神に選ばれたのは、爆弾と俺だった。

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第一章

バレる

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 「──というわけで、お前の仮住まいが決まったぞ」

 イケオジ騎士こと、騎士団副長のダランが、苦笑混じりにそう言った。

 「おおっ……マジっすか!? 牢屋じゃなくて?」

 「牢屋よりは、な」

 紹介されたのは、魔法省の敷地内にある“調査員宿舎”の一室。
 最低限の家具と寝具、そして何より──個室! トイレ付き! 湯沸かし魔道具付き!

 「これが……文明の極み……!」

 ベッドにダイブしながら、リュウはまた泣いた。


---

 クロエから渡されたのは、識別用の銀製プレート。
 裏には名前とIDコード、そして「異界来訪者(監視対象)」の文字。

 「基本的には自由に外出して構いませんが、報告義務があります。無断でどこかに行けば、即拘束です」

 「わぁ……自由なんだか不自由なんだか……」


---

 その日の夕方。

 リュウは王都の街を、ガルドと一緒に歩いていた。
 監視魔法が追ってるらしいけど、見えなければ気にしない。

 「……なあ、リュウ」

 「ん?」

 「……お前、ほんとに異世界から来たのか」

 「うん、ガチで。ゲームとかアニメとか読んでたら異世界転移した。テンプレすぎて逆にビビるやつ」

 「……じゃあ、これからどうするんだ」


---

 リュウは立ち止まり、目の前の王都の喧騒を見渡した。

 店の呼び声。
 武具を抱えた冒険者。
 歌を歌う吟遊詩人。
 魔導具屋に並ぶ、不思議な道具たち。

 そして、空には飛竜の姿。


---

 「……この世界で、生きる」

 リュウは言った。

 「できることなら、人間として、ちゃんと。
 そして、俺をここに“送った”何かを、見つけたい」


---

 「……ふっ、らしくねぇな。お前が真面目なこと言うと寒気がするわ」

 「ひでぇなおい!?」


---

 それでも。
 少しずつ、“異世界”という現実が、
 リュウの中で“日常”へと変わり始めていた。


---

 その夜、宿舎のベッドで寝転がりながら、
 リュウはふと思い出す。

 「そういえば……スキルポイント、まだ使ってなかったな」

 爆心地で得た7500ポイント。
 そのうち、使ったのはまだ半分もない。

 「……そろそろ、戦えるだけじゃダメだよな。生きていくためのスキルも……」


---
翌朝。

 リュウは魔法省の応接室に呼び出されていた。

 クロエが無表情に用件を読み上げる。

 「……ということで、王都南区の地下で、不可解な魔素反応が確認されました。
 調査班を出す前に、あなたの“対応力”を見せていただきます」

 「対応力ぅ?」

 「はい。“爆心の旅人”としての」

 「やめろその通称ぉ!」


---

 さらにもう一人、呼ばれたのは――

 「……まさかの、オヤジかよ!!」

 「おう、俺もヒマだからな」
 ガルドがガハハと笑いながら現れる。

 「お前一人じゃ不安だってさ。まあ、俺は戦えるし、ついでに監視役ってとこだな」

 「見張られてるってことじゃねーか!」


---

 目的地は王都南区の外れ、廃工場の地下。

 過去に倉庫として使われていたらしいが、今は無人。
 しかし最近になって、魔素反応が突如発生したとのこと。

 「……まあ、地下で変なものが出てきたって話、RPGでもよくあるやつだよな」

 「安心しろ、地下にいるのはスライムとかコウモリ程度だろ」

 「油断フラグ立てんなよオヤジ……!」


---

 入口は鍵がかかっていたが、魔法省から受け取った“調査用通行符”をかざすと、
 鉄の扉が静かに開く。

 中はひんやりと冷たい空気が漂っていた。

 地下へ続く階段を下りながら、リュウは警戒を強める。

 「【視覚強化】、【聴覚強化】、【感知スキル】……っと」

 「チート感あるなそれ……」


---

 そして地下通路に踏み込んだその瞬間――

 ──ドゥゥン……!!

 空間が、低く鳴った。
 地鳴りのような重低音と共に、魔力の波が足元から吹き上がってくる。

 「な、なんだコレ!? 完全に“何かいる”ぞコレ!?」

 「魔力が……濃すぎる。明らかに自然のものじゃねぇ……!」


---

 そして、奥の部屋から這い出てきたのは──

 漆黒の甲殻をまとった獣のような影。

 四本脚、鋭い牙、全身から湧き上がる闇の魔素。

 「……シャドウビースト!? こんな市街地近くに……っ!」

 「うわっ、なんかRPGの中盤ボスみたいなのお出ましになられたぞ!?」


---

 「来るぞ、リュウ!!」

 「よっしゃあああ!! 初任務がいきなり本気戦じゃねぇか!!」

 リュウの【光魔法Lv10】が輝きを放ち、
 ガルドが剣を構えて突っ込む。

 異世界での“初任務”は、思いがけず激戦の幕開けだった――!


