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第2話
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朝のルーティンがある。
目覚めたら、顔を洗って、髪を縛る。髪留めは、母手作りの髪留めで、お守りの意味を示す細工が施されている。
サヤには、実兄が二人いる。サラヴェールとサーシャと言う兄で、二人とも、母のように、家具作りの専門職人になりたいと暇さえあれば、母の工房で練習中。
朝早くから、サラヴェールもサーシャも集中しながら、木彫りしている。
器用に、彫っていく兄らの横に座り、見つめる。彫刻刀でスルスルと簡単に削る様は、見ていて、飽きない。
二人とも生真面目で、作業に集中してると、回りに気づかない。
「おまえたち。朝御飯だ。来い。」
異母兄のマーシャル。龍神の血が濃いようで、長身で筋肉質。冒険者を目指している。
「もうそんな時間か。」
「行くか。」
片付けをする兄たち。彫刻刀と持ち手も飾り細工が施され、祖父からのプレゼント。一人前になれるようにと願掛けされている。
「マーシャル。抱っこ。」
「なんだ?お姉さんになったって、あんなに自慢してたくせに。」
と言いつつ、抱き上げる。
「サヤだから。」
「お姉さんになりたいなら、好き嫌い無くせよ。」
実兄に言われるが、気にしない。
同じ、ずんぐりむっくりな体型じゃないか。
食卓に向かうと、第一の妻であるアビゲイル。
アビゲイルはエルフである。
にっこり、包容力があり、豊満な体つき。
アビゲイル特製の料理が並べてある。
パンに、肉団子スープと玉ねぎのマリネ。
アビゲイルの息子の二人は、一人は冒険者、一人は、薬師でギルドで働いてる。
「おはよう。」
「おはよう。」
着席。母と我が愛しきニドラを抱っこしてるマリアがやって来た。
「ニドラ、抱っこする。」
「食べてからにしなさい。あと何度も言うけど、ニドラは、サヤのぬいぐるみじゃないの!」
「妾は、ニドラが可愛がられると母として、嬉しいが。食べてからにしなさい。」
「サヤはニドラに夢中ね。」
母親たちは、サヤの相変わらずのニドラへの溺愛に笑う。
「ねえ。あれは触れるべき?サーシャ。」
「手紙だけ、寄越してきたな。多分、アルビスが出せって催促したんだよ。」
父は冒険者をしていて、あちこち、旅をしながら、金を稼いでる。元々の仲間と、実の息子であるアルビスが監視役としていて、近況や仕送りなど、やってくれる。アルビスは苦労人だと思う。
父からの手紙には、いまは南の島にいて、ダンジョンに向かうと書かれていた。欲しいものがあれば、書いて、ギルドに寄越すようにと書いてある。
「欲しいもの??なら、新しい生地と糸を買って来てっていって。」
「ずるいぞ。なら、俺は、南の島でしか、栽培してない木材を買って来て。」
「俺は肉が欲しい。」
次々に欲望を話す子供らに、大人しく!と注意。
「手紙も良いが。そろそろ、顔を見せてくれても良いと思う。」
「そうねえ。」
「うん。」
母が父に逢いたいらしい。まあ、わからなくもない。冒険者をしてる父はほとんど、留守。家族を養うために、任務をこなしてるが、子供たちは、また新しい嫁が出来るのではないかと、秘密裏に話してる。まあ、アルビスがいるから無理か。
食事を終えたら、畑に水やりと雑草を引っこ抜く。
放し飼いにしてる鶏が呑気に散歩してる。
「サヤ。」
グリードだ。包みを持っている。
「おはよう。」
「おう。お前んとこの卵、分けてくれ。代わりに家のミルクやるよ。」
ここらでは、物々交換も当たり前。わかったと鶏舎に向かう。朝、産んだ卵を何個か、拝借。
グリードの家で飼ってるのは、牛である。
「朝に卵が出てこなかったガッカリ感は、半端ない。」
「在庫なかったの?」
「昨日、卵かけご飯をおかわりしたから。滅茶、叱られたわ。」
「卵かけご飯?ああ。あれね。慣れたら、美味しいのにね。」
馴染みない卵かけご飯。教わり、やったら、サヤの口にはあったが、家族からは、見たことない調理法に驚き、食べるなと叱られた。
マーシャルからは、美しくないと言われた。
食べれたら良くないか?と思う。
「米や野菜も似たようなのがあるし、困らんかなって思ったけど、ちょっと懐かしんでやると、批判がすげえ。」
昔、呼び出された異世界人が頑張って、故郷の味を探し回ったとよく聞く。
食材そのものは、受け入れられても、味付けや調理法には、時に批判対象になり得るのだ。
「お味噌汁に入れたら、かかに叱られた。ととはお前、わかってるなって言われたのに。」
「ねこまんまな。ちょっと汚いけど、うまいってのは、よくあるもんだって。こっちでは、粥とか、リゾット位だもんな。米に汁をぶっかけるの。」
母と姉から汚い食べ方をするんじゃないと、ビンタされた。まだビンタされた痛みが残ってる気がする。
「世知辛いぜ。世の中。」
