幼馴染のリスナーに媚びて人気者になりたい

久羽しん

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第1章

22 気付いてしまった《後編》

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 [ウェーブ:それで、アオがスベることに関してだけどさ……]

 {オクラ沼:おっ! 露骨に話変えてきた笑笑}

 [ウェーブ:いやいや。戻しただけだから! えっと、アオの空気の読めなさは、やっぱ、ファンのオクラ沼さんたちですら気になるもんなのかなー……って思って]

 {オクラ沼:あぁ。さっきの話ね? 確かにめっっちゃ気になるけどさ、私らはもう癖になってきたから全然大丈夫な範囲だよ。問題はアオ推しじゃなくて、他のメンバーのリスナーだね。他メンのリスナーで、アオにイライラしてる人は多いけど……今日みたいなことが何度もあれば、それも変わるかも?}

「え……」

 {床:ですね。なんだかアオくんの好感度が回復していけそうでホッとしました}

 {しゅがー:うんうん! アキくん効果でこれからレートも上がりそうだよねぇ、アオっ(๑>◡<๑)}

 [ウェーブ:レート??]

 {しゅがー:あっ、フリマサイトとかの『グッズの売買の値段』のことだよ! アキくんがダントツでレート高いのっ!! 推しが人気なのは誇らしいけど、集めにくーい๐·°(৹˃̵﹏˂̵৹)°·๐}

 あ……俺五百円だったやつか……。

 {床:ケミ人気が増えれば、高くなるでしょうね。実際モモくんのレートが高いのもアキくんと仲良しだからって面もありますし}

 [ウェーブ:え! そんな仲良しとか仲良しじゃないとかで値段が変動するものなの!?]

 {しゅがー:するよ~? だって推しと仲良ければ、『この子もついでに一緒に推そうかな』ってなるじゃんっ(๑>◡<๑) ペアで推そーってなったら次は、グッズをセットで集めたくなるんだよ!! だからグッズ買う人が増えるし、レートも自動的に上がるんだよ~}

 {オクラ沼:箱推しの人らは五人分ちゃんと揃えるけど。ケミ推しや私らみたいな腐女子は基本二人分だけを買うからね。私もアキとアオのグッズを買って祭壇に飾ってるよ!}

 (な、なるほど……)

 つまり、『アキ』に媚びれば媚びるほど、俺がワンコイン人間から脱却する可能性も高いというわけか。

 {オクラ沼:アキと違ってアオはフリマサイトで安かったから集めやすかったんだけどな。高くなったら私困るかも、、、}

 {Blau:フリマサイト!? おぬし、人の手からアオきゅんを安く買おうだなんて邪道だと思わないかい? アオきゅんをイラネした人間にわしは絶対金を払わないぞ;;公式に注ぎ込むに一択ダッ!^^}

 {オクラ沼 :そりゃBlauは金持ちだからさ……。私みたいな庶民には、公式ガチャは無理だよ。高いもん。ユウさんとかハクモモが来ちゃったら、それを売ったり交換に出すのも大変でしょ? だったら最初からフリマでアキアオだけ買えばいいじゃん! ってなっちゃうよね}

 [ウェーブ:ん……? Blauさんお金持ちなの?]

 {しゅがー:そおだよ~! Blauちゃんはこの中で一番新規で、去年アキアオにハマったばかりなのに、一瞬で今まで出てるグッズ全部買っちゃったんだもーん!! スパチャオンだったら一人でとんでもない金額投げただろうし、石油王ってあだ名ついてたかもね(๑>◡<๑)}

 (そうなんだ……。……Blauさんなんの仕事してるんだろ? 謎すぎる。聞いてみようかな)

 俺がBlauさんの仕事について質問しようとしたその時、しゅがーが慌てたように新しいチャットを出した。

 {しゅがー:あ、あーー!!?? ちょっと待って!!! アキくんとモモたんのティックトッカがきたーー!!! わたし見てくる~!!!! アキくんアキくんアキくんッッ!๐·°(৹˃̵﹏˂̵৹)°·๐}

 {床:本当だ! アキアオ大勝利と喜んだのも束の間でしたねー! さすがアキモモです。私も見てきますね!!}

「あー……さっきのか」

 たしかにティックトッカ撮ろうって桃星が言っていた。早速アップしたらしい。

「……あれ?」

 [ウェーブ:しゅがーと床さん行っちゃったけど。Blauさんとオクラ沼さんは見に行かないのか?]

 {Blau :アオきゅんが映っていないのであればわしは興味ないでござる}

 [ウェーブ:あーね……]

 {オクラ沼:いやアキモモ動画なんて見るわけないじゃん!? てか、見ようとしても見られないわ。嫉妬がぐるぐるしてやばい。アキモモやだ。悔しい、吐く。苦しい……。むりむりむり……私の視界に入らないでほしいです}

 (そ、そんなに……!?)

 [ウェーブ:オクラ沼さんはアキモモが嫌い?]

 {オクラ沼:嫌いじゃないよ! 誰かのアンチってわけでもない。ちゃんと、メンバーは五人とも大好きだよ! でもさ、アキアオ以外の組み合わせの供給は体が受け付けないの……! 不可抗力、アレルギーみたいな感じ。だからアキモモもユウアオもハクアキも絶対絶対絶対に嫌!! むりとつら}

 [ウェーブ:えー! じゃあ、アキとハクの甘いもの食べ歩き動画とか見てないのか?]

