ハッタリと適当で世界を救う ~泣きそうだけど最後まで貫く~

モデル.S

文字の大きさ
28 / 46
第2章

帝国の後処理

しおりを挟む
俺は帝国に行くことなく、王国の宮殿にて帝国の後処理を任された。

(いやいや、俺は政治なんて全く分からないんだけど!?)

 だが、**「賢者様が統治の采配を振るうべきだ!」**と、王国の重臣たちが騒ぎ出し、俺が決める流れになってしまった。

「賢者様!! 帝国の混乱を収めるため、新たな"頭"を決める必要があります!!」

「帝国の貴族は未だに反発しており、国民も不安を抱えています!!」

「どうか、賢者様のご英断を!!」

(知らねぇぇぇぇぇ!!!)

 俺は必死に頭を回転させる。
 今までは適当なことを言えば、部下たちが勝手に深読みしてくれたが――

 今回ばかりは「帝国のトップ」を決めないといけない。

(さすがに、これは適当に決めるとヤバい……)



「……"国民に人望の厚い者を選べ"」

「「「おおおおお!!!!!」」」

(頼む、また勝手に深読みしてくれ!!)

「つまり!! "民衆が支持する者を据えることで、帝国の安定を図る"ということですね!!?」

(そういうことにしといてくれ!!!)

「では、帝国の民から支持を集める者を調査し、候補者を選出します!!!」

(よし、俺が考えなくて済む!!)

 そして、数日後――

「賢者様!! "フリード・バルゼン"という人物が最有力候補として挙がりました!!」

「フリード・バルゼン……?」

 その名を聞いたのは初めてだったが、報告を聞く限り、帝国の民衆から絶大な支持を集める政治家らしい。

「彼は元帝国の宰相補佐であり、民衆の生活改善に尽力していた人物です!!」

「王国軍による占領後も、彼は帝国民のために尽くし、今や"帝国の希望"とまで言われています!!」

(えっ……めちゃくちゃ良い人選じゃん!!)

「彼を帝国の新しい"頭"として任命し、王国の意向を伝えれば、帝国統治は円滑に進むはずです!!!」

(……よし、これで決まりだ!!!)



「賢者様、フリード殿を宮殿にお招きしました」

 王国の宮殿の謁見室に、一人の壮年の男が現れた。

 身なりは質素で、強い意志を感じさせる眼差し。
 いかにも**「国民のために尽くす」タイプの政治家**といった風貌だった。

(おおお……こういう人がトップになるなら、俺も楽できそうだな!!)

 俺は偉そうに座りながら、ゆっくりと口を開いた。

「……"お前が帝国をまとめよ"」

「「「おおおおお!!!!!」」」

(頼む、また勝手に深読みしてくれ!!!)

 すると、フリードは静かに頭を下げた。

「……この大役、謹んでお受けいたします」

(よっしゃ!!! うまくいった!!!)



「帝国の復興には、まず"安定"が必要だ」

「そのためには、"民の信頼"を第一に考えろ」

「「「おおおおお!!!!!」」」

(よし、適当に言ってもそれっぽく聞こえるぞ!!)

 フリードは頷き、冷静に答えた。

「賢者様の仰る通り、まずは食糧供給の安定が必要かと存じます」

「王国との連携を強化し、商人たちを介して流通網を整えるのが最優先事項でしょう」

「加えて、旧帝国貴族の処遇については、王国側と相談しながら慎重に進めます」

(こいつ……めちゃくちゃ優秀じゃね!?)

 俺は、感心しながらも、さらなる指示を与えた。

「……"王国の意向を尊重しつつ、帝国の自立を促せ"」

「「「おおおおお!!!!!」」」

(よし、またしても深読みタイム!!!)

「つまり!! "王国の保護下に置きつつも、帝国としての独立性を確保する"ということですね!!?」

(そういうことにしといてくれ!!!)

 フリードも納得したように頷く。

「賢者様の深いお考え、恐れ入りました」

「この方針で進めれば、帝国は無駄な反発をせず、平和裏に統治を受け入れるでしょう」

(おおおお!!! なんかスムーズにまとまったぞ!!!)



 こうして――

帝国はフリード・バルゼンを新たな"帝国総督"とし、王国の後ろ盾を得ながら独立性を維持する方針が決まった。

 俺がやったことといえば、
 「それっぽいことを言っただけ」。

 しかし――

「賢者様の采配によって、帝国は安定へと向かいます!!!」

「「「賢者様、ばんざぁぁぁぁい!!!!」」」

(いやいやいや!!! 俺、ただそれっぽく言っただけだから!!!)



「……賢者様、本当に何も考えていなかったのでは?」

「そ、そんなことはない!!」

「でも、結果的に"完璧な采配"でしたよね?」

「……まぁ、そうなるな」

「やっぱり……"天才"なんじゃないですか?」

(やめろ!!! 適当に言っただけなのに、天才扱いするな!!!)

