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第1章
【閑話】わたしの推し/しゅがー《後編》
しおりを挟むアキくんの所属するグループのお披露目配信、当日。
【???】と書かれたチャンネルの配信を開くと、椅子が五席置かれた部屋が映し出されていた。
チャット欄には、『五人グループ!?』と動揺が走っている。わたしの胸もドキドキしていた。
すると、一人の男性が部屋に入ってきて、一番右の椅子に座った。
「はじめましての方は、はじめまして!【夕方最高! ちゃんねる】のユウです。自分がこのメンバーとなら楽しくやっていける、という方々を集めました。今日はその、お披露目配信です。グループ名は、ごちゃっとまぜる。【ごちゃまぜ】って呼んでください! 僕はリーダーとして、ごちゃまぜの為に、ごちゃまぜメンバーの為に、誠心誠意、尽力して参ります。メンバー全員に、ごちゃまぜに入って良かったって、そう思ってもらえるようなグループに必ずしていきます。そして……視聴者さんにいつまでも愛されるような面白くて楽しいちゃんねるにすることをお約束します。なのでみなさん、ぜひ応援のほどよろしくお願いいたします!! これを見てるみんなー! 今日からごちゃリスになってくれー!!!」
知っている顔だ。男らしく整っているけど、怖さはなく、優男風な面立ち。全身から陽キャ感と良い人オーラが溢れている。
夕方最高! ちゃんねるのユウさん。登録者百万人を超えるゲーム実況者で、アキくんとはイベントで一回だけ共演していたと思う。
アキくんが入るのは、この人が結成したグループだったんだ。
ネットでは仲良い歌い手数人でグループを組んだんだろうと予想されていたから、びっくりだ。
異色の組み合わせな気がするし、どんなグループになるのか全然想像ができない。でも、この人がリーダーなら安心な気がする。少なくとも、無名配信者の売名にアキくんが使われているというケースではなくてホッとした。
「じゃあさっそく、メンバーを紹介していきます! まず一人目──アキ! 事前に本人から告知があったと思うけど、顔出しは初だから、本人もリスナーも緊張しているはず。どうかお手柔らかに……!」
「……はじめまして」
部屋の向こうから、ドアが開けられる。
その瞬間、カッッッと強烈な光が差し込んできたかのような、錯覚を覚えた。
(……?? かみさま?)
あまりに神々しくて、目が開けられない。
輝いているその人は、モデル顔負けの長い脚でゆっくり歩き、ユウさんの隣の椅子に腰掛けた。
「みなさん、こんにちは。アキです」
「……………………ふぇ……?」
わたしの目は点になっていた。
(これは、現実……?)
──『こんにちは』
嘘みたいな美人さんから、私の推し──アキくんの声がした。
「今日からごちゃまぜのメンバーとして活動していきます。ぜひ応援していただけたら嬉しいです。今までやってきた個人チャンネルでの活動もそのまま並行しつつ、日々新しいことに挑戦──」
何やら流暢にお話をしてくれているけれど、正直全然頭に入ってこない。
なにこれ。
わたしがアキくんの声を聞き間違えるわけがない。
だから、この人の声がアキくんだってことは本能的にわかる。わかるのに……脳が理解に追いついてくれない。
「あ、あき、あ……あき、あきく…………??」
画面の前で体が面白いくらい震えた。
わたしの脳内の『理想のアキくん像』がガラガラと崩れ落ちていく。だって本物のアキくんは……妄想なんかと、比べ物にならない。
理想よりも、ずっとずっと、信じられないくらいに、綺麗だ。
チャット欄は『!?!』が滝のように流れている。わたしはコメントを打つ余裕すらなかった。あまりの衝撃に、頭の中が真っ白になっていた。
『クソイケメンでわろた』『わらえない、まじこれ?』『ドッキリ?』『俳優連れてきたんでしょ』『ありえなくね』『本当にアキ?』『顔が良すぎる、推します』『この人誰!!』『顔だけで一生お金に困らなそうな人来て草』『やばい吐く興奮しすぎて気持ち悪い』『配信者がこんな美形なわけないやん! みんな落ち着け』『替え玉乙』『でもアキの声だよ!?』『声似てる人連れてきたとか』『嘘でしょ……』『涙止まらん』『チャット早すぎてなにがなんだかわかんないわ』『アキのことずっと推してて良かったこんなサプライズ初めて……ッ!』『この人がほんとに本人ならさ、超絶美形なのに今まで自分の写真一枚もあげてこなかったのが意味わからんくない? え?? どんなミスリードなんだよ……!!! 神様ありがとう!!!!』『俺がこの顔だったら毎秒自撮りインステに載せて自慢してる』『同接やば!!』『ユウさんとアキくんの御尊顔見たら鼻血出てきたんだけど』『もう決めた! ごちゃまぜ絶対推す!!』『二人目まででこの顔面偏差値ってえぐくね? 化け物グループ誕生しちゃってる!!』『私たち伝説の始まりに立ち会ってる……』『アキくん? ほんとにアキくん!??』
大混乱のチャットを見たら自分は落ち着けると思ったけど、全然そんなことはなかった。
みんなの焦りを見るほど、むしろどんどん脈拍が上がって、呼吸困難になってくる。
次に、予想通りのモモたんとか、垂れ目で色気が凄い派手め長身イケメンさんとか、平凡モブっぽいオーラの黒髪でちょっと吊り目な男の子がドアから現れたりして、順番に席に座っていくけど──待て待て待て待て!!!
こっちはまだアキくんの衝撃が解決してない。待って。ちょっとほんとに待って。
一個一個ゆっくり進めて欲しい。一人あたり一時間くらい間隔をあけて欲しい。こっちの心が落ち着く暇もないペースで、新しい人出てくるのやめて。情報量が多すぎる!!
「──以上五名が、今日から結成し始動していくストリーマーグループ、ごちゃっとまぜる……通称ごちゃまぜです! こんな素敵なメンバーと活動を始められて、俺、本当に誇らしいよ。ありがとう。みんな……これからよろしく!!」
全員が席に揃ったら、ユウさんが、嬉しそうな顔で四人を見渡した。
それに、四人が各々好きなように答えている。
「こちらこそありがとうございます。僕はまだ学生で未熟な点も多く、ご迷惑をおかけしてしまうかもしれませんが……ごちゃまぜを盛り上げていけるよう全力を尽くす所存です。精一杯頑張ります。よろしくお願いいたします」
「えへへ。ユウ兄、よろしくね~! 僕も頑張るよ~っ」
「へーい」
「!! よ、よよよよろ、よろしく……おねが……ッッッ」
「…………」
(………………夢……かな…………?)
もはや受け止めきれなくなってきたわたしは、気絶するように後ろからベッドに倒れ込んだ。
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