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第1章 禁断の魔道士
魔道竜(第1章、29)
しおりを挟む禁断の魔道士 (イコール)大神官。
たしかにティアヌは常に成績はトップ。次の禁断の魔道士はティアヌではないかと噂されていることも知っていた。けれどティアヌにだってそこまでの知られざるプロセスは公表をひかえたい。人間、成さねばならない目標があればどんな困難も厭わない。
それでもティアヌにとって魔道士とは天職だったのかもしれない。もともとの才能もあったのだろう。
適性検査を受けたとき祖父が検査結果をきくやとてもさびしそうにほほ笑みをうかべ、ティアヌの頭を優しい手つきで撫でながらこう告げた。
『やはり血筋か、お前だけは失いたくなかった』
ティアヌは父の顔を知らない。母はとても穏やかな人で帰らぬ父をいつまでもまちつづけたとても一途な人だった。
父の愛情を知らないティアヌにとって、かけがえのない母の愛情こそこの世のすべてだった。
だからこそ母を悲しませる父へ憎しみがむけられたのはごく自然なながれでもあり必然的にそうなったまでのこと。
父を待ちつづけた母は風邪をこじらせ、ティアヌが八歳のときに静かに息をひきとった。晩年の母はいつも海のみえる小さな窓をみつめ、ドアがひらくその時をまちわびていた。決してひらくことのないドアを。
つらくて思い出したくもない過去は誰にでもひとしくあるものだ。それでも事も無げに雑踏を行き交う人々は笑顔の仮面をかぶり、その下に泣き顔の仮面をかくしながら必死に今日を生きている。
「着いたわよ」
一軒のあばら家の前で立ち止まった。今にも崩壊しかねないボロ家には家畜を飼育するための小屋らしきものがあり、その雨よけの屋根がつけられただけの小屋に隣接する母屋はもはや人の住めるそれではなかった。
街からはずれるようにしてひっそりと暮らすその暮らしぶりから人目をさけるこの家の主人の複雑な心境をものがたっているようだ。
一切の修繕の手をくわえられていない様子からして、おそらく狭い島ならではの憶測話しに辟易していることがうかがいしれる。
女の手で修繕するとなるとかなりの無理がしょうじる。
それでも多少の雨漏りならば家の中で傘をさしていればなんとかやりすごすこともできるだろう。
たしかにある事ない事、詮索されながら暮らすのは苦痛いがいのなにものでもない。
「着いたって、こんな所に人が住んでいるのか?」
「しっ! 声がでかい。相手に警戒されたらどうすんのよ」
「ぁ……悪い」
「おそらくこの家の主人は今一番私が知りたがっていることを知っているはずよ」
「知りたいこと?」
セルティガには言葉の意味を理解する能力はない。しかしセイラにはどこか理解しているようで質問を浴びせられるようなことはなかった。だがセイラは辺りを見回し、その気配にようやく気付いたようだ。
セルティガもそれにつられるようにしてその気配に意識をかたむける。
「気にするな、気配をうまく消しながらずっと俺たちのあとを追ってきている。だが今のところ危害をくわえるつもりは向こうさんにははなっからないようだしな」
「気付いていたの?」
とても意外だ。
「お前だって広場で三人になったころからこの気配に気付いていただろうが」
「それも気付いていたの?」
「当たり前だ。俺はお前らのボディガードとして行動をともにしている。それにそれぐらいのことが気付けないでどうする。魔剣士の名折れというものだ」
けっこう頼もしい所があるんじゃない。
見てくれだけなら三ツ星でも性格に難ありなセルティガ。ふいにみせた意外な一面になぜか胸が踊る。
踊るな~!私の無い胸さん。これは動悸よ動悸。ってか、十四才にしてすでに動悸ってそれはそれでヤバい気もするが………。
「もし仮に俺たちを殺(や)るつもりならとっくに事を起こしているだろう。ここに着くまでにチャンスならいくらでもあったはずだしな」
珍しくセルティガに同感。もっともそうな理屈をならべればセルティガは賢そうにみえる。
「ま、もし勇敢にもこちらに攻撃を仕掛けてきたら、その勇気にめんじて俺が全力をもって完膚なきまでにブッつぶしてやっていただろうがな」
それほど剣の腕前に自信と誇りをもっているのか。
「とにかく、あっちは様子見ね。新たな動きをみせたら事を構える、それでいいわね? そのつもりで心積もりをしておいて」
木々のどこかしら気配はするもののまったく殺気を感じられない。ならばこちらから仕掛けるまでもない。わざわざ薮をつついて蛇をだすこともなかろう。
「さぁ、謎の女にベールをぬいでもらいましょうか」
三人はドアにむかって歩き出す。
このあばら家に住む女主人。彼女は十中八九まちがいなくこれからの重要な足掛かりをにぎっている。
それが確信へとかわるのに時間は要さなかった。
「どちら様?」
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