 俺はソフィアの言葉を否定することもできず、複雑な顔をした。


---

「賢者様!! 重要なお話がございます!!!」

(……もう嫌な予感しかしない)

 王宮での会議が終わり、俺がようやく一息つこうとした時だった。
 執務官が血相を変えて俺のもとへ駆け寄ってきた。

「今度は何だ……?」

 俺は疲れた声で問いかける。

「賢者様に、お見合いのお話が舞い込んでおります!!」

「……え?」

(お見合い……???)

「いやいや、何で俺にそんな話が?」

「王国公爵であり、王国の英雄である賢者様に、後継者を求めるのは当然のこと!!!」

「いや、俺は別にそんなつもりは――」

「王国だけではなく、**帝国や周辺諸国の貴族からも縁談の申し出が殺到しております!!!」

「……」

(マジか……)

 最近の戦果と統治の影響で、俺の評価は天井知らずに上がっていた。
 その結果、貴族たちは俺を政略結婚の駒として狙っているらしい。

「特に、王国の公爵家や大臣の娘たちからの申し出が多く、王家としても賢者様の将来を考え、"お見合いパーティー"が企画されました!!!」

「いやいやいや、待て待て待て!!!」

(何勝手に話を進めてるんだよ!?)



 この話を横で聞いていたソフィアが、無言で俺を見ていた。

「……賢者様、お見合いですか?」

「いや、俺は別に……」

「ふぅん……」

 冷たい視線。

(ちょっと待て、その目はなんだ!?)

「ソフィア、お前も何か言ってくれ!! 俺にお見合いなんて必要ないだろ!!?」

「賢者様の結婚は、王国にとっても重要な問題ですからね。"適切な相手"を見つけるのは当然では?」

「お、おい……」

(なんかソフィアの声がちょっと低くなった気がするんだけど!?)

「……まぁ、せいぜい"うまくやって"くださいね?」

(怖い!!! なんか怖いぞ!!!)



 そんなわけで、俺は王宮の一室で開催されるお見合いパーティーに参加させられることになった。

(……マジで行きたくないんだけど)

 だが、貴族社会のしがらみを考えると、下手に断ると余計に厄介なことになる。

「賢者様、お待ちしておりました!!」

 会場に入ると、そこには着飾った貴族の令嬢たちがずらりと並んでいた。

(うわぁ……めちゃくちゃ見られてる……)

「賢者様、本日はどうぞよろしくお願いいたします!」

「わたくし、ロザリンド・フォン・エルメルと申します!」

「私の家系は代々王国に仕えておりまして……」

 次々と挨拶を受けるが、俺の頭の中は**「帰りたい」で埋め尽くされていた。**

(なんで俺、こんな状況になってんの……?)


 貴族令嬢たちのラインナップをざっと見ると――

王国公爵家の令嬢(気品あふれるタイプ)

帝国貴族の娘(政略結婚狙い)

武門の家の姫君(やたら戦闘向き)

魔法学者の娘(研究バカ)

商家の令嬢(計算高そう)


(うわぁ……全員"何かしらの目的"が透けて見えるなぁ……)

「賢者様、戦場ではどのような采配を……?」

「賢者様はどのような女性を好まれますか?」

「賢者様の公爵領の運営についてお聞かせください!」

(俺にそんなガチの質問をするな!!!)

 俺は適当にお茶を濁しながら、場を乗り切ろうとする。

(……いや、これもうパーティーというより、面接じゃん!!!)



 その時――

「失礼します」

会場の扉が開き、ソフィアが入ってきた。

(えっ!? お前、なんでここに!?)

「賢者様、そろそろ"次の予定"のお時間です」

 俺はすぐに察した。

(あっ、これ助け船だ!!!)

「そ、そうか!! では皆様、申し訳ありませんが、私はこれにて……!!」

 俺はソフィアに手を引かれるまま、さっさと会場を後にする。


---

 王宮の廊下を歩きながら、俺はソフィアに問いかけた。

「お前、なんで助けに来てくれたんだ?」

「……助けたつもりはありません」

「え?」

「ただ、"あの場に長くいれば、賢者様がとんでもないことを口走る"と思っただけです」

「俺、そんな信用ないの!?」

「ないですね」

(即答かよ!!!)

 しかし、ソフィアはふと少しだけ笑った。

「……まぁ、"賢者様のお相手は私が選んであげます"から、ご安心を」

「えっ?」

 俺は一瞬、ソフィアの言葉の意味を考えるが――

「な、なんだその言い方!?」

「では、次の仕事に行きますよ?」

(おい、今の発言の説明しろぉぉぉ!!!)

 こうして、俺のお見合い騒動は、ソフィアの介入によって幕を閉じたのだった。


---
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

処理中です...