神に選ばれたのは、爆弾と俺だった。

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第一章

王都にて

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初任務から一夜明けた翌日。
 リュウは宿舎を飛び出し、王都の街へと繰り出していた。

 目的は一つ。

 「──うまいもん食いてぇ!!」


---

 魔法省から支給された“銀貨数枚”の予算。
 リュウにとって、それは夢のような通貨。

 露店で焼き鳥のような串焼きを買い、
 謎の黄色い実をくり抜いたスープをすする。

 「うめぇぇぇっ……!ちゃんとした飯……文明って素晴らしい……」

 涙を流す旅人。


---

 街を歩けば、あちこちに魅力的な看板が並んでいた。

 ・《ルミアの魔道具店》
 ・《鍛冶工房ゴルドアックス》
 ・《甘味処オリーフェ》
 ・《冒険者ギルド・中央支部》

 「なんか、ちゃんとした“異世界”してるなぁ……」


---

 そんな中、路地裏の方で、見覚えのある背中を見つけた。

 「……オヤジ?」

 ガルドだった。
 市場で適当に買った野菜を抱え、ゆっくりと裏通りへ向かっている。

 「……買い物? あんなゴツいのに?」


---

 ついて行くと、そこは王都南部の貧民街だった。

 ガルドは、そこにあるボロ屋の前に立ち、小さな袋を手渡していた。

 出てきたのは、少女。十歳くらい。
 病気らしく、顔色は悪いが、満面の笑みで「ありがとう、おじちゃん」と言う。


---

 リュウは、声をかけた。

 「……なんだよ、オヤジ。慈善活動?」

 「おう、バレたか」

 「てか、なんでそんなことを……?」


---

 ガルドは壁に寄りかかり、短く答えた。

 「……昔な、俺……騎士団だったんだよ。今より若くて、血の気も多くてな」

 「え? え? お前、元騎士なの!?」

 「副長までいった。でもな、やりすぎて……命令無視して、敵地に一人で突っ込んで……部隊を潰された。そんで追放よ」

 「……」


---

 「そっからは流れ者だ。傭兵やって、賞金首追って、酒飲んで……」

 「でも、いろんな奴に助けられて、今はこうして生きてる」

 「だから、ちょっとだけ返してるんだ。こういう形でな」


---

 リュウは、黙って聞いていた。
 その言葉に、重みがあった。

 ガルドは急に照れ臭そうに言う。

 「……ったく、お前といると昔語りが増えるな。
 よっぽど、俺が“喋りたい気分”にされてんのかもな」


---

 リュウはにっと笑った。

 「うん、でもオヤジ、思ったより“カッコいい”な」

 「バッ、バカ言うな、うるせぇ……!」


---

 王都という大きな舞台で、
 リュウのまわりには、少しずつ“信頼できる人間”が増えていく。

 それは、“この世界で生きていく”という覚悟を、
 自然と根付かせていくのだった。


---
数日後。

 リュウは再び魔法省に呼ばれていた。

 「えーと、何の用事でしょう、クロエさん」

 「人手不足です。あなた、もう一人引き取ってください」

 「えっ」


---

 案内されたのは、
 魔法省の地下にある“警備管理区画”。つまり、半牢屋。

 金属製の扉が開かれ、中にいたのは――
 銀髪で、鋭い目つきの青年だった。

 年は二十代前半くらい。
 粗末な囚人服のまま、背を壁に預けてふてぶてしく笑っていた。

 「……こいつ?」

 「名はライガ・クロス。剣術に長けた犯罪者です。過去に反政府的な組織に所属し、街で騒動を起こしました」


---

 リュウは距離を取りながら、ひそひそと尋ねる。

 「……いやいや、なんで俺がそんなの引き取るの!?」

 「彼には才能があります。そして、能力も高い。
 今後あなたには調査任務が増える。同行者として、戦力が必要です」

 「いやあの、もっと普通の人でお願いしたいんですけどぉ……」


---

 その時、ライガがぼそっと言った。

 「“爆心の旅人”だってな。お前」

 「……うわ、知ってるの!?」

 「こっちはヒマだからな。噂くらいは耳に入る」

 立ち上がったライガは、
 リュウの顔を真正面から見据えて、静かに言った。

 「俺を連れてけ。戦える。それが条件だ」


---

 クロエは静かに告げる。

 「彼は“試験的同行”の扱い。問題を起こせば即拘束。
 あなたの判断で連れて行くかは自由ですが、責任もあなたにかかります」


---

 リュウは少し考えた。

 危険かもしれない。信用できるかわからない。
 でも──

 「……だったら、見せてもらうか。戦えるってところを。
 信じるかどうかは、それからだ」


---

 ライガがニッと笑った。

 「いい目してるじゃねぇか、“異世界の坊ちゃん”よ」


---

 こうして、
 リュウのパーティに加わった新たな仲間――