---
「来るぞ、リュウ!」

 「っし、構え──あっオヤジもう突っ込んでる!?」

 ガルドは剣を構えたまま、シャドウビーストへ一直線に突撃していた。


---

 「うおおおおお!!」

 「ちょっ、まだ位置取りとか魔法の準備とかあるんだけど!!?」

 だが、さすがは歴戦の戦士。
 ガルドの一撃は確かに命中していた──が。

 ──ギィン!!

 甲殻が硬い。鋼のように。

 「ぐっ……こいつ、思った以上に……!」

 シャドウビーストが唸る。
 反撃の爪が振り下ろされ、ガルドはバックステップで回避。

 「よし、ここで俺が──」

 と、リュウが魔法を構えた瞬間――

 「避けろォオオ!!」

 ガルドが吹き飛ばされて、一直線にリュウの方へ飛んできた。

 「ってぇぇえ!? いやいやいや今撃ったらオヤジ直撃だよねコレ!!?」


---

 一瞬の判断。
 魔法は撃てない。
 ガルドもヤバい。

 なら──

 「ちくしょう、もーいいやっ!!」

 リュウは全力で踏み込む。
 【筋力強化】【加速】【空歩】【反応強化】、全解放。

 踏み込み一発で地面を砕き、音を置き去りにして接近。


---

 「──喰らえっ!!!」

 拳。

 拳だった。

 ストレート。真正面からのストレート。

 シャドウビーストの顔面に──直撃。


---

 「ゴッ!!」

 鈍い音と共に、
 獣の頭部が、爆散した。

 黒い肉片が飛び散り、闇の魔素が煙のように消えていく。


---

 沈黙。

 崩れ落ちるガルド。
 立ち尽くすリュウ。
 びっしりと全身にへばりついた肉片。

 「……あれ?」

 リュウが首をかしげた。


---

 「え……ちょ、え? え? 手加減したんだけどな今?」

 バフ重ねた全力踏み込み+普通のストレートのつもりだった。

 でも結果は──即死。


---

 「……お前、今……拳で……?」

 立ち上がったガルドが、顔面を真っ青にして言った。

 「いや、えっと……ちょっと反射的に?」

 「いやいやいやいや!! 頭吹っ飛んだぞ!?」

 「ちょ、初任務でこんな演出求めてないんですけどおおおお!!」


---

 リュウの初任務、
 魔法を一発も撃たずに終わった。

魔法省・任務報告室。

 椅子に座るリュウの顔には、まだ黒い肉片がちょっと残っていた。

 対面にいるクロエの表情は、
 冷静……だが、目がものすごく鋭い。


---

 「……魔物は、撃破済み。被害は?」

 「ん、えーと……地下の床がちょっと割れたくらいですかね」

 「魔法は?」

 「使ってません」

 「武器は?」

 「拳です」

 「……」

 クロエの手が、そっと書類にメモを取る。
 (たぶん「こいつ戦闘方法が原始的」って書いてる)


---

 「どうして拳を選んだんですか?」

 「いや、ガルドが吹っ飛んできて、魔法撃ったら巻き込むと思って、ええいもうぶん殴れ!って……」

 「結果は?」

 「……頭が、爆ぜました」

 「なるほど……」

 クロエは眼鏡の位置を直す仕草で、殺意をこめてきた気がした。


---

 ガルドが隣でフォローする。

 「……ただの拳じゃなかった。動きも一瞬だったし、あれはもはや“斬撃”だった」

 「いや拳ですけどね!?」


---

 そこへ、静かに扉が開く。

 「よろしいでしょうか?」

 現れたのは、魔導長アリエル。
 クロエですら背筋を正す、その威圧感。


---

 「リュウ」

 「へ、はいっ!」

 「――あなた、魔法が必要ないのでは?」

 「……へ?」

 アリエルは、静かに言う。

 「“人を超える”とは、力か、魔法か、思考か。
 あなたは今、それを混乱させる存在として記録されました」


---

 リュウは苦笑しながらも、ぽつりと漏らす。

 「俺、異世界転移して、何したいって……普通に生きたいだけなんすよ……」

 「拳で頭を爆散させる普通の人間……ね」

 クロエが静かに突っ込んだ。


---

 そのまま、任務報告は終わり。
 だが帰り際、アリエルがリュウにだけ告げる。

 「近日、もう一つ調査任務を予定している。
 “異界の気配”がある遺跡だ。君には適任かもしれない」

 リュウは反射的に笑ってごまかす。

 「またか……また巻き込まれるパターンかコレ……」


---

 任務完了。だがリュウの物語は、
 “この世界の秘密”へと、少しずつ近づいていく。


---

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