということなのだろうと、応接室のソファでレオン様と2人で待っていると、2人の侍従を連れてルークは現れた。

ルークはゆっくりと挨拶をし、わたくし達の向かいのソファに腰を下ろす。
侍従はルーク側のソファの後ろに立った。

何の気なしに侍従の顔を見て、わたくしは動けなくなった。

頭髪は全て白くなり、顔は日焼けをしているのに頬はやせている壮年の侍従は…。

「お、とうさま…」

もう1人の方の侍従を見ると、すっかり姿は変わっているがお兄様だった。
お兄様も日に焼けているが、こちらは腕にも筋肉がついているようで、しっかりした体躯をしていた。

2人とも、10年分歳を取っていたがとても元気そうで、すぐにも飛びついてしまいそうになるが、わたくしはこの国の王妃で、相手はルークの侍従なのだ。
膝の上でぐっと両手を握りしめた。

わたくしの様子を見て、レオン様が話し始める。

「ルーク殿、オレの願いを聞き入れてくれて、感謝する」
「いえ、オレもそろそろ親子なのだし会ってもいい時期だと思っていました」

レオン様がルークに頼んで、お父様とお兄様をここに連れてきてくださったのだ。

「ローゼリア、さま。お二人はあれから国民のために、身を粉にして働いてくれているんだ。隣国ガージナルとの国境付近で、領地をおさめ、時には交渉の場について。時には争い事に巻き込まれることもあったが、ローゼリアさまと同じように、国民のために本当によくやってくれた。だから、今回、政府から特別ボーナスが出たんだよ。ペルジャ国までの小旅行が、ボーナスだけどな」

ルークが笑う。
わたくしや、お父様、お兄様に笑顔を向けてくれる。

わたくし達を許した訳ではないだろうに。
それなのに、肉親の情を考えてくれたのだ。

「恩に着る。ルーク、どの。ありがとうございます」

わたくしは深く頭を下げた。

「長い時間は会わせてあげられんが、1時間ほどなら、オレは席を外そう」

ルークは立ち上がり、部屋を出て行こうとするが、ドアを開けるとリアムとエリーがそこに立っていた。

「お父様、お呼びですか? エリーも連れてきましたけど…」
リアムは客人が部屋にいるのを見て、言葉が尻すぼみになった。
おそらく、大人の話を邪魔してはいけないと思ったのだろう。

「リアム王子殿下、エリー王女殿下。お会いできて光栄です。わたしはルーク・デイヴィスと言って、殿下方のお母様の産まれた国の者です。わたしは席を外すので、どうぞごゆっくりなさってください」

ルークがしゃがんでリアムに目を合わせて挨拶すると、ルークを警戒したリアムはエリーを背中に隠した。

「ルーク殿、こちらこそ、お会いできて光栄だ。退出されるのなら、侍従も連れて行くがいい」
「いえ、侍従は少し用があるので残りますが、悪い人ではありません。優しくしてやってください」

ルークは立ち上がり礼をすると、部屋を出て行った。

「お父様、お母様!」

リアムとエリーは、侍従の振りをしているお父様とお兄様を警戒してこちらに走ってきた。

お父様はシワシワの目尻に涙を溜めて、こちらを見ている。

「ローゼリア、その子達がお前の息子と娘かい?」
「はい、お父様。この子達が、わたくしが命に変えても守りたい、自慢の息子と娘です」

不思議そうに、お父様とお兄様を見るリアム。

「おじい、さま?」
「そう、そうですよ。おじいさまとおじさまです」

ゆっくりとお父様のところへ行き、リアムはじっとお父様とお兄様を見つめた。

「ほんとだ! 目元がお母様と同じです!」

そして、2人に抱きついてくれました。

泣きながらリアムを抱きしめるお父様を、お兄様も男泣きをしながら、リアムごと抱きしめていた。

残念ながら、エリーは最後まで打ち解けることはなかったが、怖る怖る抱っこはさせてくれた。

ルークが戻るまでの1時間、ぎこちないながらもわたくし達は笑顔に涙を浮かべて、再会を喜びあった。


ルークは戻ってくると、お父様とお兄様を連れて、そのまま帰路についた。

本当に、2人を連れてきてくれただけだったのだ。
泊まりもできない強行軍、大変だったことだろう。



「レオン様、ありがとうございます。ルークに頼んでくださって。なかなか実現するのは難しかったでしょう?」

夜、2人きりの寝室で、レオン様に心からの感謝を伝える。

「うん、まあね。義父上と義兄上を国外へ出国させるのが大変だったみたいだね。でも、ルーク殿はがんばってくださった。首脳会談で、この2国間は強固な友情で結ばれて、今後もお互い優遇し合っていこうと話せたし、いいこともあったよ」

ニコニコと話すレオン様。
わたくしは本当に、この人と結婚できて幸せだ。



その後、お母様とお姉様とも話す機会を設けてくれた。
この2人とは、ペルジャ国で開催される舞踏会に出席することで手はずを整えてくれて、舞踏会の挨拶の合間のひと時だったが、お二人の元気なお顔も、見ることができたのだった。

これも、レオン様とルークが尽力してくれて叶ったことだとわたくしは知っている。
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