 それは、かつて罪を犯した、過去を背負う剣士だった。


---
早朝、王都の南門前。

 そこには馬車ではなく、徒歩前提の簡易装備が支給された隊商が待っていた。

 遺跡の場所は王都から南東、古代戦争時代に“消えた村”と呼ばれた地域。
 魔素が歪み、魔物の発生率も高い。騎士団の進入も最低限に抑えられている。


---

 「……よっしゃあ、旅って感じしてきたな!」

 リュウが背伸びしながら言えば、横のガルドが呆れた顔。

 「テンション上がってる場合か。今回は“あの魔導長”直々の依頼だぞ。慎重にいけ」

 そして、最後尾には――

 「……ルールは守る。命令は聞く。ただし、逃げ道は確保する」

 無表情でそう言ったライガ。
 変装のためフードを深く被っているが、剣の柄は常に手元にある。


---

 「……信用してないんだな、俺のこと」

 「そりゃまあ、元犯罪者ですし?」

 「それを真正面から言えるのは嫌いじゃねぇな。坊ちゃん」


---

 道中、森を抜け、荒れた谷を越え、
 半日ほどで目的地の“遺跡らしきもの”が見えてきた。

 「……あれか?」

 そこには、崩れかけた石柱と苔むしたアーチ、
 そして空気を切るような、異質な魔力の圧が漂っていた。


---

 「これ……ただの遺跡じゃねぇな。空間が歪んでる。結界か?」

 「クロエの話じゃ、“異界由来の構造”らしい。解析も進んでないってさ」

 リュウはステータスを確認。
 まだポイントは1000以上あるが、【感知スキル】と【魔力制御】を念のため最大にしておく。


---

 入口に近づいた瞬間――

 「……うっ」

 全員の頭に“ざらついたノイズ”のような感覚が走る。
 まるで、耳元で何かが囁いたような――

 《かえれ……ここは……ひとのばしょ……では……》


---

 リュウが震える息を吐く。

 「お、おい……今の、聞こえたよな……?」

 ガルドとライガは無言で頷く。

 ライガがぽつりと言う。

 「……この遺跡、“生きてる”ぞ」


---

 初めての、三人での任務。
 遺跡は、ただの古代の廃墟ではない。

 “異世界”と“この世界”の境界が、揺らぎ始めている。


---
石造りの階段を降りるたびに、空気が冷たく、湿っぽくなっていく。
 壁に彫られた文字は見たことのない言語。
 床には黒いシミが所々に広がり、カビのような魔素が漂っている。

 「……これ、絶対出るやつじゃん……」

 リュウがぼそっと呟くが、誰も冗談として受け取らない。


---

 そして、奥の扉がゆっくりと開いた。

 ――そこには、うごめく“人型の影”が十数体。

 肉が腐り、眼球が崩れ落ちたもの。
 関節が逆に折れたまま這い回るもの。
 腸を引きずりながら笑っているもの。

 「……グール、か……」

 ガルドが低く唸る。


---

 不意に、影のひとつがリュウに気づいた。

 瞬間――全グールがこちらを向いた。

 「──あっヤバいヤバいヤバい!!」

 歯をむき出しにし、獣のように叫びながら、
 異形たちは一斉に駆けてくる。


---

 「く、来るなっ!」

 反射的に踏み込み、リュウは拳を構える。

 ストレート。

 グールの顔面にヒット。


---

 その結果──

 グール、爆☆散。

 ――バッシャアアアアア!!!

 黒く腐った肉片と体液が、半径5メートルに飛び散った。


---

 「ぎゃああああああああ!!!」

 「うわッ!リュウ避け──うわぁ……」

 リュウの身体中に、腐った内臓と脳みそと血液がべったり。

 顔にも口にも、入った。

 「がはッ……がふッッ……うえええええええ!!!」


---

 「おいリュウ!魔法!魔法で洗え!!」

 「水魔法……ッ!水魔法ォオオ!!」

 【水魔法Lv5】を使用し、高圧洗浄レベルで全身を流すリュウ。

 肉片が床に叩きつけられ、ぬるぬると流れていく。
 その間もグールは次々と迫ってくる。


---

 「もうやだこの世界!!グール爆散はトラウマ確定!!!」

 「後ろッ!来るぞ!」

 ライガが飛び込み、剣で一体を切り裂く。
 ガルドも槍を使い、三体をまとめて吹き飛ばす。

 だが数が多い。


---

 リュウは涙目で叫ぶ。

 「うおおおお!!魔法だ魔法!!今度は魔法でやる!!」

 【光魔法Lv10】を展開、
 次々と【閃光弾】を放ち、グールたちを焼き払う。

 腐った肉が焼ける臭い、断末魔、這い寄る手足。

 完全にホラー。


---

 戦闘が終わった後。
 リュウはその場にしゃがみ込み、
 ブルブル震えながら呟いた。

 「……拳で殴っちゃダメ……ぜったい……」

 「お前、よく言ってるけど、今回ほんとに学べ……」

 「俺のトラウマリスト、爆発→孤独→ゴースト→グールの汁、になった……」


---
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