143 / 288
15章 加護
オレのニーナが言うことを聞かない
フランクとサリーの有難い申し出通り、ニーナは表向き雇用継続、実際は退職ということになった。
あの後、またニーナとフランクは言い争いをしていた。
フランクは雇用継続している限りは、給金は発生すると言っていたが、ニーナが仕事をしないのに受け取れないと言い出したのだ。
そんなことはどーでもいいから、雇用継続するならちゃんと屋敷で働かせてくれ。
演習場には来させないでくれ。そう言ったオレの訴えは、3人に却下された。
3人がワイのワイのと話しているうちに、オレはダイニングテーブルに戻り、一人もそもそと朝食を食べて部屋を出ようとした。
その頃には決着がついていたようで、ニーナがにこやかに、オレを送るために外套を手に持ってオレの後をついて来た。
ははん。頑固なニーナにフランクが折れたな。
玄関ホールに行くと、何人かの使用人が送りのために出てきていた。
別棟は専属の使用人は少ないが、本館から通いで何人かはいつも来ている。
昨日の騒ぎを聞きつけてか、いつもより心持ち人数が多い気がする。野次馬たちめ!
「ルーク様」
ニーナに声を掛けられ、立ち止まって外套を羽織る。
使用人達の興味津々な視線が注がれるが、普段通りにニーナに接する。
「「「いってらっしゃいませ」」」
使用人達に送られて玄関を出ると、馬車が待っていた。
……何故か、うちの馬車ではなく、ミラー子爵家の馬車が。
オリバー義兄上は、馬車の扉を開けてオレが来るのを待っていた。
「ルーク様、おはよう」
あまりにも爽やかにそう言うので、オレは苦虫を噛み潰したように挨拶を返した。
「……おはようございます」
オレがその馬車に乗り込むと、ニーナが走り寄ってきた。
「お兄様、おはようございます。申し訳ありませんが、今日はお仕事帰りに少しデイヴィス家に寄っていただけませんか?」
馬車を覗き込みながら言うニーナに、義兄上は笑顔で頷いた。
「もちろん、寄らせてもらうよ。夕飯は分厚いステーキがいいなぁ」
「もぉっ! お兄様ったら図々しい。でも、かしこまりました。お肉、ご馳走いたしますわ。お早くお帰りになってくださいね」
……フランクに言っておかないとな。ご馳走するとニーナが言うのは、多分、義兄上のステーキのお金は、ニーナが自分の給金から出す気だからだろう。
「では、行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
ニーナが頭を下げると同時に、ミラー家の御者が馬車の扉を閉めて馬車を発車させた。
オレは向かいに座る義兄上に、恨みがましい目を向ける。
「……どうして今まで黙っておられたのですか? ニーナがジーナであることを」
この聡い兄の昨日の行動は、オレにニーナがジーナであるとわからせる行動であった。
故に、オレはさまざまな説明を省き、単刀直入に質問する。
「いきなり言っても信じられなかっただろう? それどころか、多分ニーナを拒絶していたんじゃないかな。『ジーナじゃない』って」
まぁ、確かにその可能性はある。
ジーナはあのジーナが唯一だと思い込んでいたから。
「それにしても、もっと早く教えてくれても……。なんですか、剣にリボンって」
「オレだって他に思いつかなかったんだよ。でも、一瞬騙されたろう? 剣にリボン、いい方法だと思うんだが。実際に、このリボンはジーナのだしな」
「そーですか……」
小さく遠目から見たらあまり目立たないので
オレは剣のリボンはそのまま結んでいる。ジーナのだしな。
「ところで、今日デイヴィス家に呼ばれたのは、討伐の話だろう? ニーナはどうするって?」
身を乗り出す義兄上に、ため息をつく。
「それ以前の問題ですよ。ニーナは訓練にも参加すると言い出しています」
「ああ、そうだな。訓練に参加した方が、より高い効果が出るだろう。よし、任せとけ」
「いやいや、義兄上。止めてくださいよ。お宅の
跳ねっ返りはローゼリアの怖さを知らない」
オレがそう言うと、義兄上は複雑そうな顔をした。
「いや、多分ジーナはわかってるぞ。大丈夫だ。それより、王家から討伐が近いので婚礼の日取りを決めたいと進言があったと聞いたが、そっちは大丈夫なのか?」
そう言えば、父上から呼ばれてそんなことを言われたな。
「今は討伐の事で頭がいっぱいです。そんな話は後にしてください、と父には言ってありますよ」
ローゼリアと結婚する気は毛頭ない。
しかし、断るにしても討伐前に揉めたくないので、そんな返答にした。
「それならいいが……」
「そんなことより、ニーナを止めてください」
「何度言われたって、オレの意見は変わらんぞ。オレはニーナは演習場に来て、ルーク様との連携をより深くさせた方がいいと思ってるからな。それに、あいつだってもう二度とルーク様の側を離れたくはないだろう。うまくやるさ」
「そーですかね……」
この妹にしてこの兄あり。
ミラー家の教育方針を一度問い詰めてみたい。
でもきっと、オレとニーナに子ができたら、ミラー家の教育方針に則って育てるんだろうけど……。
あの後、またニーナとフランクは言い争いをしていた。
フランクは雇用継続している限りは、給金は発生すると言っていたが、ニーナが仕事をしないのに受け取れないと言い出したのだ。
そんなことはどーでもいいから、雇用継続するならちゃんと屋敷で働かせてくれ。
演習場には来させないでくれ。そう言ったオレの訴えは、3人に却下された。
3人がワイのワイのと話しているうちに、オレはダイニングテーブルに戻り、一人もそもそと朝食を食べて部屋を出ようとした。
その頃には決着がついていたようで、ニーナがにこやかに、オレを送るために外套を手に持ってオレの後をついて来た。
ははん。頑固なニーナにフランクが折れたな。
玄関ホールに行くと、何人かの使用人が送りのために出てきていた。
別棟は専属の使用人は少ないが、本館から通いで何人かはいつも来ている。
昨日の騒ぎを聞きつけてか、いつもより心持ち人数が多い気がする。野次馬たちめ!
