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11章 光を探して
6
「気になるところはやっぱりそれなのか? やきもちか?」
「違いますっ! ミラー子爵御子息様に恋愛感情は持ち合わせておりません! ただ、モテるのかなあって気になっただけです」
だって、あのオリバーお兄様だよ?
モテる?
ルーク様ならわかるけど。
「ミラー卿はモテるよ。美しいと言う顔立ちではないが、整っているし、体つきも騎士だけあって逞しい。何より、女性に対して優しい。どんな者から声を掛けられても、嫌な顔をせずに応対するしな」
へぇー。
知らなかった。
「では、どうして未だ独身なんでしょうね」
素直なわたしの疑問に、アロン様は苦い顔をする。
「ミラー卿は、兄上の支えとなっている。おそらく、討伐が終わるまでは結婚しないつもりであろう。討伐隊の中で、兄上の役割は知っているな? それに次いで命の危険に晒されるのが、副隊長だ。騎士団の中なら、隊長に次ぐ副隊長は人気のある花形の職務だが、討伐隊のそれは違う。兄上がなんらかの失敗をした場合、魔獣の相手だけをしている隊員よりも魔物を相手にする副隊長の方が、危険だからな。むしろ、兄上と共に本陣に向かう副隊長は、兄上よりも命の危険があるかもしれない」
「そうですか……」
普通なら、短い期間であっても結婚し、自分の子をもうけて出征する。
後継を残すためだ。
それが貴族の義務だから。
でも、お兄様はそれをしない。
残された奥方様が未亡人になって、子どもと二人生きていくことが、大変だとわかっているから。
優しいお兄様らしい。
「兄上から魔法の勉強をするためにミラー卿に助力いただいたと聞いた。どうだ? 魔法は上達したのか?」
「はい。多分、何もしなかった時よりは上達したのではないかと思っております」
多分。おそらく。きっと。
「では、見せてみろ」
「えっ、ここでですか?」
驚くわたしに、アロン様は不思議そうな目を向ける。
「何故できんのだ。簡単なもので構わんぞ」
「はい……」
ここでやるにしても模擬剣もないし……。
アロン様の視線に急かされて、渋々立ち上がった。
「あの木の枝を揺らして見せろ」
「え、あ、はい」
アロン様の指差す先を見て、わたしは慌てる。
そうだった。
風魔法の練習をしていたことになっていたんだった。
わたしは両手をふわりと上にあおぐように振った。
わたしの腕の動きに合わせて、ふわりと風が吹き、木の枝が少し揺れる。
「できたな。練習の成果か?」
「はい。もちろんです」
本当は練習の成果ではないが、わたしはアロン様に満面の笑みを見せた。
ふっと、笑い、アロン様は立ち上がる。
「オレも少し協力してやる。明日からこの時間にここで会おう」
「へっ?」
アロン様はわたしの横を通り過ぎる時、ぽんぽんとわたしの頭を撫でた。
そして、ご自分の手の人差し指と親指を立てて銃のようにし、木の葉に向ける。
ヒュッ。
アロン様が銃を撃つように木の葉に向けると、強い風が葉に当たり、ヒラヒラと木の葉が舞い落ちた。
「オレの属性も風だ」
それだけを言って、アロン様は本館の方へと歩いて行った。
……は?
いやいや、何故?
わたし、別に風魔法は練習しなくてもいいんだってば。
多分、言い掛かりをつけたわたしへの罪悪感から、アロン様はあんなことを言ったんだと思うけど、うまく断る方法はないかしら……。
混乱しながら考え事をしていたら、お昼休みが終わってしまって、わたしはサリーさんにたくさん言い訳をすることになった。
「違いますっ! ミラー子爵御子息様に恋愛感情は持ち合わせておりません! ただ、モテるのかなあって気になっただけです」
だって、あのオリバーお兄様だよ?
モテる?
ルーク様ならわかるけど。
「ミラー卿はモテるよ。美しいと言う顔立ちではないが、整っているし、体つきも騎士だけあって逞しい。何より、女性に対して優しい。どんな者から声を掛けられても、嫌な顔をせずに応対するしな」
へぇー。
知らなかった。
「では、どうして未だ独身なんでしょうね」
素直なわたしの疑問に、アロン様は苦い顔をする。
「ミラー卿は、兄上の支えとなっている。おそらく、討伐が終わるまでは結婚しないつもりであろう。討伐隊の中で、兄上の役割は知っているな? それに次いで命の危険に晒されるのが、副隊長だ。騎士団の中なら、隊長に次ぐ副隊長は人気のある花形の職務だが、討伐隊のそれは違う。兄上がなんらかの失敗をした場合、魔獣の相手だけをしている隊員よりも魔物を相手にする副隊長の方が、危険だからな。むしろ、兄上と共に本陣に向かう副隊長は、兄上よりも命の危険があるかもしれない」
「そうですか……」
普通なら、短い期間であっても結婚し、自分の子をもうけて出征する。
後継を残すためだ。
それが貴族の義務だから。
でも、お兄様はそれをしない。
残された奥方様が未亡人になって、子どもと二人生きていくことが、大変だとわかっているから。
優しいお兄様らしい。
「兄上から魔法の勉強をするためにミラー卿に助力いただいたと聞いた。どうだ? 魔法は上達したのか?」
「はい。多分、何もしなかった時よりは上達したのではないかと思っております」
多分。おそらく。きっと。
「では、見せてみろ」
「えっ、ここでですか?」
驚くわたしに、アロン様は不思議そうな目を向ける。
「何故できんのだ。簡単なもので構わんぞ」
「はい……」
ここでやるにしても模擬剣もないし……。
アロン様の視線に急かされて、渋々立ち上がった。
「あの木の枝を揺らして見せろ」
「え、あ、はい」
アロン様の指差す先を見て、わたしは慌てる。
そうだった。
風魔法の練習をしていたことになっていたんだった。
わたしは両手をふわりと上にあおぐように振った。
わたしの腕の動きに合わせて、ふわりと風が吹き、木の枝が少し揺れる。
「できたな。練習の成果か?」
「はい。もちろんです」
本当は練習の成果ではないが、わたしはアロン様に満面の笑みを見せた。
ふっと、笑い、アロン様は立ち上がる。
「オレも少し協力してやる。明日からこの時間にここで会おう」
「へっ?」
アロン様はわたしの横を通り過ぎる時、ぽんぽんとわたしの頭を撫でた。
そして、ご自分の手の人差し指と親指を立てて銃のようにし、木の葉に向ける。
ヒュッ。
アロン様が銃を撃つように木の葉に向けると、強い風が葉に当たり、ヒラヒラと木の葉が舞い落ちた。
「オレの属性も風だ」
それだけを言って、アロン様は本館の方へと歩いて行った。
……は?
いやいや、何故?
わたし、別に風魔法は練習しなくてもいいんだってば。
多分、言い掛かりをつけたわたしへの罪悪感から、アロン様はあんなことを言ったんだと思うけど、うまく断る方法はないかしら……。
混乱しながら考え事をしていたら、お昼休みが終わってしまって、わたしはサリーさんにたくさん言い訳をすることになった。
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