小さなベイビー、大きな野望

春子

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雷雨

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朝から、土砂降りの雨に、雷を放つ天気。
窓に叩きつけるような雨粒と見える雷の光。
「まま。雷が暴れてるよ!」
「私が落としてるのではないのよ。」
「あれ、ままの落とす雷にそっくり。」
「あら。よく見なさい。私のはもうちょっと優美な形よ。あれは自然な荒々しい形じゃないの。」
「古狸の家に落ちれば良いのに。」
「それはわかるわ。」
「あなたたち、物騒な話をするんではありません。」
雷雨が激しいため、庭遊びが出来ないリーサは、暇だよとリビングで、ダラダラ。
「ツェリ、リーサ、デヴィットの事を古狸と言うの、やめなさい。例え、腹黒でも、そのような名前で話すのはやめなさい。」
「あらお母様。名前を呼ぶなんて嫌だわ。」
「古狸って他に名前あるの?まま。見て、あれ、すごいピカピカ。」
「やけに近くに落ちたわね。古狸以外の名前なんてあっても、関係ないわ。」
轟く雷に、まま、雷を止めてと言うリーサに、自然的なものは、範囲外よと呟く。


「やけに近くに落ちたね。今のは。」
近くに湖畔があり、そちらに落ちたよう。
「季節外れの雷雨で激しいな。明日は、湖畔辺りまで行こうかと思ったけど、延期にした方がいいかな?」
「明日の様子見で良いじゃない?」
デニエルとマルクス、サラトガが話す。
明日は、湖畔まで行き、ピクニックがてら、水遊びを予定していた。



我が家の肉体派であるロクサスとガルナルク、ジャッキーは、リーサが邪魔してこないように、地下のフロアで鍛練中。
相手はまさかのココ。
ココは優雅に、メイド服を汚すことなく、翻し、颯爽と、攻撃を受け流している。
「ロクサス。もう少し、体を柔軟にしては如何です?ガルナルクに関しましては、力で押し通し過ぎて、単調でございます。捻りを入れてくださいませ。ジャッキー
。前回より、俊敏に動かれて…よう成長しましたね。」
「ぼっちゃま呼びでは、まだまだだな。」
息を切らすロクサスたち。
ココは、ぼっちゃま呼びをするのは、まだまだだと言う証拠。
我が子でも、ある程度は、我が子をうちの坊やと呼んでいたらしい。
思春期であれば、恥ずかしかったろう。
「ココが焦るように、体勢を崩したことってないよね。」
「そうでも御座いません。スペンサーぼっちゃまが悪戯をなさった時のペイント事件では、動揺のあまり、私としたことが、スペンサーぼっちゃまを捕まえるのに、ついつい、あのような醜態を晒してしまい…。」
兄達は一斉に目を逸らす。
今よりも、物分かりがわかっていなかったスペンサーによる悪戯は、衰えなく、祖父母宅でやらかした。
スペンサーが、ペイントにハマり、貴重なものに塗りたくっている様に、一同、固まり、ココは、はしゃいで逃げまくるスペンサーを捕まえるべく、普段はやらない肉体強化を体にかけて、スペンサーを捕獲した。
「リチャードからも叱られて…動揺をし、あのような真似を晒すとは…このココ、まだまだ、精神が未熟…。」
「なんか…本当にうちの愚弟がすいません…。」
そう呟いてしまう。
だって、あの時のココの顔が忘れられない。


「知ってるか?ココは、あの雷が落ちるより、早く、すげえ怖いぞ?」
「足が早いの?」
スペンサーが余計な話をリーサに告げている。
「年の割りにすげえ、早いし、怖い!リチャードの説教もやだけど、ココのおいかけっこはら命狩られるんじゃないかってほど、怖い!」
「ハーバネスより?」
ハーバネスは、フランツの愛馬で駿足を誇る馬だ。
「体感は、同じくらい。」
リーサは、驚愕し、目をまん丸。


「ココ、すごい!あのハーバネスと同じぐらいに早いんだって!」
「スペンサーはよっぽど、印象に残ったんだね。」
「サラトガがスペンサーを庇わなきゃ、あの子、あの程度で済んでないわよ。」
寝る前にはしゃぐ娘に、早く、ベッドに入りなさいと促される。
「まあ…ハルベル代々の当主の肖像画に、髭を描くのはダメだけどね。」
敬愛すべき、家の代々の当主の顔に文字通り、髭面を描いたスペンサーに、ココが叱るのも仕方ない。しかも、よりにもよって、消せないペイント材料で。
双子たちは大笑いしていたが、大人はそうはいかない。まだ良かったのは、まだリーサが産まれてなかった事だろう。もし、リーサが産まれて、見ていたなら、それ以上、やらかすに決まっている。
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