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第2章 精霊条約書
魔道竜(第2章、46)
しおりを挟む目を射る雷光が上空を真っ二つに引き裂き、それはいくつかの青白い炎となって横ばいに稲光る。
「伏せて!」
「ゲッッ☆マジかよぉ!?」
こんな狭い空間で発動させるような呪文じゃねぇだろう、と思いつつ、セイラをかばうようにして上から覆いかぶさった。
落雷は一度ならずも二度・三度と火の大河を直撃。
凄まじい轟音とドーム状の洞窟ないの隅々にまでかけめぐる衝撃波。
谺(こだま)して鳴りやまぬ地鳴り。
耳を手のひらでおおってもなお空気をふるわせ反響する音・音・音。
やがて地鳴りは姿をかえ、その場にいることすらためらわれるほどの衝撃が体をつきあげる。地震だ。
セルティガは、すぐさま立ち上がることはせず、伏せたままの体勢で顔だけをスレスレの位置にあげ、落雷の落ちた先を見つめる。
「はずした……」
「あれは狙ってはずしたんじゃなぁい?」
セルティガとは違い仰向けの体勢だったからこそセイラは始終を見届け、そこに客観的な意見までそえた。
「わざと……? セイラ、それって―――」
次いで四度目の落雷。それはセルティガたちの間近にせまる。
「ぇ…おぃ…マジかよ! アイツ俺たちまで巻き込むつもりか!?」
落雷は邪蛇をそれ、巨木の辺り、溶岩の大河を引き裂いた。
ズドォンと爆音が轟く。
するとその驚異にたえかね、火の河は逆巻くうねりとなりナルトを描く。
ついに火の河に異変が!
ミシミシと鳴り響く奇妙奇天烈なる奇怪音。
音の出所をたどってみれば、落雷が落ちた地点から?
これはひょっとして………。
――――川底がぬける???
と、思ったその時。
ボコッ! と川底が抜け落ち、見る見るうちに溶岩は大きく口をあけた穴へと吸い込まれていく。
満々とたたえていたはずのマグマの大河は、強制的にその流れをかえられたのだ。
滝つぼとかした穴。ナイアガラの滝さながらに怒涛の勢いで姿を消していく。
「……あらあら、やってくれたわね」
邪蛇の目が心なしか嬉々として輝いてみえる。
「それはどうも」
ここにいたるまで、この洞窟の構造について不思議な点がいくつかあったのだ。
火の河が山の内部をグルグルと取り囲み、それがいくつかの層にわかれていた。
これはおそらく、幾度となく噴火をくりかえしているうち、地殻がずれたり地盤のくいちがいによる断層によるもの。
地核とは星の中心。その中心を占める高熱・高圧部。そこに何かしらの刺激をあたえることで様々な現象がおきるとされる。
「まさかこんな手でくるとは思わなかったわ。せっかくあと一息ってところだったのに、…ガッカリよ」
地震は日常茶飯事におこるエンタプルグにおいて、なぜ何年もこの死の山は噴火できないのか。
いつ噴火するともしれぬ死の山は胎動の時を刻み、溶岩は噴火の時を今やおそしと待ちわびている??
その答えは、この聖木(ジュボック)が溶岩を養分としてとりこんでいたからだ。
その養分さえたってしまえばあとはなんのことはない。
見る見るうちに収縮してゆく聖木。
狙い所ははずさない。
火の河から養分を吸収できなくなった聖木は、瞬く間に黄金色の葉を落葉させていく。
ティアヌの推察したとおり、聖木は溶岩から養分を吸収し、水を吸収するがごとくエナジーをとりこんでいたのだ。その営みを断ちきり、一瞬でも養分をとりこめなければこの巨木は維持できない。じきに火山は噴火へといたるはずだ。
そうなれば邪蛇の注意をそらすこともでき、なおかつ邪蛇をこの地上にとどめておくための寄り座(ま)し、聖木も失われることになる。
つまり、邪蛇は好まざるとも神の島、ラグーンへと強制送還というわけだ。
邪蛇の『やってくれたわね』のセリフには、ティアヌの見事な作戦と目の付け所の良さへの讃辞の両方の意がこめられていた。
「今よ!」
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