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8章 記憶
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ザワザワとする街中を、ルーク様と二人で歩く。
前世でも、こんな経験はなかった。二人きりで街に出るような……。
だって、わたしは子爵令嬢だったし、自由に外に出られる歳になる前に、死んじゃったから。
道の両脇には、いろんなお店があって楽しい。
今度、ぜひルーク様にうちのお店にきてもらいたいな。
ルーク様が興味を持ちそうな、変わったものがたくさんあるし。
お父さんが仕入れてくる物で、たまにお母さんがため息をついて「なんでいつもはセンスのいいものばかりなのに、たまにこうやって大ハズレを仕入れてくるのかしら」と言うほど、変わったものだ。
ルーク様がうちに来てくれた時のことを妄想して歩いていたら、何かがわたしにぶつかった。
すぐに、甲高い鳴き声がわたしの耳に入ってくる。
下を見ると、わたしの足元には、4.5歳くらいの男の子が、うつ伏せになって泣いていた。
走ってきた子どもと、わたしがぶつかったのだろう。
「あ~、ごめんね。お姉ちゃん、キミが走ってくるのに気がつかなかったよ」
わたしは男の子を立たせて、持っていたハンカチで涙を拭ってやる。
でも、男の子はまだ泣き止まない。
パンパンと半ズボンを叩くと、膝小僧から血が少し流れていた。
ちょっと、これは痛そうだな。
わたしは待ってくれているルーク様をちらりと見る。
ルーク様はキョロキョロと周りを見て、一軒のお店の中に入って行った。
ルーク様が居なくなったのを確認すると、わたしは男の子の膝に手をあてた。
スゥーっと撫でるようにすると、傷口が消える。
光の魔法は教会に行かないと施してもらえないし、割と高い寄付を払わなきゃいけないので、その魔法を見たことのある人はあんまりいない。
ましてや相手は子どもだ。
だから、大人たち、それにルーク様に見つからなければ、わたしが光の魔法も使えるとはバレないはず。
男の子は目を丸くして、膝を触っている。
そこへ、ルーク様が戻ってきた。
「水を浸したタオルをもらってきたが、子どもの足は大丈夫か? 傷口から菌が入るといけないから拭いてやれ」
ルーク様はタオルをわたしに渡す。
でも、血をきれいに拭いちゃうと、傷口が無いのがわかっちゃう。
わたしは自分の体で男の子を隠すようにして、タオルで男の子の膝を拭いてあげた。
「さ、これで大丈夫だから、お母さんのところへお帰り」
頭を撫でてやると、男の子は元気な声で返事をして、走って行った。
もちろん、ルーク様から見ると、わたしが影になって男の子が見えないような位置どりをして、男の子を見送った。
「うちの馬車で送って行ってもよかっのだが?」
「あれくらいの男の子なら遊んで転んだり擦りむいたりは普通ですよ。うちの弟もそうでしたもん。きっと、平気ですよ」
他についていた擦り傷も治したはずだから、どこも痛くないはずだし。
その後、わたしはルーク様とカフェに入り、美味しいホットケーキをルーク様にごちそうになった。
当然、わたしが作るものなんて、比べ物になりませんとも。
でも、もう少しくらいは、美味しく作れるように、がんばろう。
わたしが機嫌良く、帰りの馬車の窓から外を眺めていると
ルーク様がわたしに尋ねた。
「ニーナの属性はなんだ? なんの魔法が使える?」
「え? わたしですか? わたしは風の魔法ですよ」
わたしがニコニコと答えると、ルーク様はただ「そうか」とだけ呟いて、後は別棟に到着するまで、ルーク様はしゃべろうとはしなかった。
前世でも、こんな経験はなかった。二人きりで街に出るような……。
だって、わたしは子爵令嬢だったし、自由に外に出られる歳になる前に、死んじゃったから。
道の両脇には、いろんなお店があって楽しい。
今度、ぜひルーク様にうちのお店にきてもらいたいな。
ルーク様が興味を持ちそうな、変わったものがたくさんあるし。
お父さんが仕入れてくる物で、たまにお母さんがため息をついて「なんでいつもはセンスのいいものばかりなのに、たまにこうやって大ハズレを仕入れてくるのかしら」と言うほど、変わったものだ。
ルーク様がうちに来てくれた時のことを妄想して歩いていたら、何かがわたしにぶつかった。
すぐに、甲高い鳴き声がわたしの耳に入ってくる。
下を見ると、わたしの足元には、4.5歳くらいの男の子が、うつ伏せになって泣いていた。
走ってきた子どもと、わたしがぶつかったのだろう。
「あ~、ごめんね。お姉ちゃん、キミが走ってくるのに気がつかなかったよ」
わたしは男の子を立たせて、持っていたハンカチで涙を拭ってやる。
でも、男の子はまだ泣き止まない。
パンパンと半ズボンを叩くと、膝小僧から血が少し流れていた。
ちょっと、これは痛そうだな。
わたしは待ってくれているルーク様をちらりと見る。
ルーク様はキョロキョロと周りを見て、一軒のお店の中に入って行った。
ルーク様が居なくなったのを確認すると、わたしは男の子の膝に手をあてた。
スゥーっと撫でるようにすると、傷口が消える。
光の魔法は教会に行かないと施してもらえないし、割と高い寄付を払わなきゃいけないので、その魔法を見たことのある人はあんまりいない。
ましてや相手は子どもだ。
だから、大人たち、それにルーク様に見つからなければ、わたしが光の魔法も使えるとはバレないはず。
男の子は目を丸くして、膝を触っている。
そこへ、ルーク様が戻ってきた。
「水を浸したタオルをもらってきたが、子どもの足は大丈夫か? 傷口から菌が入るといけないから拭いてやれ」
ルーク様はタオルをわたしに渡す。
でも、血をきれいに拭いちゃうと、傷口が無いのがわかっちゃう。
わたしは自分の体で男の子を隠すようにして、タオルで男の子の膝を拭いてあげた。
「さ、これで大丈夫だから、お母さんのところへお帰り」
頭を撫でてやると、男の子は元気な声で返事をして、走って行った。
もちろん、ルーク様から見ると、わたしが影になって男の子が見えないような位置どりをして、男の子を見送った。
「うちの馬車で送って行ってもよかっのだが?」
「あれくらいの男の子なら遊んで転んだり擦りむいたりは普通ですよ。うちの弟もそうでしたもん。きっと、平気ですよ」
他についていた擦り傷も治したはずだから、どこも痛くないはずだし。
その後、わたしはルーク様とカフェに入り、美味しいホットケーキをルーク様にごちそうになった。
当然、わたしが作るものなんて、比べ物になりませんとも。
でも、もう少しくらいは、美味しく作れるように、がんばろう。
わたしが機嫌良く、帰りの馬車の窓から外を眺めていると
ルーク様がわたしに尋ねた。
「ニーナの属性はなんだ? なんの魔法が使える?」
「え? わたしですか? わたしは風の魔法ですよ」
わたしがニコニコと答えると、ルーク様はただ「そうか」とだけ呟いて、後は別棟に到着するまで、ルーク様はしゃべろうとはしなかった。
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