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18章 討伐
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朝、目が覚めると、わたしはルーク様の腕の中に居た。
昨日はふたりでぎゅっとして、笑い合って、幸せな気分で眠りについたのだ。
そっと、視線を上に向けると、ルーク様の綺麗な寝顔が目に入る。
わたしを腕に抱き、安心したように眠っているルーク様を見て、少し切なくなった。
わたしは、ルーク様と一緒に居たいと思う。
ルーク様も、わたしに一緒に居て欲しいと言ってくださった。
そして、わたしはそれに頷いて、ルーク様のお嫁さんになると言った。
その言葉に嘘偽りはないけれど、本当にそうすることができるのかわからない。
ルーク様は討伐が終わったら怪我を理由に廃嫡をしてもらうと言っていたけど、そんなことが通るのかな。
だって、魔物を倒した英雄だよ?
少し怪我をしたくらいで廃嫡なんて、世間が許さないだろう。
わたしがルーク様を好きな気持ちは変わらない。
例え、ルーク様がローゼリア様とご結婚なさったとしても……。
じっとルーク様を見つめていると、長い睫毛がふるふると震え、少しずつ目が開いた。
わたしの大好きな、エメラルドの瞳が見える。
「おはよう。もう起きてたのか」
「おはようございます。わたしも、今目が覚めたばかりですよ」
そうしてまた2人で笑い合う。
わたしは、不安な気持ちを押し殺し、今の幸せだけを見て笑う。
コンコン、とノックの音がして、サリーさんが朝食をワゴンで運んできてくれた。
「サリーさんっ! ルーク様のお食事でしたらわたしが」
急いで起きあがろうとしたわたしを、ルーク様が後ろから抱き締める。
「! ルーク様!!」
わたしがルーク様を睨んで腕を外そうとすると、サリーさんがクスクス笑う。
「いいのよ、ニーナ。今日からしばらくニーナはお休みよ。フランクさんと相談してそう決めたの」
「えっ、でも」
「だって、ニーナだって討伐に向けて魔力を温存しておかなければならないでしょう? 疲れていては訓練で使った分の魔力が回復しないわ。それに……」
サリーさんはちらりとルーク様を見てから、小声で呟いた。
「ルーク様とイチャイチャする時間も必要でしょ? 今まで離れていたんですもの」
サリーさんにそう言われて、わたしの顔が熱くなった。
きっと、真っ赤になっているだろう。
何を言っていいかわからず、ぱくぱくと口だけ動かしていると、ルーク様が一層わたしを抱く手に力を入れる。
「そうだな、サリーも良いことを言う。失われた14年分、イチャイチャさせてもらわなければな」
ルーク様の不遜な物言いに目を丸くしていると、サリーさんは両腕を腰にあててルーク様に向き直る。
「ルーク様、でも節度は守ってくださいね! ニーナはまだ15歳ですからね!」
「わかっている。見てみろ。節度を守った紳士なオレを」
ふぅ。とため息を吐くサリーさん。
「そーですね。一緒のベッドに居るのがわかっているのに、ノック一つですぐに部屋に入るくらいは信頼してますよ。さ、朝食が冷めてしまいます。向こうにセットしますので、なるべく早く来てくださいね。セットが終わったら、わたしは一度下がりますので」
「サリーさん、」
「いいのよ、ニーナ。食事も2人きりの方がいいでしょう?」
そう言って、サリーさんは鮮やかなウインクを残して去って行った。
「~~~ルーク様ぁ……」
なんとも言えずにルーク様を振り向くと、ルーク様は穏やかに笑う。
「討伐隊隊長の奥方になるんだ。少しは慣れておくのもいいんじゃないか?」
討伐隊隊長。
侯爵様ではない。
ルーク様は、やっぱり討伐後は廃嫡されるつもりなのだろう。
廃嫡など、きっと不可能。
そう思っても、わたしは口に出すことは出来なかった。
「……そうですね。ルーク様の奥様になったら、こうして毎日2人で食事をするんですね」
そう。
奥様になれたら。
わたしの心の暗い部分を隠し、日々は穏やかに過ぎていく。
昨日はふたりでぎゅっとして、笑い合って、幸せな気分で眠りについたのだ。
そっと、視線を上に向けると、ルーク様の綺麗な寝顔が目に入る。
わたしを腕に抱き、安心したように眠っているルーク様を見て、少し切なくなった。
わたしは、ルーク様と一緒に居たいと思う。
ルーク様も、わたしに一緒に居て欲しいと言ってくださった。
そして、わたしはそれに頷いて、ルーク様のお嫁さんになると言った。
その言葉に嘘偽りはないけれど、本当にそうすることができるのかわからない。
ルーク様は討伐が終わったら怪我を理由に廃嫡をしてもらうと言っていたけど、そんなことが通るのかな。
だって、魔物を倒した英雄だよ?
