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プロローグと序
出発先は南の森
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そういえば、と前置きをしてから、
「そういえば理源は何やってるんだ?」
とシルヴィアは聞いてみた。
「俺か?まあ旅の途中なんだけどよ、この街が気に入ったんでクエストでちょっと稼いで暮らしてんだよ」
「クエスト...」
シルヴィアにはこの言葉に聞き覚えがあった。
街の住民からの依頼を達成して報酬を受け取るというシステムだったはずだ。
ちょっとした物の採取などでは報酬などたかが知れているが、魔物の退治となると話は変わってくる。
しかし、当然危険もつきまとう。
この前仲間の中で最も強く、年長であった少年2人が魔物退治のクエストを試しに受けてみたが、危うく死にかけるとこだったと言っていた。
シルヴィアの脳裏に先ほどの光景が浮かぶ。
急いで逃げようとしていたが、はっきり覚えている。
あの大男が理源が軽く蹴っただけでひっくり返っていた。
もしかしたらこの男は手練れの者なのかもしれない。
「今は何が引き受けているのですか?」
興味を持ったセレーネが目を輝かせる。
「今は結構デカい...いやこれ言っていいのかな...?」
わざとなのだろうか。ものすごく勿体ぶった言い方だ。
そう言われるとどうしても気になってしまう。
「なんだよ、言えよ」
「ま、いっか」
すぐに理源は決めたようだ。
悩むフリだったのかもしれない。
「南の森に用があってよ、馬鹿デカい魔物を追い払えって依頼が来たんだよ」
少し間を置いて続ける。
「詳しい金額は言えねぇけどよ、しばらくは不自由はねぇな」
シルヴィアは少し考えた。
今がチャンスなのかもしれない。
こいつについて行けば、経験を積んで、自分の実力で食い扶持を稼げるようになるかもしれないのだ。
おまけに金になる物を得ることもできるかもしれない。
「なあ、それ私も連れて行ってくんねえかな?」
思い切って聞いてみた。
「その危なっかしいヤツの手前まででいいからさ」
「やめとけ」
しかし、理源は断った。
「子供が行くようなもんじゃねえだろ、死んだら元も子もねぇぞ」
「でもアンタ相当強いんじゃねえのか?」
「まあそうかもしんねえけどよ、守れる保証なんざどこにもねえぞ?」
なかなか頑固な男だ。
シルヴィアは悩んだ。
この絶好の機会、逃しては行けない気がする。
シルヴィアの野生の勘がそう言っているような気がした。
もちろん野で生きていた事など全くないが。
2人のやりとりを受けてセレーネも心配そうに言う。
「シルヴィアはほとんど街の外に出た事ないから、少し不安ね...」
(まずい...姉ちゃんにまで反対されると説得が...)
どうにか拒否されそうな流れを変えようとシルヴィアは思考を巡らせる。
しかしいい方法は思いつかない。
「ほらな、お前が死んだらお仲間達が悲しむだろ?」
小さなため息をついた理源が仲間の事を引き合いに出して諭す。
「まずは自分の身を自分で守る事が出来なきゃ話にならねえんだよ」
その言葉にシルヴィアが反応する。
自衛の術があれば同行を許可してもらえるのではないか。
これは賭けに出るしかない。シルヴィアはそう思い覚悟を決めた。
「自分の身ぐらい自分で守れる」
実際のところどうなのかは分からない。
しかしなるべく迷いを悟られないように毅然とした態度で理源を見つめた。
「...。」
理源は何も言わずにしばらくシルヴィアを見つめた。
全てを見透かすような視線を受け、
シルヴィアは自分の心が読まれているのではないかと思ってしまう。
やがて理源が何かを決めたような表情をする。
そして真剣な声で聞く。
「試してみるか?」
「自分の力が通用するかどうか」
「そういえば理源は何やってるんだ?」
とシルヴィアは聞いてみた。
「俺か?まあ旅の途中なんだけどよ、この街が気に入ったんでクエストでちょっと稼いで暮らしてんだよ」
「クエスト...」
シルヴィアにはこの言葉に聞き覚えがあった。
街の住民からの依頼を達成して報酬を受け取るというシステムだったはずだ。
ちょっとした物の採取などでは報酬などたかが知れているが、魔物の退治となると話は変わってくる。
しかし、当然危険もつきまとう。
この前仲間の中で最も強く、年長であった少年2人が魔物退治のクエストを試しに受けてみたが、危うく死にかけるとこだったと言っていた。
シルヴィアの脳裏に先ほどの光景が浮かぶ。
急いで逃げようとしていたが、はっきり覚えている。
あの大男が理源が軽く蹴っただけでひっくり返っていた。
もしかしたらこの男は手練れの者なのかもしれない。
「今は何が引き受けているのですか?」
興味を持ったセレーネが目を輝かせる。
「今は結構デカい...いやこれ言っていいのかな...?」
わざとなのだろうか。ものすごく勿体ぶった言い方だ。
そう言われるとどうしても気になってしまう。
「なんだよ、言えよ」
「ま、いっか」
すぐに理源は決めたようだ。
悩むフリだったのかもしれない。
「南の森に用があってよ、馬鹿デカい魔物を追い払えって依頼が来たんだよ」
少し間を置いて続ける。
「詳しい金額は言えねぇけどよ、しばらくは不自由はねぇな」
シルヴィアは少し考えた。
今がチャンスなのかもしれない。
こいつについて行けば、経験を積んで、自分の実力で食い扶持を稼げるようになるかもしれないのだ。
おまけに金になる物を得ることもできるかもしれない。
「なあ、それ私も連れて行ってくんねえかな?」
思い切って聞いてみた。
「その危なっかしいヤツの手前まででいいからさ」
「やめとけ」
しかし、理源は断った。
「子供が行くようなもんじゃねえだろ、死んだら元も子もねぇぞ」
「でもアンタ相当強いんじゃねえのか?」
「まあそうかもしんねえけどよ、守れる保証なんざどこにもねえぞ?」
なかなか頑固な男だ。
シルヴィアは悩んだ。
この絶好の機会、逃しては行けない気がする。
シルヴィアの野生の勘がそう言っているような気がした。
もちろん野で生きていた事など全くないが。
2人のやりとりを受けてセレーネも心配そうに言う。
「シルヴィアはほとんど街の外に出た事ないから、少し不安ね...」
(まずい...姉ちゃんにまで反対されると説得が...)
どうにか拒否されそうな流れを変えようとシルヴィアは思考を巡らせる。
しかしいい方法は思いつかない。
「ほらな、お前が死んだらお仲間達が悲しむだろ?」
小さなため息をついた理源が仲間の事を引き合いに出して諭す。
「まずは自分の身を自分で守る事が出来なきゃ話にならねえんだよ」
その言葉にシルヴィアが反応する。
自衛の術があれば同行を許可してもらえるのではないか。
これは賭けに出るしかない。シルヴィアはそう思い覚悟を決めた。
「自分の身ぐらい自分で守れる」
実際のところどうなのかは分からない。
しかしなるべく迷いを悟られないように毅然とした態度で理源を見つめた。
「...。」
理源は何も言わずにしばらくシルヴィアを見つめた。
全てを見透かすような視線を受け、
シルヴィアは自分の心が読まれているのではないかと思ってしまう。
やがて理源が何かを決めたような表情をする。
そして真剣な声で聞く。
「試してみるか?」
「自分の力が通用するかどうか」
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