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本編>第一綴:——
プロローグ D.S.
しおりを挟むとある修道院の西の部屋、といってもひどく狭くまるで牢獄のようなそこに、ひとりの老いた男がいた。保護という名目で半ば軟禁されている彼は、かつて王宮で音を用いて魔法を扱う奏術師をしていたのだというが、信じる者はいない。なぜならちょうど彼の代にあたるであろう頃の奏術師といえば、かのメーヘムがおり、あらゆる褒賞も栄光もすべて彼のもとにあったからである。
男がよく自死を企てるせいで、せっかく町の見渡せる窓には鉄格子が嵌められ、紐状のものも刃物も部屋から排除されていた。男はもはや生ける屍であったというのに。
ある日のことだった。修道女がいつものように食事を持って渡り廊下を歩いていたとき。ふと聞き知った音楽が、彼女の耳をかすめていった。穏やかな、しかしどこか荒々しさのある旋律。メーヘムの編んだ曲のひとつ。
彼女は足をはやめた。曲の名も意味も知らなかったが、その旋律に濃密な奏者の意思が込められているのを——死への意思を、凡人である彼女も悟ったがために。これは確かな、奏術師による演奏だった。
修道女が部屋の扉を叩く。返事はない。鍵はかかっていない。
演奏はその時には止んでいた。老人は、白と黒の鍵盤の上に伏し、息絶えていた。
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