ポンッと心優しい親友は、肩を叩いた。
目覚めたら、顔を洗って、髪を縛る。髪留めは、母手作りの髪留めで、お守りの意味を示す細工が施されている。
サヤには、実兄が二人いる。サラヴェールとサーシャと言う兄で、二人とも、母のように、家具作りの専門職人になりたいと暇さえあれば、母の工房で練習中。
朝早くから、サラヴェールもサーシャも集中しながら、木彫りしている。
器用に、彫っていく兄らの横に座り、見つめる。彫刻刀でスルスルと簡単に削る様は、見ていて、飽きない。
二人とも生真面目で、作業に集中してると、回りに気づかない。
「おまえたち。朝御飯だ。来い。」
異母兄のマーシャル。龍神の血が濃いようで、長身で筋肉質。冒険者を目指している。
「もうそんな時間か。」
「行くか。」
片付けをする兄たち。彫刻刀と持ち手も飾り細工が施され、祖父からのプレゼント。一人前になれるようにと願掛けされている。
「マーシャル。抱っこ。」
「なんだ?お姉さんになったって、あんなに自慢してたくせに。」
と言いつつ、抱き上げる。
「サヤだから。」
「お姉さんになりたいなら、好き嫌い無くせよ。」
実兄に言われるが、気にしない。
同じ、ずんぐりむっくりな体型じゃないか。
食卓に向かうと、第一の妻であるアビゲイル。
アビゲイルはエルフである。
にっこり、包容力があり、豊満な体つき。
アビゲイル特製の料理が並べてある。
パンに、肉団子スープと玉ねぎのマリネ。
アビゲイルの息子の二人は、一人は冒険者、一人は、薬師でギルドで働いてる。
「おはよう。」
「おはよう。」
着席。母と我が愛しきニドラを抱っこしてるマリアがやって来た。
「ニドラ、抱っこする。」
「食べてからにしなさい。あと何度も言うけど、ニドラは、サヤのぬいぐるみじゃないの!」
「妾は、ニドラが可愛がられると母として、嬉しいが。食べてからにしなさい。」
「サヤはニドラに夢中ね。」
母親たちは、サヤの相変わらずのニドラへの溺愛に笑う。
「ねえ。あれは触れるべき?サーシャ。」
「手紙だけ、寄越してきたな。多分、アルビスが出せって催促したんだよ。」
父は冒険者をしていて、あちこち、旅をしながら、金を稼いでる。元々の仲間と、実の息子であるアルビスが監視役としていて、近況や仕送りなど、やってくれる。アルビスは苦労人だと思う。
父からの手紙には、いまは南の島にいて、ダンジョンに向かうと書かれていた。欲しいものがあれば、書いて、ギルドに寄越すようにと書いてある。
「欲しいもの??なら、新しい生地と糸を買って来てっていって。」
「ずるいぞ。なら、俺は、南の島でしか、栽培してない木材を買って来て。」
「俺は肉が欲しい。」
次々に欲望を話す子供らに、大人しく!と注意。
「手紙も良いが。そろそろ、顔を見せてくれても良いと思う。」
「そうねえ。」
「うん。」
母が父に逢いたいらしい。まあ、わからなくもない。冒険者をしてる父はほとんど、留守。家族を養うために、任務をこなしてるが、子供たちは、また新しい嫁が出来るのではないかと、秘密裏に話してる。まあ、アルビスがいるから無理か。
食事を終えたら、畑に水やりと雑草を引っこ抜く。
放し飼いにしてる鶏が呑気に散歩してる。
「サヤ。」
グリードだ。包みを持っている。
「おはよう。」
「おう。お前んとこの卵、分けてくれ。代わりに家のミルクやるよ。」
ここらでは、物々交換も当たり前。わかったと鶏舎に向かう。朝、産んだ卵を何個か、拝借。
グリードの家で飼ってるのは、牛である。
「朝に卵が出てこなかったガッカリ感は、半端ない。」
「在庫なかったの?」
「昨日、卵かけご飯をおかわりしたから。滅茶、叱られたわ。」
「卵かけご飯?ああ。あれね。慣れたら、美味しいのにね。」
馴染みない卵かけご飯。教わり、やったら、サヤの口にはあったが、家族からは、見たことない調理法に驚き、食べるなと叱られた。
マーシャルからは、美しくないと言われた。
食べれたら良くないか?と思う。
「米や野菜も似たようなのがあるし、困らんかなって思ったけど、ちょっと懐かしんでやると、批判がすげえ。」
昔、呼び出された異世界人が頑張って、故郷の味を探し回ったとよく聞く。
食材そのものは、受け入れられても、味付けや調理法には、時に批判対象になり得るのだ。
「お味噌汁に入れたら、かかに叱られた。ととはお前、わかってるなって言われたのに。」
「ねこまんまな。ちょっと汚いけど、うまいってのは、よくあるもんだって。こっちでは、粥とか、リゾット位だもんな。米に汁をぶっかけるの。」
母と姉から汚い食べ方をするんじゃないと、ビンタされた。まだビンタされた痛みが残ってる気がする。
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ポンッと心優しい親友は、肩を叩いた。
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