少し怪我をしたくらいで廃嫡なんて、世間が許さないだろう。
わたしがルーク様を好きな気持ちは変わらない。
例え、ルーク様がローゼリア様とご結婚なさったとしても……。
じっとルーク様を見つめていると、長い睫毛がふるふると震え、少しずつ目が開いた。
わたしの大好きな、エメラルドの瞳が見える。
「おはよう。もう起きてたのか」
「おはようございます。わたしも、今目が覚めたばかりですよ」
そうしてまた2人で笑い合う。
わたしは、不安な気持ちを押し殺し、今の幸せだけを見て笑う。
コンコン、とノックの音がして、サリーさんが朝食をワゴンで運んできてくれた。
「サリーさんっ! ルーク様のお食事でしたらわたしが」
急いで起きあがろうとしたわたしを、ルーク様が後ろから抱き締める。
「! ルーク様!!」
わたしがルーク様を睨んで腕を外そうとすると、サリーさんがクスクス笑う。
「いいのよ、ニーナ。今日からしばらくニーナはお休みよ。フランクさんと相談してそう決めたの」
「えっ、でも」
「だって、ニーナだって討伐に向けて魔力を温存しておかなければならないでしょう? 疲れていては訓練で使った分の魔力が回復しないわ。それに……」
サリーさんはちらりとルーク様を見てから、小声で呟いた。
「ルーク様とイチャイチャする時間も必要でしょ? 今まで離れていたんですもの」
サリーさんにそう言われて、わたしの顔が熱くなった。
きっと、真っ赤になっているだろう。
何を言っていいかわからず、ぱくぱくと口だけ動かしていると、ルーク様が一層わたしを抱く手に力を入れる。
「そうだな、サリーも良いことを言う。失われた14年分、イチャイチャさせてもらわなければな」
ルーク様の不遜な物言いに目を丸くしていると、サリーさんは両腕を腰にあててルーク様に向き直る。
「ルーク様、でも節度は守ってくださいね! ニーナはまだ15歳ですからね!」
「わかっている。見てみろ。節度を守った紳士なオレを」
ふぅ。とため息を吐くサリーさん。
「そーですね。一緒のベッドに居るのがわかっているのに、ノック一つですぐに部屋に入るくらいは信頼してますよ。さ、朝食が冷めてしまいます。向こうにセットしますので、なるべく早く来てくださいね。セットが終わったら、わたしは一度下がりますので」
「サリーさん、」
「いいのよ、ニーナ。食事も2人きりの方がいいでしょう?」
そう言って、サリーさんは鮮やかなウインクを残して去って行った。
「~~~ルーク様ぁ……」
なんとも言えずにルーク様を振り向くと、ルーク様は穏やかに笑う。
「討伐隊隊長の奥方になるんだ。少しは慣れておくのもいいんじゃないか?」
討伐隊隊長。
侯爵様ではない。
ルーク様は、やっぱり討伐後は廃嫡されるつもりなのだろう。
廃嫡など、きっと不可能。
そう思っても、わたしは口に出すことは出来なかった。
「……そうですね。ルーク様の奥様になったら、こうして毎日2人で食事をするんですね」
そう。
奥様になれたら。
わたしの心の暗い部分を隠し、日々は穏やかに過ぎていく。
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