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第1章 禁断の魔道士
魔道竜(第1章、47)
しおりを挟む溶岩の中に浮かびあがるようにしてトカゲをかたどる大小さまざまな岩。
ふつうに考えればそれだけでもありえないことだ。
溶けかかる風でもなく、整然と溶岩のなかにあって動じることなくそこにある。
セルティガは溶岩の中にたたずむあの岩までどうやって行くつもりなのか、そうたずねた。
その答えはこれだ。
「あのね~私をなんだと思っているの、魔道士よ?それも禁術の使い手、禁断の魔道士と目される凄腕のね。
炎の結界をはってからあそこまでいくに決まっているじゃない。じゃなきゃ一瞬にして髪の毛一本…ヒトかけらの骨すらも残らず燃えつきちゃうわ」
「そうか。ならばこのさき、俺はどうすればいいんだ?」
キョトン…とセルティガの顔をみすえる。
「あ! そうかそうか、火竜玉しか使えない魔剣士だっけ? ホント使えないわよね……」
「ここぞとばかりに余計なお世話だ!俺のことは放っておけ!」
それより、とセルティガは言葉をつぐ。
「溶岩にたいして炎の呪文って…それはどうなんだ?」
「もし仮に溶岩にほんのひとにぎりの水をぶつけたところで焼け石に水ってもんよ。
水の結界をはったとしても、溶岩の前では一瞬にして蒸発し結界としての本来の力は発揮できないわ。
一概に火には水ってわけじゃないのよ」
「なるほど」
「その場の状況にあわせ、そこは臨機応変に対処する、これぞ常識。唱えるわよ」
「おぅ!」
【゛ゆらめき浮き沈む炎の海、汝は汝の影に、汝は汝の闇にたゆたわん゛】
ティアヌは腕を交差させ呪文を唱えた。
「ブレゾファング(炎の護符)!」
ブレゾファング、またの名を火羽衣もともよばれる。
この呪文をもちいればゆらぐ炎の高温もほのかな温かさにしか感じない。
球状の結界が天女の羽衣のごとくティアヌとセルティガをつつみこんだ。
「私から離れないで。効力を最大限いかすことを重視して、半径一メートルまでしか呪文の効果はないから」
「わかった」
二人は一番活発なクレーター状のくぼみをさけながら火口丘をくだった。
その熱気だけでも肌を焼く尋常でない熱さを感じる。
炎の結界をはっているとはいえ、額といわず頬からおびただしい汗がいく筋も帯をひきしたたり落ちる。
通常ならこの結界をはっていれば炎や火の粉をあびようともなんのことはない。
しかしながら溶岩の真上を歩き回るとなると蒸気の熱気だけで釜ゆでされているようで温泉たまごにでもなった気分だ。
「しかし熱いな」
「燃えつきないだけマシでしょう?」
「まぁな。だが浮遊術でトカゲ石までひとっ飛びってのは選択の余地は当てはまらなかったのか?」
「それが問題なのよ。ちょっと気になることがあってね……」
「気になること?」
「そんなことより、近すぎない? もっと離れて歩いてくれない、暑苦しい」
「無茶言うな。これでもできる限りの絶妙な距離をたもっているんだぞ。
しかしマグマの上をただ歩いているだけで結界ないの温度がましていく。
こんなすべてを無に帰す力があるマグマが、なぜあのトカゲ石だけは原形をたもっていられるんだろうな」
それはまさにティアヌも疑問に思っていたことだ。
セルティガの疑問の答えはトカゲ石を目の前にして解き明かされた。
「なるほどね」
トカゲ石は石であって、ただの石ではなかった。
「なっ………妖魔!?」
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