 {オクラ沼:見てない}

 [ウェーブ:アオとユウさんのお料理動画も?]

 {オクラ沼:見てない!}

 [ウェーブ:え……オクラ沼さん、大事な供給かなり見逃しちゃってるじゃん……]

 {オクラ沼:うーーー! 知ってる泣 そうなの! 自分でもわかってんだよ!! 分かってるけど、無理なもんは無理なの!! 地雷多いせいで見られない動画がいっぱいで……。せっかくごちゃまぜ好きなのに、腐目線で見てると、供給全部は楽しめなくてさ~~~(┬┬_┬┬)}

 [ウェーブ:なんて生き辛い……]

 {Blau:難儀よの^^;}

 固定厨というのはなかなかに大変そうだ……。

 {オクラ沼:はあぁ……。……てかさ、なんでアキとティックトッカ撮るの、モモばっかなのかな? アオも一度くらい撮ってくれたってよくない?}

 (え? そりゃあ……)

 [ウェーブ:『ティックトッカ』って顔のいい人間が己のビジュの良さとリア充具合をアピールする為に誰かの曲の振り付けのダンスをゆるく踊って可愛いかっこいい言われて承認欲求満たすやつだよな???]

 {オクラ沼:エッ……ウェーブくん偏見すごくね? ティックトッカに嫌な思い出でもあるんか?? というか息継ぎしな}

 [ウェーブ:……。まあとにかく、俺が言いたいのは、アオはそういうキャラじゃないからってこと。アオは、陽キャ向けSNSはやりたくないんだろ?]

 {オクラ沼 :そうなのかな。たしかにアオが撮ってるとこはあまり見ないけど……}

 {Blau :うぇーぶ、キミ、さすがアオきゅんの理解度高いと自分で思い込んでる厄介オタクだな……^^ 勝手にアオきゅんのお気持ち代弁してて草}

 [ウェーブ:誰が厄介オタクだ。想像だよ想像……]


「ふう……」

 そこまで打ったところで、俺は時計をチラリと見た。

 (──うわっ、やば……!)

 ちょっとだけ覗く予定だったのに。もう数十分経ってしまっている。

 なんだかんだでチャットに夢中になりすぎていた。俺もそろそろ編集作業を開始しないと。

 [ウェーブ:ごめん、俺作業あるからもう抜けるわ。またな、オクラ沼さんBlauさん! 床さんとしゅがーが戻ってきたら、俺抜けたって伝えておいて]

 {Blau:り^^ノシ}

 {オクラ沼:ういー。じゃあね、ウェーブくん! ──さて、私もさっきの配信のアーカイブを見ながらさっそく記念絵でも描こっかな!! それからホールケーキを買ってこよ~っと! あっ、ロウソクはもちろんアキアオの年齢の二と四ね! なんたって今日は、アキアオ記念日だからね。アキアオの特大絡みがあった日は、国民の休日とすべきだよ。今日をアキアオの日と名付け毎年みんなで祝いたい。アキアオ万歳!! アキアオ万歳っっ!! アキアオ万歳っっ!!!}

 {Blau:頭おかしいね}

 {オクラ沼:……ねえ。急に普通に喋ってくるのやめて}

「……っ」

 Blauさんの冷静なツッコミに耐えきれず吹き出してしまった。この人、変な言葉遣い以外も発せられたのか。意外だ。

「ダメだダメだ……つい見ちゃうわ……」

 俺はグループチャットを今度こそ閉じて、デスクトップに向き直った。

 編集作業をしながら、ぼんやり考えてみる。

 ── {オクラ沼:そんなもんだよ。推しと仲良くしてくれるメンバーには好感が芽生える。逆に推しに冷たくするメンバーは印象が悪くなる。アキが一番人気だから、アキと絡む=大量にいるアキリスナーの色んな感情がついてくるってことだからねー。良くも悪くも}

「……」

 (……好感が芽生える……)


 今日俺は、気付いてしまった。

 簡単にアンチを減らす方法を。

 そうそれは──『秋風のリスナーに媚びる』ことだ。

 さっきの配信で軽く絡んだだけで、すぐに効果が現れたのだから、これからもBL営業をやっていけば。

 きっと俺の人気は……。


「…………」


 (…………でもこれって、秋風に悪いことなんじゃないか……?)


 わざと秋風を利用するようなことをしていくということだ。

 もしもこのことが、いつかあいつにバレてしまったなら──……。


 

「…………いや」


 (バレたからなんだよ? その時はまあ、その時だろ。BL営業してたって正直に言えば良いだけの話だし、むしろ『BL営業手伝ってくれよ』ってお願いしても良いし……。あいつだって二つ返事で頷いてくれるだろ? 誰にでも優しいやつだから)


 そうだ。  

 そのはずだ。

 別にこれは……悪いことじゃない。


 俺のアンチが減れば、グループ全体にプラス効果があるし、供給不足で不憫な床さんやオクラ沼さんたちだってあんなに喜ばせてあげることができる。あの人たちはアキアオが生き甲斐なんだ。

 一石二鳥じゃないか。なんて良いこと尽くし……。


 ──これの何が悪いっていうんだ?


 俺はこの日、はじめてのBL営業に味を占め、少しの不安と罪悪感から目を背けてしまった。
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