「ルーク様」
ニーナに声を掛けられ、立ち止まって外套を羽織る。
使用人達の興味津々な視線が注がれるが、普段通りにニーナに接する。
「「「いってらっしゃいませ」」」
使用人達に送られて玄関を出ると、馬車が待っていた。
……何故か、うちの馬車ではなく、ミラー子爵家の馬車が。
オリバー義兄上は、馬車の扉を開けてオレが来るのを待っていた。
「ルーク様、おはよう」
あまりにも爽やかにそう言うので、オレは苦虫を噛み潰したように挨拶を返した。
「……おはようございます」
オレがその馬車に乗り込むと、ニーナが走り寄ってきた。
「お兄様、おはようございます。申し訳ありませんが、今日はお仕事帰りに少しデイヴィス家に寄っていただけませんか?」
馬車を覗き込みながら言うニーナに、義兄上は笑顔で頷いた。
「もちろん、寄らせてもらうよ。夕飯は分厚いステーキがいいなぁ」
「もぉっ! お兄様ったら図々しい。でも、かしこまりました。お肉、ご馳走いたしますわ。お早くお帰りになってくださいね」
……フランクに言っておかないとな。ご馳走するとニーナが言うのは、多分、義兄上のステーキのお金は、ニーナが自分の給金から出す気だからだろう。
「では、行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
ニーナが頭を下げると同時に、ミラー家の御者が馬車の扉を閉めて馬車を発車させた。
オレは向かいに座る義兄上に、恨みがましい目を向ける。
「……どうして今まで黙っておられたのですか? ニーナがジーナであることを」
この聡い兄の昨日の行動は、オレにニーナがジーナであるとわからせる行動であった。
故に、オレはさまざまな説明を省き、単刀直入に質問する。
「いきなり言っても信じられなかっただろう? それどころか、多分ニーナを拒絶していたんじゃないかな。『ジーナじゃない』って」
まぁ、確かにその可能性はある。
ジーナはあのジーナが唯一だと思い込んでいたから。
「それにしても、もっと早く教えてくれても……。なんですか、剣にリボンって」
「オレだって他に思いつかなかったんだよ。でも、一瞬騙されたろう? 剣にリボン、いい方法だと思うんだが。実際に、このリボンはジーナのだしな」
「そーですか……」
小さく遠目から見たらあまり目立たないので
オレは剣のリボンはそのまま結んでいる。ジーナのだしな。
「ところで、今日デイヴィス家に呼ばれたのは、討伐の話だろう? ニーナはどうするって?」
身を乗り出す義兄上に、ため息をつく。
「それ以前の問題ですよ。ニーナは訓練にも参加すると言い出しています」
「ああ、そうだな。訓練に参加した方が、より高い効果が出るだろう。よし、任せとけ」
「いやいや、義兄上。止めてくださいよ。お宅の
跳ねっ返りはローゼリアの怖さを知らない」
オレがそう言うと、義兄上は複雑そうな顔をした。
「いや、多分ジーナはわかってるぞ。大丈夫だ。それより、王家から討伐が近いので婚礼の日取りを決めたいと進言があったと聞いたが、そっちは大丈夫なのか?」
そう言えば、父上から呼ばれてそんなことを言われたな。
「今は討伐の事で頭がいっぱいです。そんな話は後にしてください、と父には言ってありますよ」
ローゼリアと結婚する気は毛頭ない。
しかし、断るにしても討伐前に揉めたくないので、そんな返答にした。
「それならいいが……」
「そんなことより、ニーナを止めてください」
「何度言われたって、オレの意見は変わらんぞ。オレはニーナは演習場に来て、ルーク様との連携をより深くさせた方がいいと思ってるからな。それに、あいつだってもう二度とルーク様の側を離れたくはないだろう。うまくやるさ」
「そーですかね……」
この妹にしてこの兄あり。
ミラー家の教育方針を一度問い詰めてみたい。
でもきっと、オレとニーナに子ができたら、ミラー家の教育方針に則って育てるんだろうけど……。
あなたにおすすめの小説
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
幼なじみと再会したあなたは、私を忘れてしまった。
クロユキ
恋愛
街の学校に通うルナは同じ同級生のルシアンと交際をしていた。同じクラスでもあり席も隣だったのもあってルシアンから交際を申し込まれた。
そんなある日クラスに転校生が入って来た。
幼い頃一緒に遊んだルシアンを知っている女子だった…その日からルナとルシアンの距離が離れ始めた。
誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。
更新不定期です。
よろしくお願いします。
0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。
アズやっこ
恋愛
❈ 追記 長編に変更します。
16歳の時、私は第一王子と婚姻した。
いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。
私の好きは家族愛として。
第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。
でも人の心は何とかならなかった。
この国はもう終わる…
兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。
だから歪み取り返しのつかない事になった。
そして私は暗殺され…
次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。