魔道竜 ーマドウドラゴンー

冰響カイチ

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第3章 精霊王

魔道竜(第3章、23)

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「開門」


ティアヌが声高々と告げる。



「な、何だ!?  地震か?」

ガタガタと船体が震えだす。

「下だ!  」

「下?」

巨大門が上昇する。海が割れた。

「何か浮上してきたぞ」

飛び散る水飛沫。ズズズと海底の岩盤がずれる音。

「でけぇ!  なんだこの大岩は!?」

まるで古代の遺跡にあるような一枚岩。中央に亀裂が入っている。

「化石まみれだぞ」

「見ろ。小さな小貝の化石の奥に何か刻まれてあるぞ」

一隻眼を覗いていた年若い船員がかたまっている。

「どれ、文字?  てな感じでもないが……何かの記号? 」

「もしくは暗号じゃないのか?」

通りすがりにきになってティアヌは足を止める。

「あら、どれかしら?」

ずずぃと船員の間を割ってティアヌが身を乗り出す。

「あそこです。ほら」

一隻眼をとりあげ、のぞきこむ。

「ーーふぅむ。これは精霊語ね」

「精霊語?  解読できるのですか!?」

驚かれ、及び腰になりかける。

魔道において精霊語を理解することは基本中の基本であるが、船員たちにとってもそれほど珍しいことではないはずだが。

「けど、少しよ。ぇーと、光と闇はともに何かを封じた、とある。大事な部分が化石まみれで解読できないわ。これを解読できるような精霊に詳しいものは?」

「…………」

しん、と静まりかえる。

船乗りのなかには精霊に熟知したものも少なくないはず。

生きて故郷に帰るために精霊との絆は重視されているとされる船乗りが、精霊に対して何の見識もない?

あり得ない、そう疑念がわいた。

ベテランの船乗りが精霊に対して一番身近な、無事な航海を祈願してあまりある神に等しき存在に対しての知識が乏しいなど考えられない。

「…………」

ティアヌは悲しげにうつむく。


「どうやらこれが門のようね」

どうみても巨岩にしかみえないが、貼りついた古代貝や生物らしき化石。

それらをとりのぞけば門としての体裁は保てるだろうが、いかんせん降り積もった堆積物は数億年以上の多岐にわたるもの。

堆積物だけでも古代を解明するうえでも化石として価値がある。

どれひとつとしてぞんざいには扱えない。

「これが本当に門はなのか?」

セルティガは疑って首をかしげる。

「俺には巨大な牡蠣のようにも見えなくもないが」

ぷっと思わず吹き出した。セルティガにしては的確な例えだ。

「そうよ。これが竜宮門。人間界と精霊界をつなぐ唯一の入り口よ」

「あれは?」

その前には何かがいる。

「お待ちかねよ」

「誰が?」

遠目であるが、水の精霊ザルゴンだ。

「さ、出発の準備よ、急いで」

「ぉ、ぉぃ。切り捨てかたが容赦ねぇな、ったく」

するとマグマドンの長老とおぼしき老人が久方ぶりに腰をおり、錫杖をふる。


【最高の礼をもってその願いに応じよう。水の精霊王と条約を結ぶがいい。門は常に汝の行く手に開かれている知るだろう】


船を取り巻くマグマドン、もとい、人魚たちが手を振っている。


【行くがよい】

背を折る必要性のなかったマグマドンの長老が腰を折っている。

呪いを解いてよかったのか否か。

大丈夫?  とも違うし、手を貸しますか、とも違う。

「ぁ、ぁの…………」

戸惑っていると

【行け!】


シャランと空に丸を描いた錫杖は北東をさす。





【ありがとう呪いを解いてくれて】

マグマドンたちが水門までの進路をあけ、一本の花道をつくりあげた。

【】

【】

その道を櫂をこぎながらマディソン号はゆっくりと前進。

船員たちの顔はどこか誇らしげに


水門を前にするとティアヌは停止の合図をおくり、船は静かに停止した。

【よくぞ来たな、時を紡ぐ子よ】

「お待たせしたかしら」



【いいや、そうでもない。条約書を】

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